『運試し擬人化』 # 毎週ショートショートnote
彼女が怒っている。
仕事が上手くいかなかったらしい。
とにかく、ついてないとぼやいている。
そして、その怒りの矛先は僕に向いているようだ。
今から出て来いと連絡してきた。
今日は大晦日だというのに。
その夜、指定された公園に行くと、
「そこに立って」
どこで買ってきたのか、スーパーボールが山ほど入ったビニール袋。
「絶対によけないでね」
どうやら僕は射的の的にされたわけだ。
しかし、彼女の投げるスーパーボールは、ことごとく的を外れて暗闇に消えた。
ほっと安心した時だ。
「ちくしょう、これでも食らえ」
彼女は、トートバッグから何やら取り出して投げた。
それは、見事に僕の鼻に命中した。
中身たっぷりのシュークリームだった。
「あ、当たっちゃった」
「もしかして、これって運試し?」
「そう」
「僕で?」
「そう」
「当たったね」
「甘いでしょ」
「よかったね」
「よかった」
いつの間にか、年が変わっていた。
申し訳なさそうにうつむく肩を抱く。
「今年は、いいことあるよ」
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