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ベトナム戦争によって運命が変わってしまった男たちの友情に涙した『ディア・ハンター』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭12」で面白かった順位:11/19
  ストーリー:★★★★☆
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★☆

【作品情報】

   原題:The Deer Hunter
  製作年:1978年
  製作国:アメリカ
   配給:KADOKAWA
 上映時間:184分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし

【あらすじ】

1960年代末、ペンシルベニア州の田舎町。製鉄所で働くマイケル(ロバート・デ・ニーロ)、ニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーヴン(ジョン・サヴェージ)ら6人の仲間たちは、仕事が終われば酒場に集い、休日には鹿狩りを楽しむ、平和な日々を送っていた。

やがてベトナム戦争が始まり、志願した3人は、地獄のような戦場で奇跡的に再会を果たす。だが、敵兵の捕虜となり、生死を賭けた「ロシアンルーレット」を強いられ、その後の人生が大きく変わっていく―。

【感想】

「午前十時の映画祭12」にて。1978年のアメリカ映画。タイトルは日本語だと「ディア」だけど、「親愛なる」の“dear”ではなく、「鹿」の“deer”。これは絶対聞き分けられないですよね(笑)そんなことはさておき、あの高倉健さんも衝撃を受けたというぐらいの映画だけあって、とても見ごたえのある内容でしたよ。

<戦争映画っぽくない戦争映画>

本作は尺が184分と実に3時間以上もあります。基本的に2時間ぐらいで収まるのが一般的な映画において、これは長尺と言えますよね。しかも、ベトナム戦争を題材にしてはいるんですが、戦闘シーンはほぼありません。こう書くと「戦闘シーンもないのに3時間以上もあるなんて」と退屈してしまいそうな印象を受けると思います。でも、この従来の戦争映画とは全然違う作りが逆に印象に残るんですよ。ロシアンルーレットのスリルと、男たちの友情による感動で、時間が過ぎるのを忘れるほどには僕は楽しめました。

<途中からガラリと変わる話の流れ>

この映画の特徴は、最初の1時間とその後に続く2時間で雰囲気が大きく変わるところです。最初はスティーヴンの結婚と、彼を含めたベトナム戦争に派遣されるマイケルとニックの壮行会を兼ねたパーティーシーンがメイン。仲間内で酒を飲んで騒ぎまくる幸せいっぱいの雰囲気が実に微笑ましいですね。

それがいきなりベトナム戦争のシーンに切り替わります。といっても、先に書いたように、他の戦争映画と違って激しい銃撃戦はありません。たまたま戦地で再会した3人が、ベトナム兵の捕虜となり、賭けロシアンルーレットに巻き込まれてしまうという流れです。このシーンがもういつ弾が当たるのかとヒヤヒヤするところで。マイケルとニックはなんとか正常を保っていましたけど、スティーヴンは発狂しちゃうんですよ。彼らの前に何人か別の捕虜が同じようにロシアンルーレットの犠牲になっていましたから。

<ロシアンルーレットで変わる運命>

マイケルたちって、元は趣味で鹿狩りをしていたんですよ。だから、タイトルも"The Deer Hunter=鹿猟師"。彼らはある意味ゲーム感覚で鹿の命を奪う狩猟に興じていたんですけど、今度は自分たちがゲーム感覚で命を落とすかもしれない側にまわるという恐怖を感じます。この対比が実にうまいなと感じましたね。

そして、この体験が3人のその後の運命を大きく変えてしまうところが悲しいんですよ。マイケルは唯一健康でしたけど、ロシアンルーレットの件から、遊び半分で銃を持つことに抵抗を感じるようになりました。スティーヴンは両脚と左腕の欠損で、妻が精神的におかしくなってしまいます。そして、一番変わってしまったのがニック。ベトナムの街で大金が稼げると口車に乗せられ、賭けロシアンルーレットに身を投じ、アメリカへ帰国しないんですよ。

2年後、そんなニックを迎えにマイケルが再びベトナムに向かうものの、最後の結末は涙なしには観られませんでしたね。。。まあ、2年間もロシアンルーレットに勝ち続けられるニックもすごいと思いますけど(笑)これって、弾を頭に当てて引き金を引くので、当たったら即死です。確率的にずっと勝ち続けられるのはほぼ無理じゃないかと思うんですが、、、そこは目をつむりましょうか(笑)

だからこの映画、戦争の惨さを伝えるわけでもなく、兵士の生き様を見せつけるわけでもなく、ベトナム戦争を背景にした友情物語って感じだったんですよね。あんまり戦争関係なくない?とは思うんですが、公開されたのが1978年なので、製作はもう少し前からですかね、ベトナム戦争が終わったのが1975年なので、世相を反映したんだと思います。鹿狩猟との関わりが無理矢理というか、タイトルに持ってくるほどかな?という気はしますが、個人的には十分に楽しめました。

<映画好きにはビビッとくるところ>

本作のメインキャストは、この後の映画でも共演するのが映画好きにはエモいところです。マイケル役のロバート・デ・ニーロは、ニックの恋人であったリンダ(メリル・ストリープ)と男女の関係になるんですが、2人は『恋におちて』(1984)で不倫するカップル役を演じます。また、ロバート・デ・ニーロとクリストファー・ウォーケンは『グランパ・ウォーズ おじいちゃんと僕の宣戦布告』(2020)で42年ぶりに共演することになります。42年って。30代半ばだった2人がおじいちゃんになって再会とか、そこまで第一線で役者を続けられたことが何よりもすごいですよね。

<そんなわけで>

戦争によって引き裂かれた男たちの友情が感動的な映画です。ロバート・デ・ニーロの演技、やっぱり見入っちゃいます。ぜひオススメしたい作品でした。

それにしても、ロバート・デ・ニーロのヒゲ面が、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)のときのクリス・エヴァンスにそっくりだと思ったのは僕だけでしょうか(笑)

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(『ディア・ハンター』(1978)と『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)の本編より引用)


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