『文化祭の思い出』 # シロクマ文芸部
文化祭の思い出を語ってあげましょうか
そうですね、たくさんはありませんが、忘れられない文化祭がありますよ。
はい、お話ししましょう。
聞きたいはずです。
あれは、中学の2年の文化祭でした。
文化祭なんて、わたしたちの頃は中学生になって初めて体験するものでした。
今でもそうですか。
知りませんか。
中学生になると文化祭があって、それは学校中がお祭りになる特別な日だと、みんなワクワクしていましたね。
わたしも楽しみでしたよ。
でも、一年生はまだ何をやっていいのかよくわからない。
それに、クラスもまだそんなにまとまってはいない。
でも、2年生になると、文化祭がどんなものかわかってくる。
昨年、先輩たちがどんな出し物や企画をしたのかも知っている。
どこまでが許されるのかもわかってくる。
許されないことも、どうすれば見つからずにできるのか少しずつ覚えてくる。
それに、受験まではまだ時間があります。
普通なら、人の一生で一番楽しい時期かもしれませんね。
それに、わたしたちの時はクラスが一年生からそのまま持ち上がりで、結束力が強かったんです。
そう、みんな団結していましたね。
みんな、楽しそうだった。
準備をしている時も、開催中も、終わってから打ち上げも。
なんだか、キャアキャア言いながら、ホームセンターに買い物に行ってましたよ。
夜も、誰かの家に集まって、夜遅くまで打ち合わせをしたり。
当日なんか、いつもはぎりぎりにしか登校しない子が、1時間も早く来たりしてね。
みんな、よくまとまっていました。
もちろん、大成功です。
校長が選ぶ、いちばん優れた出し物に選ばれていたんじゃないかな。
終わってからは、近くの食堂で打ち上げですよ。
担任も呼んでね。
あまり口出ししない先生でしたけどね、その時は嬉しそうに笑っていたらしいですよ。
ある意味、その先生のおかげでみんなひとつになれたんじゃないかな。
みんながひとつになっていくのを、先生は黙って見ていたんです。
ええ、これが文化祭の思い出です。
どうですか。
黙っていないで。
ああ、きっと、文化祭の出し物を聞きたいのですね。
いえね、知らないんですよ。
だから、言ったじゃないですか。
みんなは、ひとつにまとまって結束していたんだって。
クラスはひとつにまとまって、わたしを寄せつけようとはしなかった。
そうでしたよね。
だから、彼らが何をしたのか、知っているわけがないじゃないですか。
そうでしょう。
楽しかったですか。
打ち上げは楽しかったですか。
わたしをのけ者にして、みんながまとまっていくのを黙って見ていた、先生。
何もしなかった先生。
ねえ、先生、楽しかったですか。
だめですよ、それはもう少しかぶったままで。
今から、2人の文化祭、始めましょうよ。
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