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『てるてる坊主のラブレター』 # 毎週ショートショートnote

わたしは雨女だと言われていました。
遠足の日も、運動会の日も、必ず雨が降りました。
遠足に行くのも、運動会に出るのも、わたしだけじゃないじゃん。
でも、雨女はわたしだとされました。

それは遠足の前の日でした。
隣の席の男子が、そっと小さな紙袋を渡してきました。
家に帰って開けてみると、中にはてるてる坊主。
白いタオル地にサインペンの目鼻口。
わたしは、窓の外にそれをぶら下げました。
でも、次の日は大雨でした。

雨女の人生にいいことなんてひとつもありません。
進学も思い通りにはいかず、あきらめていました。
仕方なく働いていた会社も、先日倒産しました。
雨の日でした。

首を吊って死のうと思いました。
ふと見ると、窓の外にてるてる坊主が揺れています。
目鼻口は消えて、すっかり汚れています。
タオル地をほどいてみると、中からビニール袋に包まれた手紙が。
幼い小学生の文字。
でもわたしには、読めました。
もう、名前も覚えていないけれど、会いたいと思いました。

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