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『秋の空時計』 # 毎週ショートショートnote

ようするに、あれか、娘ごころと秋の空ってやつか。
違うってのか。
そんなこたあ、言わせねえよ。
なんだ、差別だと。
娘ってのがいけねえってのか。
笑わせんじゃねえ。
てめえみてえなババアを娘って言ってやってんだ。
ありがたく思えってんだ。
だいたい、今何時だと思ってんだ。
約束は何時だよ。
この雨ん中をよ、どんだけ待たせやがんだ。
まったく、てめえの心みたいに冷てえぜ。
いや、てめえの心にくらべりゃ、こんな雨、濡れてってやらあ。
てめえの時計は、今どこをさしてる。
それとも何か、その時計も、心と同じでコロコロ、変わるのか。
長い針と短い針が、あっちいったり、こっちいったり。
そんな都合のいい秋の空時計、あっしにも譲ってくだせえってな。
ほらほら、おいらの時計も、てめえの時計みたいに、おかしくなってきたぜ。
涙じゃねえよ、秋の雨さ。

そこまで、打ち込んで消去した。
どうやら、また振られたみたいだな。
ほら、もう晴れてきたぜ。
腕時計に秋の空が映ってらあ。

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