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芝居と役者と映画を愛する『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:25/68
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

コメディ
群像劇
名脇役
バイプレイヤーズ

【あらすじ】

富士山の麓にあるのどかな撮影所バイプレウッド。民放各局の連ドラや映画など沢山の組が撮影していて、100人を越える役者たちで大賑わい。

田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一ら元祖バイプレイヤーズもネット連ドラを撮影中。主演は有村架純だが、撮影が始まろうとした矢先、彼女が共演している犬の風(ふう)がいないことに気づく。心配する有村に、田口、松重、光石は風に何があったのか語り始める。

1ヶ月前、濱田岳を中心とした若手俳優たちが犬を主役にした映画の撮影を行おうとしていた。主人公は小さなチワワだが、ラストに100人の役者がSLで祝杯をあげるという壮大なストーリー。

しかし、実は役者がまったく集まっていない。やがて主役のチワワは逃げ出し、SLも撮影目前でロケを断られ路頭に迷う始末。

一方、菜々緒は敬愛する天海祐希と出くわす。天海はバイプレウッドに買収話が上がっていることを憂いていた。そこでバイプレウッドを愛する天海と菜々緒は、撮影所の存続をかけ署名を集めるために、バイプレウッド中の役者に声をかけはじめる。

こうしてそれぞれの思いが交錯、やがて役者同士のぶつかりあいに発展!犬の風もそれに触発されたのか、撮影所中を駆けずりまわって大暴れ!

果たして、100人の役者の映画は完成するのか!?

【感想】

芝居を愛し、役者を愛し、映画を愛した人たちの、温かい想いが詰まった作品でした。だって、数多くの役者さんたちがすったもんだしながら、懸命に作品をつくり続けるんですから。そうするだけの醍醐味が映画やドラマにはあるっていうのを感じます。この映画のために、過去のドラマシリーズもすべて鑑賞しましたけど、本当に役者の使い方や活かし方がうまいなと感じるし、役者という仕事をコミカルにまとめ上げている監督の手腕に脱帽します。

とはいえ、今回の映画を観ると、「ドラマの方がよかったのでは」と感じてしまったことも否めません。それは決してつまらなかったからではなく、『バイプレイヤーズ』という響きと中身のギャップに寄るものだと考えています。

日本の芸能界にも名脇役はたくさんいますが、やっぱり『バイプレイヤーズ』と名がついたら、僕の中では最初の6人なんですよ。田口トモロヲ、松重豊、光石研、遠藤憲一、寺島進、そして大杉漣。だから、ドラマもシーズン1と2が好きで、シーズン3はちょっと方向性が変わってきたなって印象を受けました。シーズン3では、元祖バイプレイヤーズたちは一歩引いた立場になり、より多くのキャラクターが出てくるスケールの大きい群像劇になったからです。

今回の映画は、そのシーズン3の続きになっている上に、元祖たちの出番もさらに少なくなっているので、彼らのわちゃわちゃした感じを楽しみにしていると物足りなさを感じてしまいます。。。

でも、シリーズを通して伝えている「それでも役者は面白い」、「それでも作品づくりは楽しい」、この2つのメッセージは健在でした。どんなトラブルに見舞われても、最後まで作品を完成させようとする姿勢は、芝居や役者という仕事に愛と誇りがあるからだろうし、監督も映画、ドラマ、舞台、MVといろんなメディアで幅広く作品づくりをしてきた方だからこそ、あれだけ多くのバイプレイヤーズたちのよさを引き出せているんだと思います。

ただ、この映画、というよりシーズン3からそうですが、元祖バイプレイヤーズたちを一歩引かせたのは訳があるんじゃないかと思ってます。それは、"世代交代"ですね。これは僕が勝手に感じただけなので違う意図があるかもしれませんが、シーズン3も今回の映画も、その他多く出演している登場人物って、元祖バイプレイヤーズたちよりも年齢が下なんですね。映画に限っていえば、メインだったのは濱田岳をはじめとする20代~30代の役者さんたち。きっと、彼らにバトンタッチする意味もあったんじゃなかろうかと。「未来の芸能界を担う若い人材がまだまだこんなにいるんだぞ」というメッセージを勝手に感じました。

それと、大杉漣さんへの追悼ですね。やっぱり彼あってこその『バイプレイヤーズ』ですから、大杉漣さんが役者と言う仕事を通じて感じていたこと、考えていたことを、この映画で形にしたのかなーって思います。

そういう意味では、これはただの映画として捉えるよりも、次代へのバトンタッチ、そして故人への追悼という、複数の意味があるようにも受け取れます。

このシリーズを観ると、役者という仕事は大変ですが、それを踏まえても人生を賭けるだけの価値がある職業なのかなと思います。ラストの有村架純のナレーションで、「うまくいかないことが多いこの仕事を、なぜ私たちは続けるのか」という問いに、「わかりません」と締めくくったのは、人の数だけ答えがあるからなんでしょう。まあ、個人的には、そこに何かしらの答えを言って欲しかったですけど。

結局、出ている人たちはみんな売れっ子さんですし、役者を目指しているけれど、まったく芽が出ずに生活が苦しい人もいると聞きますから、本当に夢物語みたいなシリーズだとは思いますが、もし、このシリーズを若い頃に観ていたら、僕も役者という仕事を目指していたかもわかりません。

ドラマシリーズを観ずに、この映画だけを観てもピンと来ないと思いますので、もし観るならドラマ版を観てから、そして、ドラマ版をすでに観ている方は、最後の集大成をその目に焼き付けていただければと思います。あれだけ多くの役者さんを使って、ひとつの作品に仕上げたのは、単純にすごいですよ。


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