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グリーン車で四葉のクローバーを探す

年に数回のことなので、のぞみに乗る時には張り込んでグリーン車にしている。
何がいいかというと、シートがゆったりしていたり、座席に持ち帰り自由の雑誌があったり、おしぼりが配られたり、ゴミを集めてもらえたり、そんなサービスもさることながら、とにかく静かだということだ。
たまにボソボソとした声がひとことふたこと聞こえることはあるが、大声で会話をしている人はまずいない。

ひとりで乗っている人も、知らない人同士が隣り合わせになっているのを見かけることはまずない。
混雑時にはどうかわからないが、それが暗黙のルールなのだろう。
トナラーを心配しなくていい。
僕はいつも妻と乗るので、そもそもその心配はないが。

さて、そのグリーン車に乗るときに、いつも思うのは、
「今日は誰か有名人、乗ってるかなあ」
まあ、ミーハーというのは、いくつになっても治らない。

途中、トイレなどで通路を移動する時には、有名人が乗っていないかと注意してみるが、今の所見かけたことはない。
気がついたのは、座っているこちらも通路を移動している人からよく顔を見られることだ。
多分、その人も有名人を探しているのだろう。

人はどうして、そんなに有名人に会いたいのだろうか。
売れっ子アイドルや芸人なら、テレビでいつでも見られる。
そうでなくても、今ならネットで探せばほとんどの有名人は動画でも見られるだろう。
それでも、そんな液晶を介さずに直接この目で見たい。
この時の「見たい」「会いたい」は、ライブなどで見る事とは少し意味が違っているように思う。

ライブやイベントでは、その場に行けば必ず見ることができる。
そうではなくて、僕たちは、思いがけない時に、思いがけないところで、出会いたいのだ。
ふと、すれ違いたいのだ。

それで、どうなるものでもない。
お知り合いになれるわけでもない。
勇気があれば、ひとこと、ふたこと、言葉を交わせるかもしれない。
でも、そこまでだ。

それでも、僕たちは、それだけで、出会っただけで、すれ違っただけで、嬉しくなる。
何となく、その日がいい日であるような気がする。
多分、それは四葉のクローバーのようなものなのだろう。
そう考えれば、幾多の有名人にもそれなりの、有名人としての存在意義はあるのかもしれない。

四葉のクローバーになろうとする人もいれば、四葉のクローバーを探す人もいる。

今度グリーン車に乗る時には、深めのキャップとサングラスで、四葉のクローバーを装ってみようか。
偽物にご注意を。

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