『変身、その後』
ザムザが最初かどうかはわかりませんよ。
窓口の男は話し始めた。
彼は不幸な結果に終わりましたけどね。
今では珍しいことではありませんよ。
人が虫に変身することなど。
もう、存在がどうのこうのとか難しいことを考えずに、どんどん変身しちゃいますからね。
若い子らは。
変身したかと思えばいつの間にか、また人間に戻っている。
そんなケースも多々確認されていますよ。
それに虫になったからといって何も変わりません。
多少言葉が発しにくくなったりするかもしれませんが。
その知能は、人間の時と変わりません。
もちろん、賢い人は虫になってもどこか知的です。
そうでない人は何に変身しても、それなりですよ。
とにかく私たち役所の人間としては早く法整備をしてほしい。
人権はどこまで保障されるのか。
虫にも人権はあるのか。
それともそれは虫権とでもいう、別の権利になるのか。
それなら、身分証明書なども2種類必要になりますよ。
人間の時と虫に変身した時と。
そうですよ、虫の時の身分証明がないと困りますよね。
どの虫が、元からの虫で、どの虫が誰かが変身した虫なのかが分かりませんからね。
それに、最近では本来全ての人間は虫であったなどという学者も出てきました。
虫が一時的に人間に変身していたにすぎないのだと。
そういえば、この間、殺された虫に労災が適用されのは画期的でした。
婚姻関係もどうするのかですよ。
片方の、あるいは両方の変身を理由に離婚が認められるのか。
離婚したとして、子供がいた場合に虫にも親権が認められるのか。
そもそも、人間と虫の結婚なんてね、あはは…どう思います?
ああ、これから政府は大変だ。
で、あなたは本当は人間ですよね?
イエスなら羽ばたきは一回で。
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