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『忍者ラブレター』 # 毎週ショートショートnote


いわゆる置き手紙とでも言うのだろうか。
このところ残業続きで疲れ切っている。
もう化粧も落とさずに、何もかも放り出して眠りたい。
そう思って開けた1人暮らしのアパートのドア。
その足元にこの手紙は、置かれていた。

明らかにラブレターだ。
差出人はわからないが、私はその人の人生で一番大切な存在らしい。
待て待て。
宛先はどこにもない。
私の名前どころか、固有名詞など一切書かれていない。
そもそもどうしてここに。

忍者ラブレターと呼ばれるものがあるらしい。
それは、さりげなく置かれていたり、天井からひらひらと舞い落ちてきたり、時には、矢文のようにぐさっと届くこともあるとか。
文面は、愛の言葉で溢れている。
差出人は謎だが、受け取る人には共通点があるという。

それが私宛なのかどうか、わからなくてもいいと思った。
この世界には、こんなに誰かを愛する人がいる。
こんなに誰かに愛される人がいる。
手紙を四つに畳むと、カバンに忍ばせた。
明日は早く帰れるかな。

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