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yamanagiyuto
『夜光おみくじ』 # 毎週ショートnote
仕事始めの1日を終えての帰り道。
毎年この日は、終わってからの新年会がある。
酔いを覚まそうと、少し遠回りする。
近くの神社の境内にさしかかった。
高台にあり景色がいいので、時々訪れる。
夜景を眺めていると、人の気配を感じた。
振り向くと、老人が立っている。
その周りには、蛍のような光。
こんな時期に蛍なんてありえない,
そばまで行くと、その老人は言った。
「綺麗でしょ」
「これは?」
「おみくじですよ、木に結ばれた」
「おみくじ?」
「おみくじなんて、普通は自分のために引きますよね。そうでなくても、せいぜい家族や恋人くらいのものです」
「そりゃ、そうです」
「でも、その人たちが、身も知らぬ他人のことを願い始めると、こうして光るのですよ」
光りの数は、どんどん増えていった。
気がつくと、老人の姿はなかった。
次の休みに、神社に出かけておみくじを引いた。
残念ながら凶だったがどうでもいい。
木の枝にしっかりくくりつけた。
今夜あたり、光っているだろうか。
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