古き良き大阪や京都などのド関西を舞台にした群像劇だけど、登場人物が多すぎて関係性がわかりづらい『小早川家の秋 デジタルリマスター版』
(↑予告がなかったのでこちらで)
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭14」で面白かった順位:6/7
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆
【作品情報】
原題:-
製作年:1961年
製作国:日本
配給:東宝
上映時間:103分
ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:なし
公式サイト:https://asa10.eiga.com/2024/cinema/1309/
【あらすじ】
※公式サイトより引用。
関西にある老舗の造り酒屋の老主人・万兵衛(中村鴈治郎)は65才になり、今は経営を長女・文子(新珠三千代)とその婿・久夫(小林桂樹)に任せて隠居の身。画廊に勤める亡くなった長男の嫁・秋子(原節子)と次女・紀子(司葉子)の行く末が悩みの種だった。
ある日、万兵衛の様子がおかしいことに気付いた娘夫婦が心配して調べてみると、万兵衛が昔の妾つね(浪花千栄子)とよりを戻していたことが分かった。
【感想】
※以下、敬称略。
「午前十時の映画祭14」にて。1961年の日本映画のデジタルリマスター版。松竹を拠点にしていた小津安二郎監督による唯一の東宝作品。なお、タイトルの「小早川家」は「こはやかわけ」と読みます。
<淡々と映し出されるとある家族の日常>
先日観た『宗方姉妹』(1950)もそうでしたが、小津安二郎監督は家族の日常を描いた作品が多いんでしょうか。今回の映画も小早川家の日常を追っているのみで、特にドラマチックな展開があるわけではないため、正直面白かったかと言われると個人的にはそこまで、、、って感じでした(笑)まあ、ドラマチックな展開がない分共感しやすいというか、現実的に感じられる部分はあるんですけどね。むしろ、今観ると映画の世界にとても懐かしさを覚えます。和室がメインの広い二階建ての家に、防犯意識の欠片もないのか、暑さ対策のために家中の引き戸は開けっ放し。今の若い子には伝わりづらいかもしれませんが、僕からすれば祖父母の家の雰囲気に似ているので感慨深い気持ちになります。
<人物相関図が謎すぎる>
この映画でとにかく言いたいことは、登場人物の関係性がわかりづらいということです。まず、秋子についてなんですけど、紀子から「おねえさん」なんて呼ばれるからてっきり姉妹だと思ったんですよ。でも、秋子は紀子の兄の嫁で、字にすると「お義姉さん」なんですよね。だから、ここに血の繋がりはありません。「おねえさん」っていう余所余所しい呼び方から察することもできたかもしれませんが、現代ならともかく昔の映画だったら、実の姉でも「おねえちゃん」とかじゃなくて「おねえさん」って呼びそうだからまったく気づきませんでした。その他、小早川家の親戚も何人かいるんですけど、これまた「にいさん」とか呼ばれたりしており、実の兄弟なのか義理の兄弟なのかもわかりません。そんな感じで、小早川家にはいろんな人が出入りするものの、もはや誰が誰だかって話でした(笑)
<自立した女性を描こうとしていた?>
登場人物は多いですが、重要なのは万兵衛と、その長男の嫁の秋子、長女の文子、その婿の久夫。そして、次女の紀子ぐらいでしょうか。彼らを中心とした小早川家の日常を追っていくのがこの映画のメインストーリーです。万兵衛がいまだに妾とちょくちょく会ってることにやきもきする文子との掛け合いは面白かったですし、縁談が持ち掛けられている秋子と紀子の行く末も興味深かったです。どうせなら、ネタ的にもう少しドロドロしてほしかった気もしますけど、この淡々とした家族の光景が小津安二郎らしさなんでしょうね。最後、秋子と紀子がまわりに流されずに「自分のやりたいようにやる」っていう決意をして幕を閉じるんですが、何かと女性の方が男性よりも下に見られがちだった当時の社会性を踏まえると、自立しているというか意志の強さを感じられました。自己主張をはっきりするのは『宗方姉妹』の満里子(高峰秀子)も同じでしたが、小津安二郎はそういうしっかり自分を持った女性を描きたかったんでしょうか。
<まさかの血縁関係に驚き>
あと、昔の映画あるあるですが、これまた出ている人が今の役者さんの身内だったりするんですよ。万兵衛を演じた中村鴈治郎は、中村玉緒のお父さん。紀子を演じた司葉子は、元Winkの相田翔子の義母。北川弥之助を演じた加東大介は、津川雅彦の叔父。昔の役者さんの方が、現代よりも自分の子供たちが役者になることが多かったんですかね。
<そんなわけで>
物語としての面白さは個人的にはわかりませんでしたが、昭和を代表する役者さんたちの若かりし頃の姿をスクリーンで観られるのはおいしいですね。あの『ゴジラ』シリーズ(1954-)で有名な宝田明や反町隆史の『GTO』(1998)で校長兼理事長役だった白川由美も当時20代半ばでちょろっと出ているので、それを見つけるのも楽しみのひとつかなと。
ちなみに、後で調べたら小津安二郎って人物や小道具の構図にミリ単位でこだわる人で、自分の納得いく形になるまで何十回とテイクを重ねる人だったらしいです。もはや役者も操り人形のようで、アドリブが多いタイプの役者とは反りが合わなかったとか。想像しただけで現場での体力の消耗度合いに怖さを覚えます(笑)
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