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『だんだん高くなるドライブ』 # 毎週ショートショートnote

僕は勇気を出して彼女にプロポーズした。
しかし、彼女はなかなか返事をくれない。
その頃の僕たちのデートと言えば、いつもドライブだった。
食事は毎回、通りすがりのファミレスで済ませた。

僕は少しおしゃれなイタリアンの店に予約をとった。
今日こそ返事を聞けるだろうか。
でも、最後のエスプレッソを飲んでも彼女は何も言わない。
次は、高級な中国料理。
そして、芸能人でもおいそれとは来ることのできない三ツ星のフレンチレストラン。
でも、彼女は微笑むばかり。
そして、僕の出費はかさむばかり。

とうとうある夜、僕は車を町の高台にある展望台に走らせた。
百万ドルの夜景がフロントグラスの向こうに広がる。
僕は彼女に返事を迫った。
「だって」
彼女は言った。
「だって、あんなレストランで、みんなの前で泣けないじゃないの。それに、女の子は、はいって言うまでがいちばん幸せなのよ」
彼女の目尻から一筋。
僕は彼女の肩に手を回した。
今夜のドライブがいちばん高くつきそうだ。


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