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知られざるムーミンの誕生秘話、それは作者がやりたいことと求められていることのギャップに悩む中で生まれた偶然の産物だった『TOVE/トーベ』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:129/208
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
ムーミン
トーベ・ヤンソン

【あらすじ】

第二次世界大戦下のフィンランド・ヘルシンキ。激しい戦火の中、画家トーベ・ヤンソン(アルマ・ポウスティ)は自分を慰めるように、不思議な「ムーミントロール」の物語を描き始める。

やがて戦争が終わると、彼女は爆撃でほとんど廃墟と化したアトリエを借り、本業である絵画制作に打ち込んでいく。しかし、著名な彫刻家でもある厳格な父との軋轢、保守的な美術界との葛藤の中で満たされない日々を送っていた。それでも、若き芸術家たちとの目まぐるしいパーティーや恋愛、様々な経験を経て、自由を渇望するトーベの強い思いはムーミンの物語と共に大きく膨らんでゆく。

そんな中、彼女は舞台演出家のヴィヴィカ・バンドラー(クリスタ・コソネン)と出会い、激しい恋に落ちる。それはムーミンの物語、そしてトーベ自身の運命の歯車が大きく動き始めた瞬間だった。

【感想】

日本でも人気ですよね、ムーミン。僕も小学生の頃は毎週アニメを観て、小説も全シリーズ読むほど好きでした。なお、年代バレますが、僕は世代的にこっちのアニメを観ていました(「ねぇムーミン、こっち向いて」じゃないですw)。

しかも、途中でオープニング変わるんですよ。だいぶ曲調が変わって当時びっくりしたことを覚えています。

はい、話が逸れましたが。。。ムーミンは有名でも、その作者であるトーベ・ヤンソンについて知る人はそんなに多くないかもしれませんね。この映画は、彼女が30代の頃、ムーミンが誕生したときを描いた伝記的作品です。

<自由を愛したトーベ・ヤンソン>

まず驚くのが、本作でトーベ・ヤンソンを演じたアルマ・ポウスティ。彼女、トーベ・ヤンソン本人にそっくりなんですよ。左がご本人で、右がアルマです。

画像1

(左はウィキペディアより、右は公式サイトより引用)

トーベは自由を愛する人でした。「人生は素晴らしい冒険。寄り道しなきゃ」と、パーティーで知り合った男性アトス(シャンティ・ローニー)と
その日のうちに関係を持っちゃいますから。彼には妻がいて、しかもトーベも挨拶してたんですけどね(笑)

その後に知り合った、トーベの運命を大きく変えることになるヴィヴィカにも旦那がいたんですが、彼女もトーベとお互いに惹かれ合い、深い関係を持つようになりました。うん、何かと不倫に縁がありますね(笑)つまり、トーベはバイセクシャルっていうことになるんですけど、当時は同性愛ってことをおおっぴろげにできなかったので、隠れて交際していたようですね。

ただ、トーベ自身が気の多い女性だというよりは、自由のままに気の向くままに進んだらそうなったというだけで、チャラついた印象はありませんでした。

<本当は画家で成功したかったトーベ>

ムーミンも描いていた彼女ですが、本来は画家として成功したいと願っていたようです。本国フィンランドでは今でこそ画家としても有名ですが、当時はそれほどでもなかったみたいで、助成金ももらえず、悶々とした日々を過ごしていた様子。もともと父は彫刻家、母はグラフィックアーティストという芸術一家。その父親からは、彼女が気晴らしに描いていたムーミンのイラストを「こんなものは芸術じゃない」と批判される始末。

ところが、ムーミンの魅力に気づいたアトスが新聞の漫画に連載することを勧め、ヴィヴィカも舞台化を希望します。こうして徐々にムーミンが有名になっていき、彼女は裕福になっていきました。

<やりたいことと求められていることのギャップ>

とはいえ、正直トーベ本人は複雑だったと思いますよ。本当は画家として成果を残したかったのに、片手間で描いた気晴らしのイラストがどんどん有名になっていって。まさに、やりたいことと求められていることにギャップがある状態ですね。結果、彼女は求められていること=ムーミンの方で成功したわけですが。まあ、トーベ自身、別にムーミンが嫌ってわけでもなかったので、どこまで複雑な心境だったかはわかりませんけどね。

<恋愛に心乱されていた>

この映画を観て思ったのが、トーベはけっこう恋愛にパワーを持っていかれてるなということです。アトスとはそうでもないんですが、彼女が一番愛したヴィヴィカには、いろいろ想うところがあったようで。ヴィヴィカ自身はかなり奔放で、男女問わず誰とでも寝る人ではあったんですが、自分だけを見てくれないヴィヴィカにトーベは嫉妬心にまみれていました。芸術家であるがゆえに、ひとつのことに集中しやすいのかもしれません。最終的には、トーベの方から見切りをつけたようですが、それまでは何かとヴィヴィカの言動に一喜一憂していました。

<やりたいことは全部やる>

そんな目に遭いながらも、トーベはムーミンを描き続けていました。さらに、画家としての活動も止めませんでしたし、作家も兼ねていました。やりたいことは全部やるというスタンスだったんですよね。それができるバイタリティの強さは見習いたいところですが、そもそも全部できてしまう才能の豊かさにうらやましさを覚えます。

<その他>

ただ、全体的に淡々とした進行ではあります。伝記映画は大体そういう感じですが。気がついたら最初のムーミンの本が出版されていたりして、唐突なところもあったので、映画としてメチャクチャ面白いかというと、個人的にはそこまで(笑)ムーミンが人気すぎるキャラクターなので、ちょっと期待しすぎてしまうところはあったかもしれません。

まあ、小さい頃から慣れ親しんだムーミンの作者が、あんなのほほんとしたムーミンとは正反対の波乱万丈な人生だったというのが知れただけでもよかったです。


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