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「情事と化すほどの料理においては肉体的要求も精神的要求も区別がつかない」ことを痛感した『バベットの晩餐会』

【個人的な満足度】

「午前十時の映画祭13」で面白かった順位:22/23
  ストーリー:★★★☆☆
 キャラクター:★★★☆☆
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★☆☆

【作品情報】

   原題:Babette's Feast
  製作年:1987年
  製作国:デンマーク
   配給:コピアポア・フィルム
 上映時間:103分
 ジャンル:ヒューマンドラマ
元ネタなど:小説『Babette's Feast』(1958)

【あらすじ】

※公式サイトより引用。
19世紀末、デンマークの小さな漁村。牧師の娘マーチーネ(ビルギッテ・フェダースピール)とフィリパ(ボディル・キュア)は、厳格な父の教えを守り、結婚もせず、清貧のまま年老いていた。

そんなある日、フランスから亡命してきたバベット(ステファーヌ・オードラン)が家政婦として働くことに。老姉妹は亡き父の生誕100年記念の晩餐会に村人を招くことを計画するが、そんな折、バベットに1万フランの宝くじが当たったという知らせが届く。

【感想】

午前十時の映画祭13」にて。1987年のデンマーク映画。原作小説は未読です。フランス料理のフルコースがとてつもなくおいしそうではありましたが、いわゆるアート系の映画なので好き嫌が分かれそうな作品だなと感じました。

<2人の姉妹に翻弄された殿方たちの行く末に想いを馳せるなど>

これ、各レビューサイトの点数はとても高いんですよ。2024年1月28日16時30分の時点で、Filmarksで3.9、映画comでは4.1ですから。あの哀愁漂う世界観や機微な人間関係など、小説が原作というだけあって全体的に文芸作品っぽい雰囲気ではあるものの、個人的には刺さらない作風でしたね(笑)デンマークの小さな漁村で暮らす2人のクリスチャンの姉妹と、そこに居候している家政婦のバベットの日常が淡々と映し出されているだけなので。ドラマチックな展開や手に汗握るようなクライマックスなんてものはありません。

とはいえ、ここで描かれる人間模様には解釈の余地があって楽しめます。それは、姉のマーチーネと妹のフィリパに恋をした2人の男性との関係性です。若い頃の彼女らは誰もが認めるほどの美人姉妹。姉のマーチーネには、スウェーデン軍の騎兵将校ローレンス(ヤール・キューレ)が心奪われるも、厳格な父親や教会の教えに翻弄されてか、想いを告げられずに村を出ることに。妹のフィリパには、人気のオペラ歌手アシール・パパン(ジャン=フィリップ・ラフォン)が求愛するも、神に仕える道を選んだフィリパはそれを拒否し、パパンも村を発つことに。

それから35年の月日が流れ、2人の男性はそれぞれの道を歩むものの、心にぽっかり穴が空いたまんまってのが感慨深いですね。ローレンスはマーチーネのことを忘れようと軍務に励んで出世し、いいところのお嬢さんと結婚するも、結局、心に虚しさを抱えたまま生きてきたようですし。パパンは落ちぶれてしまったらしいですが、パリ・コミューンの争乱で家族と死別したバベットの面倒をみてほしいと手紙を添えて彼女をよこすぐらいには、フィリパへの想いが捨てきれなかった様子。結局、どんなに仕事に打ち込んでも、華々しい世界を生きていても、たったひとつの恋のダメージは一生残り続けるんだなとしみじみ感じました。

<おいしい料理を食べるだけで幸せな気持ちになれる>

で、家政婦として居候しているバベットですが、物語の後半は彼女の独壇場です。姉妹の亡き父の生誕100周年の晩餐会の料理を任せてほしいと申し出て、フランス料理のフルコースを作ります。食材にはウズラやウミガメなどが持ち込まれ、村人たちは困惑ですよ。もともと信心深い人たちだから、いつもと勝手が違うことに対する拒否感や嫌悪感ってのは強かったんじゃないかなと思いますけど。だから、料理を味わうこともしないし、食事関する話も一切口にしないと誓い合います。

ところが、実際に運ばれた料理を口にして、あまりのおいしさに参加者は徐々に身も心もほぐれていきます。いがみ合う間柄だった人たちも、おいしい料理の前で仲直りし、素晴らしいひとときを過ごせたことに極上の幸せを感じたのです。見出しの「情事と化すほどの料理においては肉体的要求も精神的要求も区別がつかない」とはローレンスのセリフですが、美味しい料理にはそういう感覚に陥るほどの感動を与える力があるんだなと感じました。

なお、コースメニューは初公開時のチラシの裏面に記載があったそうだけど、以下の通りだそうです。
・海ガメのスープ
・ロシア産キャビアのドミドフ風
・ウズラのパイケース詰めソースペリグルディーヌ
・サラダ
・チーズ
・ラム酒入りババ

ワインは、食前酒のアモンティヤード・シェリーからヴーヴクリコ・ボンサルダン、クロ・ド・ヴージョ、ハイン・コニャックと。メッチャ食べてみたいです。。。

<そんなわけで>

ラブストーリーってわけでもないですし、グルメ映画ってわけでもないので、とっつきにくい部分はあるんですが、とにかくおいしい料理をみんなで囲めば平和になるのかなと思える映画でした。ちなみに、バベットが振る舞ったフルコース、けっこうなお値段です(笑)それがこんな小さな漁村で食べれるっていう対照的なシチュエーションも面白いかもしれません。


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