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昔はすごかったじーさんと不良少年のロードムービー『クライ・マッチョ』

【個人的な評価】

2022年日本公開映画で面白かった順位:4/5
   ストーリー:★★★☆☆
  キャラクター:★★★★☆
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【ジャンル】

ロードムービー
ヒューマンドラマ

【原作・過去作、元になった出来事】

・小説
 N・リチャード・ナッシュ『クライ・マッチョ』(1971)

【あらすじ】

アメリカ、テキサス。ロデオ界のスターだったマイク(クリント・イーストウッド)は、落馬事故以来、数々の試練を乗り越えながら、孤独な独り暮らしを送っていた。

そんなある日、元雇い主から、別れた妻に引き取られている十代の息子ラフォ(エドゥアルド・ミネット)をメキシコから連れ戻してくれと依頼される。犯罪スレスレの誘拐の仕事。それでも、元雇い主に恩義があるマイクは引き受けた。

男遊びに夢中な母に愛想を尽かし、闘鶏用のニワトリとストリートで生きていたラフォは、マイクと共に米国境への旅を始める。そんな彼らに迫るメキシコ警察や、ラフォの母が放った追手。先に進むべきか、留まるべきか?

今、マイクは少年と共に、人生の岐路に立たされる―― 。

【感想】

クリント・イーストウッド監督デビュー50周年記念作品。改めてすごいと思いますよ。だって、91歳にして監督も主演もこなしますから。この創作意欲は見習いたいですよね。俳優としても監督としても成功している人って、ハリウッドでもそうはいないでしょうし。

<クリント・イーストウッドの映画は彼あってこそ>

個人的には、クリント・イーストウッド監督作品の多くをそう感じるんですけど、、、雰囲気なんですよね(笑)今回も話自体はジジイと不良少年のロードムービーというシンプルさ。淡々と進んでいき、ドラマチックな展開というのはないです。降りかかるピンチも偶然で乗り切り、敵が面白いぐらいに弱い。普通に観たら、正直そこまで面白いかなっていう感じがするんです。

ただ、それをキャリア67年の、業界の酸いも甘いも知ったクリント・イーストウッドがやるから味が出るんですよ。彼がテンガロンハットを被って馬に乗ったり、車に乗ったりするだけで、極上の画になります。若い頃の彼が出ていた『荒野の用心棒』(1964)を観ているかのような気にもなれますしね。彼を昔から知ってるファンにはたまらないんだろうなというのが伝わってきます。

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(上:『荒野の用心棒』、下:『クライ・マッチョ』)

だから、不良少年を父親の元に送り届けるミッションのはずなのに、途中立ち寄った村でのロマンスにだんだん比重が置かれてしまうという謎設定も、なんか許せちゃいます。まあ、人生は偶然の連続というメッセージとも取れなくもないですけど(笑)

<クリント・イーストウッドだから言えるセリフの説得力>

そんなクリント・イーストウッドだからこそ、放つセリフにも重みがあるんですよね。今回も、「人は自分を強く見せたがる。でも、老いと共に自分が無知であることを思い知る」みたいなことを言うんですが、これは役だけでなく、現実に90年以上生きてきた中で実感したことなのかもしれないって思うと感慨深いですよね。彼の作品には、彼がこれまでの人生で感じてきたことを、後世に伝えるように、また自分で振り返るように、セリフとして使っている気もします。総じて、やっぱり彼の作品は彼あってこそっていう感じが強いですね。きっと、自分を一番かっこよく見せる手法がわかりきっているんじゃないかなと。

<そんなわけで>

この歳になってもまだ、監督と主演も行うクリント・イーストウッドの生き様はとても刺激になります。人はいくつになっても輝けるということを体現しているから。ちなみに、若い頃の彼は今よりもさらにバチクソかっこいいので、『荒野の用心棒』なんかはぜひ観ておきたい作品です!


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