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『チャリンチャリン太郎』 # 毎週ショートショートnote
僕たちがいじめられていると、そいつは必ずやってくる。
チャリンチャリン太郎と呼ばれるそいつは、いつも自転車にのっている。
いじめっ子に向かって、
「俺と競争しようぜ」
誰も、そいつには勝てない。
風のようにそいつの自転車は走っていった。
そいつの顔を見たものはいない。
いつも、野球帽をまぶかにかぶっている。
その声は、子供のようでも、大人のようでもあった。
「競争しようぜ」
誰もそれには逆らえなかった。
ある時、僕たちは隣町からバイクできたやつらにいじめられていた。
いつものように、そいつは現れた。
バイクの奴らは笑った。
「バイクと競争? 自転車で?」
バイクが引き離していく。
そいつは追いつけない。
バイクの前方を幼い女の子が横切った。
危ない!
その時、そいつは野球帽を投げた。
帽子は、バイクのハンドルに引っかかり、横倒しにした。
そいつは帽子を拾うと、チャリンチャリンと遠ざかっていった。
それ以来、チャリンチャリン太郎の姿を見たものはいない。
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