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2色の混色のみで展開される世界 日本の絵画とSNSの在り方 : 画家 岡村芳樹さんインタビュー

岡村芳樹
画家。1996年 東京生まれ。2019年 武蔵野美術大学油画科油画コース卒業。
twitter : @sashimimoyashi
Instagram : sashimimoyashi

今回お話を伺ったのは、現在個展を開催中の岡村芳樹さんに個展に対する思いや描くことSNS活用の意義など、在廊中にお時間をいただきインタビューさせていただきました。

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──個展の開催おめでとうございます。今回の個展につきまして、どういった意図で開かれたありますでしょうか?

基本的にはいつも日常的に制作している作品の集大成のような形で。
多様性というか、自分の持っている幅の、学生時代に使っていた幅以外の幅を今回は持ってこようかなと、学生が終わって以降の、という意図で作品を持ってきました。

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──展示の中の「サマーサイダー」は周りの作品とは異なった作風ですが?

あれは学生時代の、大学3年生ぐらいのときに描いていた作風ですね。
あれがもとで、自分が持っている性質、才能の性質が1色、2色に対して非常に、何だろう、それだけでコントロールすることができるような質だというふうに認知しだした辺りです。
例えばこの壁面から向こうの壁面は全部、2種類だけの顔料を混ぜて描いています。
この緑色と真ん中の赤色と、これだけを混色して、その混色の幅だけでどこまれやれるかっていうのが。

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──2色の混色でこんなに幅が広がるものなんですね。

そうなんです。油絵の具って、やっぱり何でもできてしまうので、自分の美意識を試されてるというか、自分が何をチョイスするのかというのを非常に問い掛けてくる絵の具だと思うんです。

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──岡村さんと言えば積極的にSNSを活用されているイメージですが

Twitterで心掛けているのは、若者にとってマイナージャンルになってしまった絵画というジャンル、名画ぐらいしか分からない、知らないっていう人がここまで増えてしまった原因は、先達が、何ていうんだろうな、残した社会構造にあるっていうふうに僕は思っています。

大学っていう形の教育機関っていう形をとって、それの先生をやって、そこで食べていくようなライフスタイルというか、それを構築してしまって、本来、お客さまからお金を取って生活していかなきゃいけないのに、育てるべき後進からお金を取って自分が生活するというふうな業界構造になっています、この業界は。
僕はそれが非常に危殆(きたい)で、何ていうんだろうな、いろんなお客さまに届けたいっていう気持ちが強くて。

SNSのあり方は、今、SNSの一線で活躍している人のやり方をもって日本に絵画を展開しようと、伝えようと、自分が絵画の入り口になってくれたらいいなと。
抽象画といったらよく分からないものの代名詞みたいにされてしまいますが、まずキャッチーに、これ、いいなと思ってもらえる絵面で、でも、中身は本格的な絵画で。

そんな影響を受けたのは1950年代のニューヨーク・スクールっていわれる絵画運動・芸術運動のタッチなんですけども、アメリカが大規模な金融緩和で非常に大きな額のお金が落とされて、それで非常に大きな絵が展開されてっていうようなものなんですね。

そこの芸術に、Jack Tworkov(ジャック・ツワークフ)とか、Jackson Pollock(ジャクソン・ポロック)とか、Philip Guston(フィリップ・ガストン)とか、Robert Motherwell(ロバート・マザーウェル)とかの画家たちに非常に影響を受けて、抽象絵画をやろうというふうに決めて。

日本は比較経済学的な視点から見たら、非常に緊縮な時代、緊縮な政府、個人に全くお金を落とさない、才能があるのはごく一部の個人だけなのに、というような文化政策をとってる政府に対して、非常に憎しみやいらだちは持ちつつも、あれですね、その場で生きていかなきゃいけないので、やっぱりその時期に最も人に見てもらうにはどうしたらいいんだろうかということを考えながら、制作・発表・展開することが多いです。
ECサービスの利用などもその一環でやっています。

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──ECの活用との点でも積極的に活動されてて岡村さん=手軽に持てる芸術やアートっていう感じで、すごく身近なイメージを持ってました

なるべく卑近であるように、例えば日本だと抽象絵画芸術、サイ・トゥオンブリーを、川村記念美術館はまるで神棚に飾るかのように、世界の亀山モデルのCMみたいな部屋で展示してるんですけども。

アメリカのMoMA(モマ)に行ったとき、The Museum of Modern Artに行ったときにびっくりしたのが、たぶん1フロアは1兆円以上の価値があるものと人類の大遺産みたいな部屋で、子どもが走っていて、黒人がガムをかみながら警備している。 
僕はそれを見たときに、非常に敗北感を覚えました。
何ていうのかな、文化的資本の差がここまで違うのかと。
ここまで卑近なのかと。 

この1年、2年で米中韓っていう国を回ってきて感じたのが、日本人が一番、素直に絵を見ているんじゃないかなっていう。

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──だから、今は日本でっていう感じなんですかね?

そうですね。

本当はアメリカや中国に行こうと思ってたんですけど、やっぱりアートマーケットが動くのはお金がある地域で、アートの文化がある地域なので。

日本にいる理由っていうのは、卑近な絵が見られる土壌がすでに日本には存在している。
Twitterとかで、Instagramとかで、たくさんの画像が鑑賞されている時代になりました。
それに自分は乗っていくことができる。
その第一人者になれればなっていうふうに僕は思って活動しています。

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──Twitterとかだとどうしても作品が平面になってしまうのですが、個展の中で展示されている「テンペスト」みたいに立体感があって見るとああと思うところがありますね。

あれも操作しています。
SNSのときは白色ライトの空間考慮をとっています。
なので、凹凸の面などが消えるようにっていうふうに写真を撮ってます。
 でも、今の会場だと、スポットに当てているものが多いんですけど、スポットに当てると艶が、体が揺れるだけで艶も一緒に揺れるような美しさがあります。
でも、それを写真に撮ると、非常に一時的になって、汚くなるというふうに僕は考えています。

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──なるほど。やっぱり個展に来ないと分からないところですよね

そうですね。なので、絵の情報量をぜひ感じ取ってほしいなというのがすごく強くありますね。
そのためにTwitterをやっている、そのためにInstagramをやっているので。

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──1枚辺りの絵って、どのぐらいの時間をかけられるものなんですか?

2時間程度です。
ただ、乾燥する時間を考えたら、4~5カ月平気でかかるものもあるので、やっぱり難しいなと。
すぐ描けても、完成するのは数カ月後っていうものが多いですね。
顔料によってはまた、ちょっと差があるんですけど。

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──例えば描くときなんですけども、そういった今の現状とか、自分の思いとかを先に感じた上でキャンバスに落とされているのか、描きながらそういったことを考えながら描かれてるんですか?

それはまちまちです。
映画を見ていてこのシーンは非常に美しいなと。

ライアン・ゴズリングが『ドライヴ』の中で後戻りできなくなるエレベーターのシーンが美しいなと思ったときにその感情を描いたりだとか、『ナイトクローラー』で痛快にサイコパスなものを演じるジェイク・ギレンホールを見た後に、何だろう、その痛快な気持ちを自分に映して描こうと思ったりだとか、小説を読む中で美しいフレーズだなと思ったら、円城塔の『エピローグ』っていう小説の帯で「私たちはあらゆるものを失うことができる」っていう言葉の甘美さに打たれて描いたりだとか。
伊藤計劃や村上龍も非常に尊敬している作家さんなんですけど、日本国内だと。
あのような、何ていうのかな、伊藤計劃は死者からも言葉として展開している。
村上龍は世の中のあらゆるものに矛盾を抱くこと、それに対して非常にピュアであること。
 僕もそうありたいなと思う気持ちから、例えばメイルシュトロム、伊藤計劃の『虐殺器官』『ハーモニー』から名前を取ったものでした。
そういうような経緯があります。

今回インタビューさせていただくにあたり個展にお邪魔させていただきましたが、作品の立体的かつ光の加減で生まれる表情も素敵でしたが、それ以上に訪れた方一人一人に声をかけられて、作品の思いを語られてる姿、今回インタビューさせていただいた内容がすごくSNS以上に岡村さんと言う人柄を感じることができました。

個展は8/30(日)まで開催しております。行こうか迷ってる方いらっしゃいましたら、そこでしか体験できない空間が確かに存在しますので、ぜひ足を運んで体験いただけると。


岡村芳樹 個展 don’t leave me

会期 : 8/23(日) 〜 30(日)
   11:00 〜 19:00 (最終日は17:00まで)
会場 : Medel Gallery Shu | 愛でるギャラリー 祝
   〒100-0011 東京都千代田区1 内幸町1−1−1
    帝国ホテルプラザ東京2F
    https://medelgalleryshu.com/

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