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テフロンによる健康被害で、現代に至るまで20年以上も巨大企業と戦う1人の弁護士を描いた『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:55/273
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【要素】

サスペンス
弁護士
集団訴訟
法廷

【元になった出来事や原作・過去作など】

・記事(ニューヨーク・タイムズ紙)
 “The Lawyer Who Became DuPont’s Worst Nightmare”

【あらすじ】

1998年、オハイオ州の名門法律事務所で働く企業弁護士ロブ・ビロット(マーク・ラファロ)が、見知らぬ中年男から思いがけない調査依頼を受ける。

ウェストバージニア州パーカーズバーグで農場を営むその男、ウィルバー・テナント(ビル・キャンプ)は、大手化学メーカー、デュポン社の工場からの廃棄物によって土地を汚され、190頭もの牛を病死させられたというのだ。

さしたる確信もなく、廃棄物に関する資料開示を裁判所に求めたロブは、“PFOA”という謎めいたワードを調べたことをきっかけに、事態の深刻さに気づき始める。デュポンは発ガン性のある有害物質の危険性を40年間も隠蔽し、その物質を大気中や土壌に垂れ流してきたのだ。

やがてロブは、7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏みきる。しかし、強大な権力と資金力を誇る巨大企業との法廷闘争は、真実を追い求めるロブを窮地に陥れていくのだった……。

【感想】

これは濃厚で面白い映画でしたね。巨大企業 vs 1人の弁護士という対立構造に好奇心を煽られ、それでいて、実話ベースかつ現在も続いている話なので、とてもリアリティがある法廷映画になっています。

<身近なテフロンによる環境汚染>

キッチン器具に使われていることで有名なテフロン加工。フライパンが焦げつかないアレですね。それを開発したデュポン社とは、規模は世界第4位、アメリカでは第2位(2017年時点)という超巨大な化学メーカーです。

そのテフロンの製造過程で使用するペルフルオロオクタン酸による健康被害が今回の争点になっています。様々なガンや大腸炎など、実に6種類の病気との相関性が認められているんですが、その廃棄物が大気や地下水にも垂れ流され、被害の影響は計り知れないことになっています。

ちなみに、これはアメリカにおける話なので、日本ではどうかはわからないんですけど、テフロン加工しているフライパンなどは一定の温度以上にはしない方がいいみたいですね。

<敵対するクソみたいな巨大企業>

こういう話って、とにかく巨大企業って悪者にされがちですが、うん、これは企業側が圧倒的に悪いですし、クソな対応っぷりもすごいですよ。工場で働く従業員は一番影響を受けやすく、健康を害するだけでなく、お腹に子供がいた妊婦さんなんかは、生まれてくる子供も奇形児です。そういった被害があることをわかっていながらも、利益のために製造はやめず、一度離れていた若い女性も再び製造ラインに戻されていました。

なんとか原告側の言い分が認められ、第三者による新たな科学調査を行い、デュポンの垂れ流した化学物質と病気の相関関係が認められれば、医療保証することにも同意したものの、7万人近い血液サンプルの調査には実に7年の時間も要しました。その間に亡くなってしまう人ももちろんいます。。。

その結果、調査完了時点で3535人がすでに何かしらの病気にかかっていることが判明。当然、賠償金を払うことにもなるんですけど、デュポン社は年間10億ドルもの売上があるので、あまり経営的な打撃はないんですよ。それどころか、調査結果が出た後のデュポン社の対応がマジクソすぎます!詳細は映画を観ていただければと思うんですけど、どこまでいっても、原告や被害者たちの心を折ろうとする卑劣なやり口に苛立ちしか感じませんでした。もちろん、企業側には従業員の雇用を守る責務があることは承知していますが、、、あまりにも被害者に対して誠意がなかったですね。

<地道に戦う弁護士を演じるマーク・ラファロの役どころに注目>

マーク・ラファロといえば、マーベルのハルク役で有名ですよね。実際の彼は、環境活動家としての顔も持っているそうで、この記事を観たときに、執筆者に連絡し、映画化の話を持ちかけたとか。そんな彼が演じた弁護士は、ロバート・ビロットという実在する人物です。

証拠集めのために、資料開示請求を出すんですが、届く資料は100箱以上はあるんじゃないかというダンボールの山。明らかに心を折りに来てますよね。「あきらめろ」という暗黙のプレッシャーです。それでも彼はめげません。1人で黙々と証拠集めに奔走する真面目な人柄に好感が持てます。仕事に没頭しすぎるあまり、妻からは愛想を尽かされてしまうほどですが、その気になれば何でも潰せる巨大企業に、自らのキャリアを顧みずに真っ向から勝負を挑む姿はまさにヒーローそのものでした。デュポン社とは徹底抗戦することを決め、最初の訴訟から20年以上経つ今も戦い続けているらしいです。

<他の脇役たちにも注目>

ロブの妻役はアン・ハサウェイ。今回は煌びやかなイメージとは打って変わって、専業主婦という身近な役を演じています。そして、ロブの上司役を演じたのはティム・ロビンス。『ショーシャンクの空に』(1995)では銀行員のアンディを演じていました。なんか、近からずとも遠からずな役どころですね。

<その他>

工場の廃棄物で人々の健康が脅かされるのは、水俣病を扱った『MINAMATA-ミナマタ-』(2020)にも似た状況の内容で、シリアスかつダークな雰囲気ですが、強い信念を持って、巨大企業に挑む1人の弁護士の姿は胸を打つものがあるのでオススメです!


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