『2次会デミグラスソース』 # 毎週ショートショートnote

後輩が2年ぶりに連絡をしてきた。
「先輩、送別会やりましょう」
「送別会って、俺、辞めてもう2年になるぞ」
退職した2年前は、感染症が蔓延していろんな集まりごとができなかったのだ。

送別会には、前の部下のほとんどが集まってくれた。
と言っても、小さな会社だったので数人だが。
それでも、嬉しいものだ。
会は大いに盛り上がった。

「2次会はあの店に行きましょうよ」
「ああ、あの店だな」
あの頃は、よく酔い潰れた後輩を連れて雪崩れ込んでいた。
ハンバーグやオムライスにかけるデミグラスソースが絶品の店だった。
店主も、酔った客を嫌がらなかった。

ぞろぞろと夜の街を歩いた。
店のある路地に入ったところで、みんなは立ち止まった。
シャッターが降りている。
感染症のあおりを受けて潰れた店は珍しくない。
引き返そうとした時に、誰かが言った。
「先輩、これ」
見ると張り紙がしてある。
「営業を再会します」
来週からだ。
歓声が上がった。
「先輩、来週も集まりますよ」