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『半笑いのポッキーゲーム』 # 毎週ショートショートnote

それは、小学校6年の夏休みのこと。
ある日、向かいの空き地に大きな家ができたなと思っていたら、荷物がどんどん運び込まれている。
二学期の始業式。
あいつは担任と一緒に教室に現れた。
そして、いちばん後ろの隅に陣取る俺の隣の空いた席。
そこがあいつの席だった。
よろしくねだと。
金持ちは嫌いだぜ。

修学旅行のバスの中だった。
教室の席と同じ順に座った。
俺は隣のあいつを無視して、通路を挟んだ奴らと騒いでいた。
その時だ、バスガイドが余計なことをしやがったのは。
「皆さん、なぜかここに一本のポッキーがありまーす」
そして、始まったポッキーゲーム。
笑ったり、叫んだりしながら、ポッキーが回っていく。
前の席から回ってきたポッキーを、あいつは何を考えたのか、ガブリとやっちまいやがった。
えっ。
あいつの唇に残っているのは、1センチほどのポッキー。
あはは。

それが俺たちの初キスと言えるのかな。
あいつは、その後、そいつになり、こいつになり、おまえになった。


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