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『1億円の低カロリー』

「金を渡してもらおうか」
サングラスの男は言った。
「いや、ブツが先だろう」
あご髭の男が答えた。
小さなテーブルを挟んで向かい合う2人。
その背後では、それぞれの部下たちが睨み合っている。

あご髭はテーブルの上にスーツケースを置いた。
「ほら、1億円だ」
サングラスが中を確認する。
「間違いないだろう」
部下がスーツケースを持って下がると、今度はサングラスがスーツケースをテーブルにのせた。
「約束の低カロリーだ。しかも良質の」
今度はあご髭が中を確認する。

時は205×年。
人類は温暖化、飢餓と貧困といった問題をSDGs等の全世界的な取り組みにより克服してきた。
しかし、環境や他者に関心を向けるあまり、自分自身の健康を放置しすぎた。
高カロリー食品があふれ、低カロリー食品はヤミで高額に取引されるようになってしまった。

「言っておくが、一度に食べるんじゃないぞ」
サングラスが別れぎわに言った。
「急に痩せると疑われるからな」



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