人生楽しそうなヒッピーミュージカルだけど衝撃的なオチが秀逸で最後に全部持っていかれた『ヘアー』
【個人的な満足度】
「午前十時の映画祭12」で面白かった順位:18/24
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★★☆
映画館で観たい:★★★★☆
【作品情報】
原題:Hair
製作年:1979年
製作国:アメリカ
配給:ユナイト映画
上映時間:121分
ジャンル:ミュージカル、コメディ
元ネタなど:ミュージカル『ヘアー』(1967-)
【あらすじ】
徴兵され、ベトナムの最前線に赴くことになったオクラホマ出身の青年クロード(ジョン・サヴェージ)は、2日後の出征を前にニューヨーク見物をすることに。
セントラルパークでヒッピーたちの奔放なパフォーマンスに圧倒された彼は、召集令状を燃やしていたヒッピーのリーダー、ジョージ・バーガー(トリート・ウィリアムズ)と意気投合。さらに、公園で目にした馬上の令嬢シーラ(ビヴァリー・ダンジェロ)に心奪われてしまう。
そんなクロードの気持ちを察したバーガーは、彼のためシーラの豪邸に出向いてパーティーに潜り込むが―。
【感想】
「午前十時の映画祭12」にて。1979年のアメリカ映画。いろんな意味でカオスな内容でした(笑)
<同じベトナム戦争にまつわる映画に出るジョン・サヴェージ>
この映画で主人公クロードを演じたのはジョン・サヴェージ。そう、『ディア・ハンター』(1978)でもベトナム戦争に赴き、精神を病んでしまうスティーヴンを演じていましたね。その映画は1978年の公開に対して、こっちは1979年。撮影期間かぶっていたかもしれません(笑)ただ、両者はまったく異なる雰囲気の映画です。『ディア・ハンター』はシリアスなヒューマンドラマでしたが、今回の映画はミュージカルコメディです。さらに、こちらは時期的にベトナム戦争と関連はしているものの、厳密にはベトナム戦争に行く前の話なので、まったく同じ題材というわけではありません。
<異様な歌と踊りがツボる>
軍隊に入る前に、田舎のオクラホマからニューヨーク見物に来たクロード。いわゆるおのぼりさんですね。彼はたまたま通りがかったセントラルパークでヒッピーのリーダーであるバーガーと意気投合します。まあ、意気投合っていうよりも、完全に向こうのペースに飲まれ、流れでバーガーたちと行動を共にしている感じでしたけどね(笑)田舎モンで都会に慣れていない人が、都会の陽キャに絡まれ、よくわからないままいっしょにいるっていう構図です。
で、このヒッピーたちがもう人生楽しそうすぎなんですよ。流れに身を任せる生き方で、ゆるゆるとハッパを吸い、性に奔放。自分たちのやりたいようにやって、無理矢理主張を押し通す強引さは、当事者からしたら相当な迷惑になりそうですが、傍から観ている分には痛快です。しかもこの映画、ミュージカルですから。よくわからない歌詞の歌と謎のダンスのオンパレードで、スクリーンの中はカオスそのもの。中でも、クロードがドラッグをキメているときに見た幻覚の常軌を逸した光景は楽しかったです。ストーリー自体は、ヒッピーたちと出会って、お嬢様のシーラに恋するクロードのすったもんだというシンプルなものですが、あの異様な歌と踊りが妙にツボるんですよ。それがこの映画の醍醐味ですね。
<衝撃的なオチ>
極めつけは最後のオチです!バーガーらと仲良くなったクロードですが、その後、無事に軍隊に入り、訓練を重ねます。しばらくして、彼がシーラに手紙を書いたことから、「返事書くより会いに行こうぜ!」とバーガーたち7人は遠路はるばるクロードのいるネバダへと向かいます。しかし、バーガーが軍隊の施設にうまいこと潜り込んでクロードを引っ張り出そうとするも、「点呼があるから無理だ」と。そこでバーガーの思いついた驚きの解決策と、その後に待ち受ける結末には、思わず身を乗り出して観てしまうほどのインパクトがありました。これまでノリだけで生きてきたことの因果応報というか、自業自得としか言いようがないのですが、「まさかそうなっちゃう?!」っていう。まあ、個人的には当時の米国陸軍のシステムの弱さにも疑問は残りますけど(笑)
<気になるクロードとシーラの関係>
ただ、全体を通じて思うのは、シーラってクロードよりもバーガーの方に気があるように見えるんですけど、どうでしょうか。お嬢様という育ちからか、ヒッピーのような180度異なる生き方に心惹かれているような感じがしました。池で泳ぐシーンで、クロードとそれっぽい雰囲気は醸し出しているんですけど、バーガーの女性の扱いがうまいからなのか、そっちの方に気がいっている印象を受けます。クロードと恋仲になるなら、もっと彼に気があるような素ぶりがあってもよかったかもとは思いました(笑)
<そんなわけで>
だいぶ異質なミュージカルでしたが、その異質さが面白い映画です。歌と踊りに統一感がなくて耳に残りづらいし、シーラってクロードにそんな惹かれてる?って気になる点もありますが、ラストのオチの衝撃で全部許せちゃえます(笑)