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サッカーW杯予選において0-31で大敗した世界最弱チームが悲願の1勝を得る奇跡に涙した『ネクスト・ゴール・ウィンズ』

【個人的な満足度】

2024年日本公開映画で面白かった順位:5/20
  ストーリー:★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

【作品情報】

   原題:Next Goal Wins
  製作年:2023年
  製作国:アメリカ
   配給:ディズニー
 上映時間:104分
 ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ、スポーツ
元ネタなど:映画『ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦』(2014)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
2001年、ワールドカップ予選史上最悪の0-31の大敗を喫して以来、1ゴールも決められていない米領サモアチームに、次の予選が迫っていた。

破天荒な性格でアメリカを追われた鬼コーチ、トーマス・ロンゲン(マイケル・ファスベンダー)が就任し、立て直しを図るが、果たして奇跡の1勝は挙げられるのか!?

【感想】

世界最弱のサッカーチームが奇跡の1勝を得る心温まる感動と笑いのヒューマンドラマ。元となったドキュメンタリー映画は観ていないのですが、こういうどん底からの復活劇、僕はメチャクチャ好きです(笑)

<この崖っぷち、事実です(笑)>

僕はサッカーを全然観ないので詳しくないんですが、さすがに0-31という試合結果があったということはにわかには信じられませんでした。『少林サッカー』(2001)の世界かよって(笑)でも、これは2002 FIFAワールドカップ・オセアニア予選において、アメリカ領サモア代表がオーストラリア代表に0-31で負けた事実なんですよね。世界最弱チームというのもウソではありません。

そんな崖っぷちのチームにやって来たのが、破天荒な性格からいくつものチームを解任されたトーマス・ロンゲンです。エンドクレジットで本人の指導映像が流れていましたが、かなりの鬼コーチっぷりでした(笑)彼もまた、無職になるか、サモワ代表のコーチを引き受けるかの二択しかなかったという点で崖っぷちに立たされていたわけです。

なお、アメリカ領サモアはサモア独立国とは別ですが、ここでは”サモア"で表記統一しておきます。

<対話こそが壁を乗り越える唯一の手段>

ロンゲンがサモアに着いてからはコメディ全開です。サッカーよりも信仰を優先し、何かとマイペースなチームメイトと、何が何でも勝ちにこだわるロンゲンの温度差が滑稽でした(笑)より高みを目指すならロンゲンの言っていることは至極真っ当ではありますが、環境が変われば、国民性や文化の違いからいつも通りに事は進みません。サモアの人たちも「勝ちたい気持ちはあるけど自分たちのやり方も否定はしたくない」と強い意志を見せます。それに、彼らが目指すのはW杯の優勝ではなく、まずは1ゴールです。

一見すると意識の低そうなチームに、ただでさえ短気なロンゲンは途中で投げ出そうとしますが、島民の助言やファファフィネ(第3の性。要はトランスジェンダー)のジャイヤ(カイマナ)との語りを通じて何とかモチベーションを保ちます。ロンゲンは何かきっかけがあって変わったというわけではないですが、一番衝突していたジャイヤと打ち解けてからやる気が出たように見えましたね。おそらく、ジャイヤがチームの要でみんな彼(彼女)の言うことには従っていたから、大きな壁が取り払われたような感覚になったのかもしれません。やっぱり何事も対話って重要だなと思いました(まあ、本当に嫌な人とは対話すらしたくないときもありますけどw)。

<本番で起こる数々のドラマが一番の見どころ>

もともとW杯の予選まで4週間しかなかったので、はっきり言って時間はありません。でも、サモアのメンバーはサッカーが好きでしたし、何よりもみんなガッツがありました。足りなかったのは適切な指導とスキル。なので、ロンゲンの教えの下、みんなすぐに成長していきました。

結果、予選のときに最初の対戦相手であったトンガには勝利するんですが、試合が始まってから終わるまでの間にいろんなドラマがあったんですよ。勝ちにこだわるあまり、前半はメンバー全員が実力を発揮できなかったこと。それにロンゲンがブチ切れて帰ろうとしたこと。サモアの会長の説得に応じて自らの非を認め、自身の知られざる過去をメンバーに話し、選手たちに自由を与えたこと。それらが相まって、奇跡の勝利を手にすることができました。特に、ロンゲンが自分の過去を語るシーンは涙なしでは観れませんでしたね。。。この試合のシーンは結果ではなく、その過程にぜひ注目していただきたいです。

<自分を受け入れることが幸せへの第一歩>

この映画、スポーツの素晴らしさやサッカーの面白さを描いているわけではありません。どんなに絶望的な状況でも必ず道はあること。そして、幸せというのは自分を受け入れることから始まること。そういう人間として生きていく上で希望となりうることを、笑いと涙のほどよいバランスの中で伝えているんです。ロンゲンが吹っ切れたのは、なぜ自分がうまくいかなかったのか、なぜサモアのチームのコーチを引き受けたのか、その根底にある理由をみんなに話すことで、自分の立ち位置を明確にしたからです。自分の本当の気持ちを受け入れたからこそ、まわりを認めることもでき、自分の幸せにも繋げることができました。どん底に陥ったひとりの男とひとつのチームの交流を通じて、希望と幸せを見出す前向きな世界がこの映画には詰まっています。

<そんなわけで>

明るい気持ちでほっこりしたいときにオススメしたい作品です。悪い人なんて出てきませんし、目を覆いたくなるような悲劇もありません。ただ観るだけで笑顔になれるとても素敵な映画でした。


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