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『夢のかけら』

あっしたちが、こんなことしたくてやってると思いますか。
あなたならどうですか。
こんなこと、やりたくないでしょう。
そりゃ、そうだ。
それに、あなたたちが、あっしたちみたいになっちまったら困ったもんだ。
誰が、世界を動かしていくんです。
世界には、運転手が必要なんですよ。

もちろん、そうでしょう。
あっしたちは、働きもせずに人様の食べ残したものばかりを漁ってるって?
そうでしょうね。
そう思われたんなら、あなたもまだまだまともな人だ。
安心なさい。
明日また目覚めたら、いつものように世界を運転しに出かければいい。

あっしたちには、眠るところがない?
ああ、そういう意味ではそうかもしれません。
でも、それなら、あっしたちは眠らないとでも?
眠りますよ。
あなたが明日目覚める頃には、あっしたちはまだまだ楽しい夢ん中だ。
そう、夢ん中ですよ。

あっしたちが漁っているのはね、食べ残しばかりじゃない。
あなたたちがうっかり捨てた夢。
それを毎日毎日漁っているんですよ。
そして、中にはね、そう中にはね…
あなたにも心当たりがあるかもしれませんがね。
中にはね、うっかりじゃなくて、こっそり捨てられた夢もあるんですよ。
あなたたちの中には、夢がお荷物になる人もいるのですね。

驚いたもんだ。
きっとあなたも、こんな時間にこんなところをうろうろしているということは。
悪いことは言わない。
お持ちなさい。
持っておきなさい。
夢に賞味期限も、消費期限もない。

ほら、あのお星様の光。
あれは、あそこから来たと思えば過去の光だ。
でも、あそこに行こうとすれば未来への光ですよ。
抱えた夢は多い方がいい。
ほら、この星空のようにね。

それに、悪いのは夢じゃない。
夢は叶わなくても、その夢にふさわしくあろうとすることはできます。
あなただって。
それに、あっしたちもね。

だから、お持ちなさい。
ああ、今ポケットから少しこぼれ落ちたやつ。
それだけ下されば結構ですよ、あっしには。
その夢のかけらだけでね。



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