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ハワイで自分を解放しすぎた日本人のおじさん2人組

ハワイで某ブランドのセールススタッフとして働いていた時のことだ。

夕方、50歳前後くらいの日本人のおじさん2人が来店した。自衛隊でいうと1曹から曹長、シャバでいうと、課長や部長といったところだろうか。普段、真面目に仕事をしていそうな、そんな雰囲気が伝わってきた。
会社の女性たちに小さめのお土産を探しているとのことだったので、 ハワイ限定柄のポーチをお勧めした。そして、売れ筋の形や柄、大体これくらいの物が入ること、日本の雑誌に掲載されたことなど、具体的に説明を加えた。

彼らは、「なるほどなるほど。」「値段もちょうどいいね。」と真剣に話を聞いてくれて好感触だったのだが、「ちょっとこれから行く所があるから、また来ます。」と、何も買わずに出て行ってしまった。

話は聞いてくれたが気に入らなかったのかもしれない、こればかりは仕方ない。そう思いまた他のお客様の接客にあたっていると、3時間ぐらいした頃だろうか、彼らが戻って来てくれたのである。

それも…

べろっべろに酔っ払って。

もはや私の記憶にある、3時間前の彼らではない。

「YO!オネーチャン!戻ぅぉって来ったよぉ~~ん!」


と大声を出しながら、3時間前に私がお勧めしたポーチを鷲掴みで7個、レジまで持って来た。私の記憶にある3時間前の彼らではないが、購入していただけるのはありがたい。
レジを打ちながら世間話などしていると、なんと、彼らの息子がどちらも自衛官だということが判明した。私も元自衛官だと伝えると、彼らのテンションは最高潮に達した。
そして何を思ったか、近くで仕事をしていたアメリカ人のマネージャー(男)に向かって思いっきり日本語で、

「あんた店長?え?マネージャー?へっへ~~!(小指を立てながら)プライベートでは、彼女(私)のマネージャー、ってか?ガハハハハハハ!」


と、絡み始めたのだ。

突然小指を立てられ、なにやら日本語でまくしたててくる日本人を見て、マネージャーは唖然としている。や、やめてくれ… 同じ日本人として… しかも、通訳しづらい内容もやめてくれ…。

そしておじさん達は超ご機嫌で、『じゃ、また来るわ~!』と、5回ぐらい言って去って行った。

店内は、元の静けさを取り戻した。

これが、人を解放させるハワイマジックなのか… それとも、単に酒の力なのか。楽園とうたわれるハワイだが、悲しいかな、住んでしまえば現実世界となる。私もハワイは観光客として来たいな、と、彼らが羨ましく思えた。

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