『オバケレインコート』 # 毎週ショートショートnote
オバケレインコートと呼ばれていた。
町の外れにある、とある一軒家。
その2階の窓際に吊るされたレインコート。
ベージュの地味なレインコート。
誰も住んでいない古い家。
窓の向こうで、そのレインコートが時折り揺れる。
誰も見たものはいない。
いないが、そう言われると、今にもレインコートは動きだしそうに見える。
その家に肝試しにやってきた少年たち。
ひとりずつ、2階の部屋まで行って帰って来よう、あのレインコートを揺らすのが合図だぞ。
ところが、さあと言っても、すすんで行くものはいない。
けっ、なんだお前たち。
そう言うと、リーダーの子は、ひとりでその家に入っていった。
そして、ほどなくすると、2階のレインコートが小さく揺れた。
どんなもんだい、そんな顔でリーダーが家を出てくる。
しかし、みんなはリーダーの後ろを指差して、口をあわあわさせている。
リーダーは、ベージュ色の袖口が背後から首にかかるのを見た。
今も、オバケレインコートと呼ばれている。
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