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現代から19世紀、そして現代へ連なる狂信と虐待〜「聖なる証」

その少女は4か月間、水以外のものをいっさい口にしていない。
そんなことがありうるのか。

舞台は19世紀。
ひとりの看護師が英国から、アイルランドの小さな村に呼ばれてやってくる。
その目的とは、ひとりの少女を監視すること。
少女は4か月もの間、何も食べずに生きている。
それが事実なのかどうかをみきわめて欲しいというもの。

看護師のエリザベス・ライトは、当初からそんな奇跡を信じてはいないが任務を引き受ける。
11歳の少女、アナ・オドネルは信仰のためと言うばかりで、なかなか心を開こうとしない。
監視を続けたが、本当に何も食べてはいないようだ。
しかし、少女は痩せ細ったりはしていない。

エリザベスは監視を強化するために家族との接触も禁ずる。
するとみるみる衰弱していく少女。
そして、ある事実に気づき、さらに重大な出来事をアナから聞かされる。
エリザベスはそのことを、村の委員たちに報告するが相手にされない。
彼らがエリザベスに望んでいたのは、奇跡を証明することだけだったのだ。
エリザベスは、村で知り合った新聞記者のウィル・バーンとともに、ある行動を決意する。

さて、この映画、冒頭は、広いスタジオ内に作られたセットの映像から始まる。
2階建ての建物が外観は剥き出しのまま、足場が組まれた状態。
建物の屋内のセットなのだろうか。
と、誰のものかわからないナレーションが流れる。
「これから皆さんが出会う登場人物たちは
自身の物語を全身全霊で信じている
私たちは物語あっての存在
だから皆さんにこの話を信じてほしい」
そしてカメラはスライドして、船内のセットに変わり、そこに座るエリザベスが映し出され、物語は動き始める。
この、ナレーションの正体は映画の後半で判明する。
映画の最後はまたこのセットのシーンで終わる。
この映画のテーマである狂信と虐待、それはそのまま現代に通じるというメッセージなのだろうか。

エリザベス・ライトを演じるのは、フローレン・ピュー。
「ブラック・ウィドウ」の時とは打って変わって、重厚な演技を見せている。

「聖なる証」はNetflixで配信中。

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