『鳥獣戯画ノリ』
「ねえ、兎を飼いたいんだけど」
「駄目だ」
「可愛いじゃない。それに鳴かないから、マンションにはぴったりよ」
「可愛くないさ」
「どうして」
「だって、昔話に出てくる兎って、悪い奴ばっかりなんだぜ」
「例えば」
「例えば、因幡の白兎」
「それ何?」
「古事記に出てくる話で、兎が鮫を騙すんだよ。でも、結局、怒った鮫に皮を剥がれてしまうんだけどね」
「ああ、でも、それ鰐じゃなかったかな」
「日本に鰐はいないさ」
「他には」
「兎と亀」
「それは知ってるわ」
「あれも、兎は力はあるのに油断して亀に負ける」
「それから」
「かちかち山」
「聞いたことある」
「お婆さんを殺した狸を兎が懲らしめるんだけど、そのやり方が、残酷、陰湿、冷酷、もうサイコパス。あれは絶対にアニメ化できないね」
「でも、可愛い兎もきっといるわよ」
「いないって」
「このおー」
「おい、うわ、やめろって」
「兎を飼わないと、こうしてやる。このわからずや蛙め」
「うわあ、まるで鳥獣戯画のノリだあ」
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