MCA Meet Up #16「時代を切り拓いてきたマーケターの本質とは」〜忖度か、信念か、正しいと思うことに突き進む勇気と信念とは?〜開催レポート
第一線で活躍するマーケターをゲストに招き、パネルディスカッションとネットワーキングを通して「社内ではなかなか解消できない悩み」を解決するきっかけを提供する、MCA Meet Up。
2023年2月21日に開催された第16回目のテーマは、「時代を切り拓いてきたマーケターの本質とは」。
信念を持つこと、正しい判断と行動を見極めることは、年齢や経験を問わずマーケターにとって大事な要素です。しかしながら、社内の調整におけるプロセスで自分自身を見失い、当初の目的とは異なる方向に行くこともあります。そんなモヤモヤした問いに対して、時代を切り拓いてきたお二人から、“マーケターの本質とは“をテーマに時間が許す限りお話しいただきました。
MCA Meet Up #16 マーケターDNAトーク:
「時代を切り拓いてきたマーケターの本質とは」〜忖度か、信念か、正しいと思うことに突き進む勇気と信念とは?〜
2023年2月21日(火)08:00~09:15
*お仕事前の朝の時間に、Zoomを用いたオンライン配信で開催されました
<パネリスト>
株式会社ロフト
執行役員 池袋ロフト 館長
内海 芳雄さん
株式会社プリファード・ネットワークス 執行役員CMO
富永 朋信 さん
<モデレーター>
MCA理事
株式会社ニューバランス ジャパン マーケティングディレクター
鈴木 健 さん
<MC>
一般社団法人渋谷未来デザイン 理事/事務局長
一般社団法人マーケターキャリア協会 理事
長田 新子 さん
おふたりのキャリアを振り返る
まずは、お二人のキャリアについて振り返ります。
内海さんは西武百貨店に入社後、営業企画・販売促進分野を担当して、プランナーから部門マネジメントを経て、株式会社そごう西部の販売促進部長などを歴任。株式会社ロフトに転籍後、営業開発部長として新規事業開発を担当、ロフトアプリの開発やオムニ7(セブン&アイ)と連携したECサイトの立ち上げを主導されました。その後取締役執行役員としてロフトのDX を牽引。現在は執行役員として池袋ロフトにおいて店舗を起点としてDX推進を担われています。
富永さんは大学卒業後コダック社に入社、その後日本コカ・コーラ、西友など9社でマーケティング関連職務を経験されました。そのうちソラーレホテルズアンドリゾーツ、西友、ドミノ・ピザ・ジャパンなど4社でCMO(最高マーケティング責任者)を務めています。自身の会社プリファード・ネットワークスも立ち上げました。また、官公庁のアドバイザーや著書『「幸せ」を掴む戦略』(日経BP)を出版されるなど様々な分野でご活躍されています。
部門や会社を変えながら、その会社や業界に新しい風を吹かせ、まさに時代を切り拓いてこられたお二方のように思います。
新しいチャレンジを推進する難しさ
ロフトでDX推進というまさに新たな試みを成し遂げた内海さん。DXを進めるうえで、最も難しかったことは何だったのでしょうか。
「社内の成功体験をどう打ち壊していくかが最も課題でした。」と内海さん。
「面白い商品をそろえれば、お客さまが来店してくれる、という成功体験が根強く残る社内文化のなかに新しいものをいれていくことが最も大変だった」と語ります。
では、実際どのように乗り越えられたのでしょうか。
「当初3人でオムニチャネル推進室というプロジェクトをスタートし、公募という手段をとって、やる気のある将来性のある若手を集め、頭の柔らかい人たちからチーム作りを始めました。」
勉強会も社内で行う機会を設けて、全社員に向けて若い連中のメソッドを社内に展開していかれたとのこと。
変わり者とみられることも多かったそうですが、「新しいこと、会社が良くなること、5,000人の社員にとって必要なことという確信があったものですから、やりきろうと思った。」
そんな内海さんの想いが少しずつ会社に浸透していき、どんどん仲間が増えていったそうです。
また、内海さんは「富永さんのような会社の外部の人との出会いも大切な要因だった」と語ります。
内海さんと富永さんは、外部のカンファレンスで名刺交換をし、今ではお酒を飲みながら仕事のこともプライベートのことも相談する仲。
富永さんは内海さんと出会った当時の印象についてこう語ります。
「コミュニケーションや立ち振る舞いから、エレガントさと侍っぽさが同居されているような、剃刀と香水が同居されているような方だな、という強い印象をもちました。仰ること全て芯を食っていて、いい加減なことを言わない。嘘をつかない、全然忖度しない感じがあって、個人として好きになって今に至ります。」
画面越しでもおふたりがお互いをリスペクトしあう素敵な関係であることが伝わってきます。
忖度か?信念か?時代を切り拓いてきたマーケターの本質とは
今回のテーマは『時代を切り拓いてきたマーケターの本質とは」〜忖度か、信念か、正しいと思うことに突き進む勇気と信念とは?〜』。
会社という組織の中で、何を貫いて、どこを説得したり調整するか。
会社員であれば誰でも考えたことがありそうなこのお題。お二人はどのようにお考えなのでしょうか。
富永「人はだれでもなじみのあるやり方が好きだし、馴染みがないことについては失敗したらどうしようと不安に感じます。周囲に馴染みがないことを推し進めていくのは大変ですが、それでもやるべき、そうでないと変えられないこと・できないことがあると思います。」
「最初は経営会議などで話しても「お前何言ってるんだ?」と冷たい反応をされる。そういう意味で貫き通すメンタリティは大切ですね。」
内海「とても共感します。私も富永さんと同じタイプで、基本的に論理的に整合性があるということが一つのベースです。それから最後は、私がどうしてもこれを実現したい、会社をよくするにはこれが絶対必要だという熱意、パッション。論理性とパッション、これを両立しないと実現しないということを意識していました。そういうことを富永さんに教えていただいた。」
おふたりのエピソードから、やったことがないし馴染みがない、でもこれが必要だ、という信念の強さが、時代を切り拓いていくために必要不可欠ということが伺えました。
逆に、忖度したほうがいい場面、気を使ったほうが上手くいくということはあるのでしょうか?
内海「忖度ということは私の辞書には無いのですが(笑)、話し方には気を付けています。頭ごなしに否定せずに、『確かにあなたの仰る通りです。ですが…』というように、まずは相手の話を聞き、論理性と熱意でこういう風にトライしたいですということを伝える。忖度して、出世を目的としていると良いものは生まれないし、企業も衰退していくので。オープンに議論ができて、違う議論も認め合ってそれが新しい価値になっていくということが大事なプロセスだと思います。」
若手のキャリアに対して
内海「経験がないことの方が新しい発想に繋がることがあります。私は若手のそういう自らの発想を引っ張り上げて、失敗することもあるかもしれませんが、やらせる・チャレンジすることを評価するということは意識してきたつもりです。そういう文化でないと今の世の中では勝ち残れないと思います。」
現在4つの会社でCMOとして活躍されている富永さん。どうしたら富永さんのように幅広く活躍できるマーケターになれるのでしょうか?
富永「マーケティングをフレームワークの塊だと思っちゃいけないと思うんですよね。たくさんの方法論がマーケティングにはありますよね。でも、なぜそのフレームワークが活きるのかという背後にあるメカニズムを理解することが必要。そのためには人間の認知の仕方や意思決定の仕方など、人間そのものを理解することが大事だと思うんですよね。世の中やマーケを見て、何かを見るときに何にフォーカスをして、どんな意味があるかを複数の観点で解釈できるようにする。そういうことができると自在にマーケットとか競合が見られるようになるし、人間理解ができるようになる。」
「二点目は興味が湧いたことには飛びつくこと、ですかね。今までやってきたことに対する愛着とか、変わってもし失敗したらどうしようという気持ちってあるじゃないですか。だけど大体その人の前に出てくる選択肢ってその人の実績とか実力の合わせ鏡と思っていて。それならば限られた人生の中なので、大きなダイナミクスを選んだほうが良いと思っています。」
今回のトークで共通していたのは、やったことがない・経験がないという不安を恐れず、これが必要だという自分の信念を貫く姿勢・勇気だと思われます。世の中や社内の通説・常識に捉われることなく、市場やお客様を柔軟にとらえ、強い信念のもと仲間を増やし実現する。そんなお二方だからこそ、新しい時代を切り拓いてこられたのだと感じられました。
トークセッションを終えて、懇親会へ。ここではオンラインミーティングのカメラを各自がONにしフランクなムードで、参加者からの質問にお答えいただいたり、より深く語り合う時間となりました。