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彼らにも家族があり、生活があるという当たり前のことを痛感する『ヤクザと家族 The Family』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:3/16
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★★☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が好きなら楽しめるかも】

ヒューマンドラマ
ヤクザ
極道
ヤメ暴

【あらすじ】

1999年。
派手な金髪に真っ白な上下で身を包んだ19歳の山本賢治(綾野剛)。行きつけの食堂で飲んでいた彼は、そこに居合わせた柴咲組組長・柴咲博(舘ひろし)をチンピラの襲撃から救い、それがきっかけでヤクザの世界に足を踏み入れる。

2005年。
ヤクザの世界で名をあげつつあった山本は、ある日キャバクラで、因縁の相手である侠葉会といざこざを起こす。一旦は解決したかに見えたが、後日、腹の虫が収まらない侠葉会の若頭・加藤(豊原功補)の差し金によって、柴咲は襲われ、代わりに仲間の大原(二ノ宮隆太郎)が犠牲となる。その報復のために、山本は加藤の元へ単身乗り込み、川山(駿河太郎)に拳銃を構えるが、包丁を握った柴咲組若頭の中村(北村有起哉)がその横から川山を刺す。

2019年。
中村の代わりに出頭した山本は14年の懲役を経て、外の世界に戻ってくるものの、暴対法の影響で柴咲組は存続が危ぶまれていた。山本も柴咲組を抜けるが、"元ヤクザ"というだけで身のまわりの人に多大な迷惑がかかることを知る。ヤクザを取り巻く状況の変化に戸惑いながらも、自分の家族を、そして未来を守るため、山本はある決意をする。

【感想】

いやー、これメチャクチャ面白いですわ。。。僕は洋画好きなので、普段邦画をそこまで面白いと感じることってないんですよね(アニメは除くw)。でも、これは本当によかったです。。。ヤクザ映画をよくある"抗争"ではなく、"家族"という視点から描く斬新さが素晴らしい。

これまでちゃんと観たヤクザ映画って『アウトレイジ』シリーズぐらいだから、あのイメージが強いのですが、基本ヤクザ映画ってああいう感じ、、、つまり、「なんだゴルァ!」のオンパレードでアクションやバトル寄りだと思っています。なので、今回の映画もきっとそういう感じなんだろうなって思って観てみたら、、、まさかの家族を題材にしたヒューマンドラマで涙を禁じ得ない感動作っていう。。。

以前、「ヤメ暴」の人のその後の人生が大変だという記事をネットで読んだことがあって、「こういうのを題材にしたドラマや映画があっても面白そうだな」ってふんわり思ったことあるんですが、まさにドンピシャな作品ですよ、これ。

もうね、冒頭のオープニングクレジットから好きでした。メインキャストとスタッフの名前が出てくるんですが、全部縦書き。まさに昔の邦画って感じで懐かしくなりました。きっとリスペクトですよね。作り手さんたちの。

で、本編は3つの時代に分けて進んでいきます。1999年と2005年はこれまでのヤクザ映画らしく、"抗争"を扱っているんですが、それを観た上で2019年のエピソードを観ると、、、同情しかできなくなってしまうんですよ。。。

今は世の中的に「反社」に対する風当たりが強いですよね。もちろん一般市民が平和に生きていくためには必要だと思いますし、僕も反社の肩を持つつもりはまったくありません。でも、考えてみれば彼らも人間ですし、家族もいれば生活もありますよね。それなのに、ヤクザだったというだけで口座も保険も家もそう簡単には手に入りません。完全に人権がなくなるんです。そういう当たり前のことに気づかせてくれるんですよ、この映画は。

しかも、その影響は本人だけじゃないんです。ひとたびまわりの人たちに」元ヤクザとつながりがある」と知れてしまえば、会社は解雇されるし、学校は辞めなければならないし、人生が狂ってしまうことだってあります。

かつて山本の恋人だった由香(尾野真千子)が、「あんたなんかと出会わなければよかった!!」って泣き叫ぶシーンなんか、もうすんごい迫力で。。。同時に、それを言われた山本の気持ちを考えると、悲しいやら寂しいやら、、、何とも言えない気持ちがこみ上げてきます。

まさに「誰かの平和は誰かの犠牲で成り立っている」っていうのを痛感する話でした。監督、まだ若いのにすごいですよね。。。

それにしても、舘ひろしの存在感がハンパないんですよ。スクリーン越しにオーラをバシバシ感じて。「男」じゃなくて「漢」。ああいう歳の取り方したいですね。。。(遠い目)


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