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人間ってつくづく合理的とは程遠い存在かもしれないなと思った『断捨離パラダイス』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:72/94
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:-
  製作年:2022年
  製作国:日本
   配給:クロックワークス
 上映時間:101分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

ピアニストの白高律稀(篠田諒)はある日突然、原因不明の手の震えによりキャリアを断たれてしまう。ピアノのみに人生を捧げてきた彼は、絶望から立ち直るべく、たまたまチラシで見かけたごみ屋敷専門の清掃業者「断捨離パラダイス」で働くことを決意する。

破天荒な上司と、様々な事情を抱えた依頼者たち。華やかな世界から一転、律稀は想像を絶する世界を目撃していくことになるのだった。

【感想】

ゴミ屋敷に住まう人や捨てられネーゼ(死語?w)に焦点を当てた映画。とても人間らしいなと思える登場人物たちが魅力的に映る作品でしたね。

<片づけられない人たちが主人公の群像劇>

この映画、神経質な人や潔癖症な人はまったくもって向かないと思います。だって、出てくるのはスクリーンいっぱいのゴミ、ゴミ、ゴミですから(笑)観ているだけで臭いが漂ってきそうな変わり果てた食べ物や、思わず咳き込んでしまいそうなホコリや毛が至るところに落ちています。あの"G"の姿も。。。そんなところに住む人たちはどんな人物なのだろうかと思うんですが、一見するとどこにでもいそうな普通の人なんですよ。中には本当に意外すぎる人物もいたりして。でも、片づけられない性格ゆえに、足の踏み場もないほどに部屋が荒れているんですよね。誰かひとりが主人公というわけではなく、その片づけられられない人たちそれぞれのエピソードがオムニバス形式で流れていくので、本作は群像劇と言えそうです。しかも、それぞれの人物がちょっとした接点を持つのもまた面白いところです。

各登場人物がなんで片づけられないのか、その理由までは明示されないんですけど、そこをあーだこーだ妄想する余白があるのもこの映画の魅力だと思います。単に片づけるのがめんどくさいだけだったり?何かに囲まれている方が精神的に安心したり?大切な家族にまつわるエピソードが潜んでいたり?まあ、中には特に理由もなく部屋が荒れていく人もいるかもしれませんが(笑)

<根本は人間の"選択"にまつわる話>

この映画の中で、特に印象に残ったことが2つあります。まずは人間の"選択"の話です。作中でも語られていますけど、人間は1日に最大3万5000回も選択をしているそうなんですよね。この映画で一番その選択に関わることと言ったら、何を捨てて何を残すかってことじゃないですか。これは普段の生活でもなかなか難しいときがありますよね。そりゃ食べ終わったお菓子の袋なんかは多くの人が、即ゴミだと判断して捨てるでしょう。でも、使わないけどちょっと高価なものだったり、もういらないけど小さい頃に使っていた何かだったり、判断に迷うものも多く、大晦日の大掃除のときなんて、それに悩んで時間だけが過ぎていくなんて経験をしたことある人はけっこういるんじゃないでしょうか。それを取っておくのか捨てるのか、その選択を後回しにすればするほど、部屋がモノで溢れてしまいそうだなというのは想像に難くないですよね。それが行くところまで行くと、ゴミ屋敷になってしまうのかもしれません。。。

そして、その選択に関連した明日華(中村祐美子)のセリフ、「あなたにはわからないでしょうけど、私には大切なものなんです」が次に印象に残ったところです。そうなんですよ、結局モノの価値ってのは主観でしかないんですよ。誰かにとってのゴミは、誰かにとっての宝物。他人が決められる話ではありません。しかも、自分でも置かれている状況によってゴミに感じたり宝物に感じたりするじゃないですか。そりゃもうモノなんて溜まる一方ですし、そうやっていろんな感情が絡み合って正しい選択ができないことを考えると、人間とは合理的とは程遠い、軸がブレブレな生き物だとつくづく感じますね。

<そんなわけで>

ゴミ屋敷に住んでいる人はそうはいないでしょうけど、映画で描かれている本質としては、人間の生き方や価値観に深く関わる普遍的な内容で、意外と共感度が高いかもしれません。ちなみに、女性教師が北川景子似で、介護士が桐谷健太似だと思ったのは自分だけでしょうか(笑)


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