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映画に魅せられた人々を目にして改めて「映画っていいなあ」って思えた『銀平町シネマブルース』

【個人的な満足度】

2023年日本公開映画で面白かった順位:24/34
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

  製作年:2022年
  製作国:日本
   配給:SPOTTED PRODUCTIONS
 上映時間:99分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

かつて青春時代を過ごした町・銀平町に帰ってきた一文無しの青年・近藤(小出恵介)。彼はひょんなことから映画好きのホームレスの佐藤(宇野祥平)と、映画館"銀平スカラ座"の支配人・梶原(吹越満)と出会い、バイトを始める。

同僚のスタッフ、老練な映画技師、個性豊かな映画館の常連客との出会いを経て、近藤はかつての自分と向き合い始めるが……。

【感想】

街の小さな映画館を舞台に、映画を観るのが好きな人、映画を作るのが好きな人など、いろんな映画好きが集まる映画でした。映画好きな人には特にほっこりするような作品だと思います。

<映画を題材にした映画がブーム?!>

今年に入ってから映画館や映画製作など、"映画そのもの"に焦点を当てた作品が日本で多く上映されていますね。もちろん、これまでもそういった映画は多数ありましたけど、今年が始まって3ヶ月が経とうとしている中で、『エンドロールのつづき』(2021)、『バビロン』(2022)、『エンパイア・オブ・ライト』(2022)、まだ観ていませんが『フェイブルマンズ』(2022)など、けっこうな数じゃないですか?どれも海外作品ですが、ここにきて日本映画ですよ。そして、久しぶりに小出恵介さんが主演を務めます。この映画は、彼が演じる近藤という男の人生再出発ストーリーということで、小出さん自身もいろいろあったので、2人が重なるエモさのある映画だと思いました。

<"好き"が全面に出ているのがよかった>

実は、近藤は昔映画を撮っていました。ところが、"あること"がきっかけで逃げ出してしまい、家族とも別れ、金なし家なしというどん底状態です。それを救ったのが、町の小さな映画館の支配人である梶原。住み込みのバイトとして働いていく近藤は、映画館の60周年記念イベントで、未完成だった自分の作品を上映するチャンスを手にします。そこには、映画人として夢に燃える当時の自分の姿も映っており、いろいろ葛藤がありながらも、それを見て再び前向きに生きていこうと重い腰を上げるという彼の心境の変化が注目ポイントかなと思います。結局、映画が好きな人、映画をやりたい人は、映画からは逃れられないし、映画でしか立ち上がれないのかなと感じましたね。小難しい話は一切なく、「映画っていいよね」と単純に"好き"という気持ちで、ここにいる人たちが繋がっているのが、映画好きとしては共感度高かったです。

<実は一番いい味出していたのはホームレスの佐藤>

でも、個人的に推したいのは主人公の近藤ではなく、ホームレスの佐藤なんですよ、、、!いやー、彼は本当によかったです。佐藤もまた人生崖っぷちの状態なんですけど、とにかく映画が好きで、金がなくても映画館に通うほどなんですよね。中でも『カサブランカ』(1942)がお気に入りで、彼のダンボールハウスにはたくさんの名画のポスターが貼ってあり、『カサブランカ』に至っては同じものが複数枚貼られていました。ここが佐藤という人物をものすごくよく表していると思いまして。だって、人間、何よりもまずは食うに困らない生活を送れることの方が大事じゃないですか。その中で、佐藤はそれと同じぐらい映画を愛していたんですよ。映画なんてなくても生きていけますけど、自分の生活や命と同じぐらい映画を大事に想っているところに感動しました。

<気になる劇中劇>

あと、劇中劇で流れる2本の映画がクセが強くて面白いんですよ。本編はオーソドックスなヒューマンドラマになっていますが、この劇中劇は設定がぶっ飛んでて、むしろこっちの方がもう少し観たいと思いましたね(笑)特に、クソみたいな映画監督を題材にした『監督残酷物語』という作品は、主人公の映画監督の奔放っぷりに振り回される助監督が不憫すぎて笑えます。劇中劇なので数シーンしかないんですが、これ長編にしてほしいですね(笑)

<そんなわけで>

映画好きには刺さりそうな心温まるヒューマンドラマでしたね。先に挙げた映画そのものに焦点を当てた海外作品と比べるとこじんまりとした印象ではありますけど、根底に流れる映画愛は同じだと感じましたし、映画愛は国境を越えるんだなと思いました。


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