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鏡の中からやって来る殺人鬼に恐怖し、その怒りに同情さえする『キャンディマン』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:167/216
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★☆☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ホラー
スプラッター
人種差別
キャンディマン

【あらすじ】

シカゴに現存した公営住宅「カブリーニ=グリーン」地区界隈では、ある都市伝説が囁かれていた。それは、鏡に向かって「キャンディマン」と5回唱えると、蜂の大軍を従えた殺人鬼が現れ、"右手の鋭利なフックで体を切り裂かれる"というものだ。

老朽化した最後のタワーが取り壊されてから10年後の現代。恋人と共に新設された高級コンドミニアムに引っ越してきたヴィジュアルアーティストのアンソニー(ヤーヤ・アヴドゥル2世)は、創作の一環としてキャンディマンの謎を探求していた。そんなとき、公営住宅の元住人だという老人から、その都市伝説の裏に隠された悲惨な物語を聞かされる。

アンソニーは恐ろしくも複雑な過去への扉を開いてしまったのだ―。

【感想】

自主的にホラー映画をひとりで観に行ったのは人生初かもしれません。。。身の上話で恐縮ですが、僕は小さい頃、父親に観せられた『エルム街の悪夢』(1984)がトラウマで、そこから30年以上、基本ホラーは避けてきました(まだ怖いのでリンクも貼りませんw)。ただ、これだけたくさんの作品を観まくったことで、ようやく映画が"虚構"であると実感を持つことができてきたので、軽めのホラーなら行けるようになった気がします(おそっ)。

なお、ここではキャンディマンの正体について僕なりに書いているので、ネタバレしたくない方は、ここでそっ閉じしてください。。。

<オリジナル版は29年前>

さて、本作はもともとクライヴ・バーカーというイギリスの小説家の作品がもとになっています。それを1992年にバーナード・ローズ監督で映画化されました。今回の映画はその続編的な、リメイク的な、そんな作品です。当時の設定を一部引き継ぎつつ、新しい解釈が加えられている形になっていますね。ちなみに、1995年に『2』が、1999年に『3』が作られたようですが、動画配信サービスにもなければ、DVDもなく、残念ながら現在では簡単には観れません(泣)

<怖いか怖くないかで言ったら、、、>

ホラー映画ではあるんですが、結論から言うと、92年版も本作も別に怖くはないです。まあ、大きな音でちょっとびっくりするところはありますが、超絶ビビりでずっとホラーを避けてきた僕でも問題なく観れるぐらいですね。

そこには怖くない明確な理由は2つあります。ひとつは、昼間のシーンが多く、そもそもホラーな雰囲気がそんなにないこと。太陽の力は偉大です。そしてもうひとつは、キャンディマンの見た目がほぼ普通の人間で、普通に会話もできるので、恐怖を感じにくいんですよ。これが変なクリーチャーとかだったら別の怖さもあるかもしれませんが、普通の黒人のおじさんなので。総じて、「これはホラーというより、サスペンスなのでは、、、?」と思うほどですね。あ、スプラッターではあります。血はいっぱい出るので(笑)だから、血が苦手な人は控えた方がいいかもしれません。

<キャンディマンの正体>※ネタバレあり

キャンディマンが何者なのかっていうのが本作の一番のポイントですね。ここは92年版と今作では異なる解釈です。キャンディマンの始まりは、1890年代にまでさかのぼります。当時、画家だったダニエルという黒人男性がいました。彼はお金持ちの白人の肖像画を描いていたんですが、ある日そこの娘さんと恋に落ち、子供を作ってしまったことで、その父親が激怒。ダニエルは殺されてしまいます。92年版では、その怨念だかなんだか知りませんが、100年以上経っても生きてるんですよね、ダニエルが。いや、生きてはいないか。殺されてるんで。つまり、キャンディマン=ダニエルなんです。

一方、今作ではちょっと違う扱いですね。キャンディマンの意志はどんどん受け継がれていくんですよ。もちろん、最初はキャンディマン=ダニエルなんですが、その後も虐げられてきた黒人はいっぱいいますから。そのたびに彼らの怨念が、移り変わっていったんじゃないかと。世代交代じゃないですけど。キャンディマンはあくまでも象徴でしかなく、中の人は随時変わっていきますよっていう。作り手側は、黒人に対する人種差別の怒りをホラー映画という形で表現したんじゃないかと僕は思いました。92年版の監督バーナード・ローズは白人ですが、今作の監督であるニア・ダコスタも脚本のジョーダン・ピールも黒人なので、何か思い入れがあって作ったのかもしれません。

<その他>

芸術家のアンソニーが、キャンディマンの都市伝説に翻弄され、取り返しのつかない展開になっていくのは、92年版を観たことある人なら、興味深く鑑賞できるかと思いますが、観てなくても楽しめる内容にはなっているので、軽めのホラーを観たい人にはちょうどいいかもしれません。

ちなみに、役名を観ればわかることですが、このアンソニーってのが、92年版の終盤において、キャンディマンに誘拐されちゃう赤ちゃんなんですよ。もちろん、演じている人は別の人ですが。ただ、そのアンソニーのお母さん役のヴァネッサ・ウィリアムズと、キャンディマン役のトニー・トッドは、29年ぶりに続投しているので、そこは感慨深いところでした。

あと、冒頭に出てくる映画会社のロゴが全部左右逆になっているのも面白い工夫ですね。キャンディマン、鏡から出てくるから。


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