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「おまえの愛するものは俺のもの。だからおまえも俺のもの」というジャイアン感ある『ひらいて』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:143/236
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【要素】

ラブストーリー
学園モノ
同性愛

【元になった出来事や原作・過去作など】

・小説
 綿矢りさ『ひらいて』(2012)

【あらすじ】

成績もよく、明るく目立つタイプの愛(山田杏奈)は、同じクラスの“たとえ”(作間龍斗)にずっと片思いをしている。ひっそりとした佇まいで寡黙なタイプだけど、聡明さと、どことなく謎めいた影を持つたとえの魅力は、愛だけが知っていた。

そう思っていたある日、彼には「秘密の恋人」がいることを知る。それが病気がちで目立たない美雪(芋生悠)だとわかったとき、言いようのない悔しさと心が張り裂けそうな想いが彼女を動かした─。

「もう、爆発しそう─」 愛は美雪に近づいていく。誰も、想像しなかったカタチで…。

【感想】

どうしても手に入れたいものがあったとき、あなたならどうするでしょうか。諦めるか、それとも何としてでも手に入れようとするか。この映画は、後者を取った少女の物語です。僕は、原作小説は読んでいませんが、キャラクターの強烈さが印象に残る映画でしたね。特に、主人公の愛。演じた山田杏奈の演技がすごくよかったのもあって、脳裏に焼きつきますね。

<愛というぶっとんだ少女>

自身の中に抱える様々な感情が爆発しちやったのが愛えす。彼女は、片想いの男子生徒を自分のものにするために、彼が愛する人を自分のものにしようとします。その思想に行き着き、実行しちゃうのがやべえやつだなって思いましたよ。絶対過去に何かあっただろって。

でも、そうじゃないんです。愛は成績優秀で友達も多そうでした。父は単身赴任のようですが、綺麗で優しいお母さん(板谷由夏)と2人暮らし。こじれる要素なんて、何もないんですよ(少なくとも映画を観る限りでは)。

逆に、そこが彼女の人格形成に影響を与えてるんじゃないかなと思います。要するに、恵まれているからこそ出てくる人間性なのかなって。何不自由なく育ってきたということは、求めるものがすべて手に入ってきたということ。彼女の常識としては、「手に入らない」という概念がないのかもしれません。自分を中心に世界がまわっているというか、自分こそが正しいという考えの持ち主のようにも見えました。

けれど、欲しいものを手に入れるために誰かを蹴落としたり、他人に迷惑をかけているわけではない。あくまでも、水面下でしれっとうまくやろうとする要領のよさ。それがあまり嫌味に映らないのも、愛の魅力と言えるでしょう。

<彼女の気持ちの矛先>

そんな愛ですが、たとえを手に入れるために美雪にちょっかいを出したものの、いつの間にかそっちにも気が向いてしまう描写があるんですよね。これが本気の愛なのか、それとも、まだ美雪に利用価値があると踏んでキープしているのか、正直映画ではわかりづらい部分ではありました。結果として、バイセクシャルみたいな見え方にはなっているんですが、、、そこはちょっとモヤモヤするところかも。個人的には、欲しいものを本能のままに欲しいと思っているだけで、そこに深い意味はないようにも思えます。ライオンがシマウマを食べるときに、あれこれ考えたりしないように。

<なかなかない学園ラブストーリー>

舞台としては学園モノにはなるんですが、よくある青春キラキラ純愛映画ではまったくないです。もっとダークで、もっとシリアスで、大人でもやらないような恋愛をぶちかます悩めるティーンたち。淡々と進んでいく話ではありますが、キャラが立っているから退屈もしません。学園を舞台にしたラブストーリーでこういう雰囲気の作品ってなかなかないですからね。ジャイアニズム全開の愛の行動は、映画館でその目に焼きつけても損はないはずです。

<その他>

映画だけでも十分に楽しめる作品ではあるんですけど、小説の方がもっとキャラクターの深掘りがされてそうなので、時間に余裕のある方は、そっちを読んでから映画を観た方がいい気もします。


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