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読書記録#80 年収は「住むところ」で決まる

 
図書館で拝借
 
 
今の私には特に必要とする内容ではないが、ただ気になるというだけで手に取ってみた。

欲しい知識、読書前の自分なりの仮説等は特にない。
 
 
さて、読み始めてみると、、かなり面白かった。
色々な興味深い研究結果がこの一冊に詰め込まれている。
ただ、あくまで2014年時点のアメリカ視点で書かれていることに注意。


●読書メモ

比較優位の視点に立てば、産業構造が大きく異なる国同士であるほど、貿易によって互いに得るものが大きく、雇用の減少という面での弊害も小さいと考えられる。中国、ブラジル、インドなどの新興国はアメリカと産業構造の違いが大きいので、貿易により双方がきわめて大きな恩恵を得られる計算だ。アメリカでは、イノベーション産業で雇用が拡大する可能性が高い。
比較優位の考え方を知ると、国際競争に関するメディアの議論の多くがいかに的外れかが理解できるだろう。中国なり韓国なり、貿易相手国の生産性が高まることを悪いニュースと考える人は多い。その国に雇用を奪われる、というわけだ。しかし、貿易はゼロサムゲームではない。スポーツの試合と違って、相手が勝てばこちらが必ず負けるという図式ではないのだ。貿易相手国の生産性が高まれば、その国から輸入する製品がいくらか安くなる。それは、消費者にとっては、実質的に少し豊かになったのと同じことだ。
つまり、賃金の安い国からの輸入により雇用の減少という形で最も大きな打撃をこうむるのは低技能・低所得の働き手だが、安価な輸入品が入ってくることによる恩恵を最も受けるのも低所得者だ。グローバル化のパラドックスの一つは、労働者として最も打撃を被る人たちが、消費者としては最も大きな恩恵に浴するという点なのである。

 
・製造業の生産性向上
     ↓
・商品の値段が安くなる&労働者の賃金も上昇
     ↓
・が、最終的には雇用数の減少
     ↓
●社会全体的には豊かになり、生活水準の向上
     

経済学者のポール・クルーグマンは以前、「国を貧しくする要因は、不況、歯止めなきインフレ、内戦などさまざまだが、国を豊かにできる要因は生産性の向上だけだ」と言っている。

 

・結局、人間にしかできない仕事が残る

新しいテクノロジーが登場すると、多くの場合、高い技能の持ち主が有利になる一方、中程度の技能を持つ人に適した職の多くが消滅し、技能レベルの低い人たちの雇用にはそもそもあまり影響が及ばない。
オーター(マサチューセッツ工科大学の労働経済学者)らが2003年の論文で示したように、コンピュータとロボットは、機械的反復作業に従事させる分にはきわめて効率的だが、そうでない作業を実行させるのは非効率だ。
労働市場の空洞化と中流層の消失は、一時的な現象ではないし、アメリカだけの現象でもない。先進国では、どこでも見られる現象だ。オーターは、1993年以降にヨーロッパの主要16ヵ国の低賃金・中賃金・高賃金の雇用がどのように増減したかを調べた。すると、すべての国で中賃金の雇用が減り、低賃金と高賃金の雇用が増えていたという。

→どうやら本書では、工場作業員は中程度労働者の中にカテゴライズされているようだ。

→大卒新卒の就活がどんどん無理ゲー化していきそうな。。

→優秀な人間として良い会社に入るなり起業して結果を出す、それが出来なければ、濁して言うが、かなりの現代日本人が避けている職業に就くしかないのか。。どんどん夢のない世界になっていくな、、反出生主義になりそうだ。。

 

重要なのは、形のある製品をつくっているか、形のないものをつくっているかではない。大事なのは、製品にせよサービスにせよ、革新的で、ほかに類がなく、簡単には模倣されないものをつくっているかだ。厳しいグローバル競争のなかで高給の雇用を生み出す方法は、それ以外にない。
雇用の消失が幅広い地域で起きるのに対し、雇用の創出がいくつかの地域に集中することだ。
教育レベルの高い住民が多いと、地域経済のあり方が根本から変わる。住民が就くことのできる仕事の種類が増え、労働者全体の生産性も向上する。その結果、高学歴の働き手だけでなく、学歴の低い人の給料も高くなる。
最上位グループの都市の高卒者の収入がしばしば、最下位グループの都市の大卒者の収入より高いことだろう。ボストンの高卒労働者の平均年収は6万2423ドル。これは、フリントの大卒者の平均の1.4倍だ。サンノゼの高卒者の平均年収は6万8009ドル。最下位グループの都市の大卒者に比べて1〜2万ドル多いケースも珍しくない。都市間の格差があまりにも大きく、学歴による格差を飲み込んでいるのである。ここから浮き彫りになるのは、アメリカにおける賃金格差が社会階層よりも地理的要因によって決まっているということだ。

→この本のタイトルにもなっているが、どこに住むかで、高卒が大卒を年収で上回る場合がある。
 

ある人の教育レベルは、みずからの給料だけでなく、その人が暮らしている町全体に影響を及ぼすのである。
都市の高技能労働者の割合と低技能労働者が相互補完的な関連があるのは、以下の三つの理由による。第一は、高技能労働者と低技能労働者が相互補完的な関係にあることだ。高技能の働き手の数が増えると、それ以下の労働者の生産性も高まる。優れた機械を使って働くと労働者の生産性が向上するのと同じように、教育レベルの高い同僚と一緒に働くと、高い技能を持たない人たちの生産性も向上するのだ。第二の理由は、教育レベルの高い働き手がいると、企業が新しい高度なテクノロジーを導入しやすくなることだ。そして第三の理由は、都市の人的資本のレベルが全般的に高まると、経済学者で言う「人的資本の外部性」が生まれることである。
人的資本の外部性は、現代の経済成長論の核をなす考え方だ。経済学者たちが構築してきた高度な数学モデルによれば、公式・非公式の人的交流が盛んになると、知識の伝播が促進される。そうした知識の伝播は、都市や国の経済成長を牽引する重要なエンジンと考えられている。____人と人が交流すると、その人たちはお互いから学び合う。その結果、教育レベルが高い仲間と交流する人ほど生産的で創造的になる。教育レベルの高い人に囲まれているだけで、経済的な恩恵を受けられるのだ。これが人的資本の外部性である。
教育レベルの低い人が自分と同じように教育レベルの低い人たちに囲まれて生活していると、周囲に教育レベルの高い人たちがいる場合に比べて、不健康な生活習慣に陥りやすいことがわかっている。この現象は「社会的乗数効果」と呼ばれている。

→レベルの低い人間ほど、だらしなくて不健康な生活を送ると相場が決まっている。喫煙・酒・ドラッグ。。しかもそれを周囲に"感染"させる。
何も良い事がない。
土地柄、関わる人間は選ぶべき。
 
 

政府が決めた五カ年計画に基づいて資源の分配をおこなっていた旧ソ連と違って、市場経済では、価格メカニズムを通じて資源の分配がなされる。魅力的な町の土地もその例外ではない。ある都市の気候がとても快適だとすれば、アメリカ人はその町に押し寄せ、不動産価格を吊り上げる。快適な気候に値札はついていないが、私たちは高性能の自動車や大きなテレビに金を払うのと同じように、暗黙のうちにそれに金を払っているのだ。同じ事は、高水準の公教育や、治安の良さ、レストランの質の高さなどにも言える。ある町の魅力的な要素は全て、実質的に貨幣価値に換算され、それが不動産価格を引き上げる。

→元々その土地に住宅を所有している人は、買った時の値段より価値が上昇して得をする。賃貸住宅の人は、家賃上昇に苦しむ→→その上がった水準によって貧乏な人が家賃を払えなくなって、町を出て行く(安い町に引っ越す)→→レベルの高い人達が町に残る→都市間格差発生
 

ある都市の労働市場が好転すれば、たいてい賃金水準が上がり、住宅コストも高くなる。住民にとっては、給料が増えても、住宅コストが高くなると給料上昇分の一部が相殺されてしまう。

→最近、自由に使えるお金の平均額、都道府県別ランキング最下位が東京都というニュース記事があった。上記の内容が理由だろう。
 

大気汚染の改善が思わぬ影響を生む場合があるのと同じように、労働市場の好転も負の影響をもたらす可能性がある。不動産価格が上昇すれば、貧しい人たちがその地区に住めなくなり、住民構成が大きく変わりかねないのだ。

地面が激しく揺れ、自分の股の下にひびが入る。土地が真っ二つに割れてしまう。さあ、どっちに身を置くか。勝ち組の土地に上手く残ることができるのか、負け組の土地に乗ってしまうか、それとも真下に落ちるか。。
 

かつて、良質な雇用と高い給料は、工業製品の大量生産と密接に結びついていた。工場こそが経済的価値の生まれる場だった。しかし今日は、誰でもつくれるような製品を生産しても大きな価値を生み出せない。良質な雇用と高い給料の供給源は、次第に、新しいアイデア、新しい知識、新しいテクノロジーを創造する活動にあたってきている。
賃金格差が拡大している背景には、もっと根深い構造的な要因がはたらいている。近年の膨大な量の研究によれば、賃金格差の拡大は、労働力の需要と供給の変化が原因だと考えるのが最も理にかなっているようだ。具体的に言うと、大学卒の働き手に対する需要が増える一方で、そうした働き手の供給ペースが減速しているために、大卒者の賃金が押し上げられているのだ。

ご愁傷様。
 

大学進学はきわめてハイリターンの投資

→行く大学によるのでは。
 

大学進学の年間利回りは、インフレ調整済みで15%以上。これは、株式投資(7%)や、債権、金、不動産への投資(いずれも3%未満)が実際に記録してきた利回りを大きく上回る。
大学進学の恩恵はまだある。経済面だけでなく、健康や結婚など人生のさまざまな面にも好影響が及ぶのだ。
飛び抜けた能力の持ち主は、アメリカで働いたほうが多くのものを得られる。

 

・日本についての記述

1980年代、日本のハイテク産業は世界の市場を制していたが、この20年ほどでかなり勢いを失ってしまった。とくに、ソフトウェアとインターネット関連ビジネスの分野の退潮が目立つ。運命が暗転した理由はいろいろあるが、大きな要因の一つは、アメリカに比べてソフトウェアエンジニアの人材の層が薄かったことだ。アメリカが世界の国々から最高レベルのソフトウェアエンジニアを引き寄せてきたのと異なり、日本では法的・文化的・言語的障壁により、外国からの人的資本の流入が妨げられてきた。その結果、日本はいくつかの成長著しいハイテク産業で世界のトップから滑り落ちてしまった。
本当に重要なのは、移民をどれだけ受け入れるかではなく、どのような移民を受け入れるかだ。
私たちの生きている世界は、さまざまな矛盾に満ちている。それは、正しく理解することが難しい半面、途方もなく魅力的な場所である。とくに興味深い矛盾の1つは、経済のグローバル化が進むと同時に、ローカル化も進んでいることだ。インターネットが飛躍的な進歩と拡大を遂げたことで、物理的な距離はもはや意味をもたなくなったと言われることが多い。しかしその一方で、どこに住み、どこで職に就くかが、かつてなく大きな意味を持つようにもなっている。

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