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大統領選後に米国のプライバシー政策はどのように変化していくのか?

アメリカ大統領選は最後の最後まで縺れている状況ですが、大統領選の結果によっては今後の方向性が大きく変化していきそうです。

今回は過去オバマ政権を始めとしてアメリカの政策の立案に深く関わってきて、現在も様々な取り組みを行うQuentinさんに米国の民主主義と政策にまつわる取り組みに関してお伺いしました。

第二回は大統領選後のプライバシー法制含めた動きをお伺いしたいと思います。

国際デジタルアカウンタビリティカウンシル 代表          Quentin Palfrey氏                           国際デジタルアカウンタビリティカウンシルでは各国のアプリのモニタリングや調査などを実施。オバマ政権時にはホワイトハウスの科学技術政策で雇用と競争力に関わるシニアアドバイザーとして、アメリカ合衆国商務省では副法律顧問としてそれぞれのポジションを務める。弁護士、政治、政策の専門家。

米国のプライバシー法の変化

Kohei: わかりました。私も少し政治に関連する取り組みに携わったことがありますが、最良の意思決定を行うことは非常に難しいことだと理解しています。

特に声を上げづらい層の人たちの立場を考慮した上で意思決定を進めていくことは、これから求められる要素の一つだと思います。お伺いしてきたお話は非常に素晴らしいアプローチだと思います。

ここからは次の話に移りたいと思うのですが、これまでのプライバシーに関する変化に関して聞いていきたいと思います。

米国では2000年の米国愛国者法が制定された際に、政府によるプライバシーへの介入が問題になったかと思います。Quentinさんが2013年にホワイトハウスで発表されていたブログの中で、プライバシーをより民主的に重要な項目として掲げるという内容を拝見して、非常に新しい取り組みだなと思っていました。あの時以来、米国では連邦政府に関するプライバシーに関する新しいルール作りや取り組みはどのように変化してきているのでしょうか?

Quentin: そうですね。インターネット社会は急速に進んできています。その中でオープン化というのが象徴的で成功した機能性だと思っています。これまではインターネットの分野に対して規制というものが明確に定義されておらず、一方ではそれによって急拡大したという背景もあります。

ただ、私たちを取り巻く環境もここ数十年で大きく変化し、経済や社会環境、教育や医療など生活に密着した変化も感じられるようになっています。

インターネットガバナンスに関わる規制や法という視点でいくと、全世界に広がった何十兆という巨大なマーケットに対して行うことになるので、簡単にガバナンスの設計を行うことが難しく、変化を続けていくしかないのではないかと思います。

現時点では継ぎ接ぎのように米国や世界中で規則が決められている状態で、どの地域に住んでいて、どんな時代を生きているのかによってルールの執行が異なるため大きな問題が発生しています。(下記のプライバシーレベルはあくまで一例)

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ビジネスの視点から考えると、どのルールに従ってビジネスをする必要があるのか、欧州、日本などそれぞれの国によってばらつきがあることが大きな負担になっています。

米国ではカリフォルニアではルールが決まっていて、その他の州ではそれぞれのルールを採用しています。そのため、オバマ政権時代には連邦プライバシー法の基礎となる考え方を指示していて、より公正な方法で検討を行っていました。

私たちが考えていた概念は「公正な情報をもとにしたプライバシーの考え方をもとに、消費者保護のプライバシー法のアプローチ」を考えていて、複数のステークホルダーを前提にしたプライバシー規律を市民活動団体や商業団体と連携し取り組むことを推進していました。

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いくつかの政府の中で公正なルール作りに向けた取り組みが行われていて、これまでに議論されていた内容よりもいち早く新しい考え方を推進し、企業などに対してより強固でアカウンタビリティ(データを取り扱う際の責任に対してデータ提供者に対して説明を行う)を必要とする提言をオバマ政権時には上院で進めていました。

ただ、最終的にはまとめることができず、その間に欧州では新しい法整備が始まっています。

(動画:Obama calls for online privacy bill of rights)

欧州のGDPRに続いてカルフォルニアやその他の州ではプライバシーに関する州法としての取り組みを進めていて、重要な訴訟などには法的な執行も行われています。

こう言った動きから米国でも超党派議員の間でこれまでに検討されていた連邦法に関する取り組みの必要性が再認識され始めていて、選挙戦で戦うバイデン、ハリス候補が勝利すれば米国国会で議論が進んでいくと思います。(選挙線の前のインタビューです)

国会ではプライバシー法に関する基本的な議論が行われ、合理的に連邦レベルでの話と州ごとの話を前提とした消費者保護の枠組みが出来上がっていくと思います。

国際的な協調も必要で、企業やパブリシャーサイドとの連携し現在直面している課題や法的に必要な対応なども含めて取り組んでいく必要があります。インターネット関連のサービスは世界中からアクセスが可能なため、各国の異なる法体系のシステムに合わせて検討していく必要が出てきています。

ユーザーに対して信頼できるサービスとして理解し、利用してもらうことが必要になるためそれぞれのサービスがユーザーにとって公正に提供されるような仕組みを考えていくことも必要になりますね。

インターネットは既に生活の中で重要な要素の一つになっていて、私たちの医療データや現在パンデミック時に利用されているコロナ対策アプリから収集されるデータなど、今後よりセンシティブなデータへの対策も重要になっていくと思います。それ以外にも子供の教育データなど個別に最適化されてフィードバックされるデジタルサービスも対象になると思います。

こう言ったデジタルサービスはコロナの時期に利用が進み始めています。私たちの生活はよりオンラインで活動することが多くなり、子供たちもインターネットを通じてサービスにアクセスする機会が増えていると思います。

そのため、子供たちがサービス利用時に取得されるデータがどのように扱われているのかに目を向けていく必要も出てくることになります。

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教育の形も徐々に変化していくことになり、それに伴って子供のためにもデータが安全に利用される環境づくりが必要になってくると思います。

最近の動きを紹介すると妊娠に関連したアプリに注目していて、妊娠の可能性がある際に利用者の状況をデータとしてマーケティング目的のために共有するなど、知らないところで私たちの生活データが商売として利用される可能性があるようなケースも出てきています。

そう言った場合は個人のデータは積極的に保護される必要があり、私たちも対応を検討して進めています。.

Kohei: なるほど。頂いた内容から信頼はやはり重要なポイントで、民主的な意思決定の中で明確に信頼が設計できる環境をもとにしてサービスにアクセスできることが重要になるのですね。

政府の信頼を考えると、特に一貫性の問題は非常に意思決定においても非常に重要だと思います。例えば、政府視点で考えるとどう言った対応が信頼を設計していくためには重要になるのでしょうか?

政府が国民からの信頼を第一に考えるべき理由

Quentin: そうですね。私の考えではオンライン上で信頼を設計していく際には3つのアプローチがあると思っています。まず、公正なルールを設計することです。誰もがわかりやすく、幅広くアクセスできる環境の下で、異なる分野でもわかりやすく伝わることがポイントになると思います。

次に人々が理解できるように教育の機会に取り組むということですね。これは開発者向けの教育もそうです。いくら公正なルールを設計しても人々が理解できなければうまく機能しません。

そのためには説明と理解(政府のアカウンタビリティ)が必要で、人々がルールを上手く運用できない場合はさらに説明が必要になります。

そして、アカウンタビリティを担保するための活動が重要になります。これまでいくつかの取り組みは政府によって実施されてきました。法的な役割を担う組織がルールを逸脱した行為に対して厳しく当たるのはまさにそう言った仕組みから成り立っています。

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罰金や法的な禁止令、裁判などは代表的なものですが法的な判断と合わせて消費者を守るために逸脱した行為を未然に減らしていくことも重要です。そのためには法的な手段以外に非営利組織の活動も非常に重要です。

裁判に持ち込む事で判断を待つのではなく、裁判に持ち込む必要が無いように事前に通知して対策を行ってもらう事が大切だと考えています。

国際アカウンタビリティカウンシルの取り組みとして、サービスが世の中に出回る際に事前に消費者にとって不利益になる可能性があるポイントを抑えて、改善されるように開発者に対して改善を求めるような通知を実施しています。

その際にGoogleやFacebook、Apple、Microsoftを始めとした企業とも連携して取り組みを行っています。メディアなどにはを未然に防ぐために公知を依頼したりするなど、アカウンタビリティを担保できるような取り組みを実施しています。

Kohei: それは素晴らしいですね。国際アカウンタビリティカウンシル(IDAC) を始められてから、アカウンタビリティを第三者的に説明する必要性がより重要になっていくのだと感じました。

これは既に一つの国での問題ではなく、欧州ではデータ保護に関する法律もスタートしていますし、カリフォルニアでも複数の議論が始まっていると思います。これからどう言った連携が各国で必要になってくるのでしょうか?

既に各国や地域でワッチドッグ(非営利営利に関わらず第三者的にモニタリングを行う組織)と呼ばれる取り組みは始まっていて、私たちも日本でPrivacy by Design Labという組織を立ち上げ、教育と文化醸成を行っていますが。今後は国を越えてどのような連携が考えられるでしょうか?

国を越えたデータプライバシーの議論

Quentin: 新しい取り組みのスタートおめでとうございます。まず積極的にプライバシー、プライバシーデザインやデータの最小化などの考え方を教育を通じて理解してもらい、データ環境を整えていくことがまずは重要だと思います。事前に防ぐ仕組みを設計することは、起きた後に対処するよりも重要ですね。

メディアで取り上げられるような情報漏洩や侵害などのケースは既に消費者に被害が出ていて信頼を失うことになっているため、私たちは事前にそう言った問題に取り組んでいく必要があります。特に国際化が進んでいく中では幅広く国を越えた視点で対策を考えていく必要があると思います。

(調査方法の紹介動画:Static vs. Dynamic Testing in IDAC Investigations)

そして、一つのサービスではなく複数のプラットフォームで実装する試みも検討が必要になってくると思います。FacebookやGoogle、TwitterやAppleなどが引き合いに出されますが、エコシステム全体でアカウンタビリティを考える上ではプラットフォームを越えて対策を考える必要もあります。

データを取得して、そのデータを広告に変えるモデルや分析、ブローカーモデルなど様々な経済圏が出来上がってきているので、データを取り巻く全体の動きに関心を持って取り組む必要があります。

エコシステム全体を理解して整理していく必要があります。インターネット上でのビジネスを通じて収益を得る上では、消費者保護を前提としてルールを作っていく必要があります。

これは経済全体が成長していく上でも必要で、ユーザーや消費者の権利を考えることは何も不思議なことではなく、経済や文化を育てていく上で本質的な話だと思います。その上で信頼を設計していくことが公共政策にも求められる重要な視点だと思います。

例えば、国際デジタルアカウンタビリティカウンシルで始めに立ち上げた取り組みは、コロナ対策のアプリと遠隔医療、検疫実施症状トラッカーで政府やパートナーと連携してパンデミックの時期に実施されたものに対して取り組みを行いました。

勿論、サービス世に出てが成功することを私たちとしても願っていて、デジタルの力で幅広く医療サービスが展開されることは素晴らしいからこそ、信頼を作り上げることができるような仕組みとして手助けできればと思っています。

リスクや被害を事前に検知できていれば、サービスを通じて設計できるエコシステムがより信頼できるものになりますし、信頼してサービスを利用してもらうことができるようになります。

他に例を上げると、距離が離れていても学べる環境は一つの新しい変化ではないかと思います。子供たちはテクノロジーを上手く活用することでより新しいことができるようになると思います。個人に合わせた学びの仕組みなどはその一つですね。

その際に先生と親御さんの間で学校が採用したシステムが安全なのか信頼が置けなければ、導入後の利用も難しくなるでしょう。私たちの子供の世代にはより信頼できるような仕組みを残していくことが重要で、ツールを活用するのではなくより信頼できる仕組みを残していくことが大切だと思います。

信頼を設計していく上では発生しうる被害を想定した上で、どのような対策を実施しているのかを明確にしていくことが必要になると思います。

そのためには想定されるケースをいくつも考えておく必要があり、全てやめてしまうのではなく一度立ち止まって考えるということが必要になると思います。

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こう言った取り組みを通じて信頼を積み重ねていきながら、より良いルールやトレーニングなどを開発していく必要もありすね。

データ社会は国際協調の時代へ

Kohei: なるほど。信頼は新しい価値を作っていく上でも重要なポイントで、国や地域を超えて国際間で協調していくことが一つの解決策になっていきそうですね、

インターネットが1990年代に広がってから、改めてインタネットの世界にも民主的な仕組みが必要になると思うので、こう言った取り組みを協力して進めていくことは大切になるだろうと思います。

非常に面白いお話で盛り上がっているのですが、時間が来てしまったので視聴者の皆様にメッセージを頂いてもよろしいでしょうか?

Quentin: はい。今日はありがとうございました。是非インタビューを拝見されている方々とも協力しなら新しい取り組みに挑戦していけると嬉しいです。国を越えて新しいデジタルの世界を設計していくことは重要だと思うので、コミュニティで連携していけると良いと思います。

是非新しい社会に向けて一緒に取り組んでいければ嬉しいです。国際アカウンタビリティカウンシルに関してはこちらのウェブサイトで紹介しているので、引き続き連携していきましょう。

Kohei: ありがとうございます。本日はインタビューの機会を頂きありがとうございます。新しい社会を作っていくために、是非色々とご一緒できればと思います。引き続きアップデートしていきましょう。ありがとうございます。Quentinさん。

Quentin: ありがとうございます。お話しできてよかったです

Kohei: ありがとうございます。

※一部法的な解釈を紹介していますが、個人の意見として書いているため法的なアドバイス、助言ではありません。

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