見出し画像

こじらせ男子の『ラ・ラ・ランド』だった『青くて痛くて脆い』

【基本情報】

製作年:2020年
製作国:日本
 配給:東宝

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:81/114
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

人付き合いが苦手で、人と距離を取ろうとする田端楓(吉沢亮)と、意識は高いが空気の読めない発言ばかりで周囲から浮きまくっている秋好寿乃(杉咲花)。

ひょんなことから知り合った2人は秘密結社サークル「モアイ」を作り、「世界を変える」という大それた目標を掲げ、ボランティアやフリースクールなどの慈善活動をしていた。まわりからはバカにされながらも、モアイは2人にとってかけがえのない居場所となっていった。

しかし、秋好は"この世界"からいなくなってしまった。

モアイ設立から3年。秋好がいなくなったモアイは、社会人とのコネ作りや各種イベントなどを行う意識高い系の就活サークルへと変貌してしまう。

変わり果てたサークルを目の当たりにし、楓の怒りや憎しみが爆発する。「モアイをぶっ潰そう」
楓は、秋好が叶えたかった夢を取り戻すために親友や後輩と手を組み、モアイ奪還計画を遂行する。

【感想】

『君の膵臓を食べたい』の住野よるが原作というので、てっきり純愛映画かなと思ったのですが、まさかの復讐劇です。いや、厳密には復讐ってわけでもないんですが、よくも悪くも「え?」っていう映画でした。なんというか、こじらせ男子の『ラ・ラ・ランド』って感じですかね。

正直、笑いも涙もないので、感情の振れ幅は小さいのですが、他人との関わり方や自身の在り方について、ちょっと自分を振り返りたくなるような内容でした。

まず、開始後1分でわかりみが深いナレーションがあるんですよ。楓は、とにかく人と距離を取ろうとするんですけど、それは、自分の何気ない言動で他人を傷つけてしまわないためなんですよね。だから、不用意に人と関わらないし、否定もしない。結果、その相手から恨まれることもなく、最終的には自分を守ることにもなると。

30数年生きてると、些細なことで面倒に巻き込まれることもあるし、なるべく人に入り込まない方がいいよなって思うことは少なからずあるので、楓のこのスタンスはけっこう共感できる部分がありました。

そんなスタンスの彼に、まったく空気を読まずズケズケ入ってくる秋好がこれまた鬱陶しくて。ゴリゴリの営業マンとか、見てるだけなのに話しかけてくるショップ店員ばりのめんどくささです(笑)こういうの苦手と感じる人は多そう。

楓も最初はちょっとウザそうにしてるんですが、気づいたら2人はいっしょになってるんですよ。あれだけ人と距離を取りたがっていたのに。おまえの主義はそんなもんかと(笑)まあ、杉咲花が度を超えてしつこかったってのもあるかもしれませんが、結局、楓も寂しかったところはあると思うんですよ。本当に人と距離を取りたいときって、人が嫌いか、興味ないかのどちらかで、この場合は完全にシャットアウトすると思うので、なんだかんだで楓には誰かといっしょにいたいという願望がどこかにあったんじゃないのかなと。

そして、後に秋好は途中からジョインした脇坂(柄本佑)と付き合うことになるんですが、ここから物語が一気に加速します。お話の内容上、細かく話すとネタバレになってしまうのでここでは書きませんが。。。

楓の負の感情の出どころや彼が本当にぶっ潰したかったものは何なのかってのは、映画を観てるとわかります。「あー、結局そういうことかー」って。そこを意外だなーと取るか、一気にテンション下がるかはその人の価値観次第ですかね。僕は、、、ちょっと微妙かなって思いましたけど、でもまあわかります。楓の気持ちは。

そして、吉沢亮の国宝級のイケメンに対して「ほんっとうに気持ち悪い」と言い放つ杉咲花の役どころは気持ちいいほど潔かったですね(笑)

ラストが『ラ・ラ・ランド』すぎてちょっと笑ってしまいますが、ここが意外と共感ポイント高いんですよ!楓が「もし自分がもっと素直だったら」起きたであろう願望の世界が映し出されるんですけど、普段の生活でもけっこうこういう妄想ってあるんじゃないかなー。「もっとちゃんと話せてたら」とか「あそこで"うん"って言ってたら」とか「あれに参加してたら」とか。そういうのって若いうちだけかなと思ってたら、意外と年齢重ねても日々起こるよなって最近思います。

変にかっこつけたりこだわったりしない方が、人生いい方向に行きそうだなってのは楓を見て思いました。

まあ、言うほど簡単じゃないんですけど(笑)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?