フリーノート-51

ブランディング「沼」は深い

今回のテーマは「ブランド」です。
本を読む前から感じてたことでしたが、このジャンルは「沼」です。かなり深い

オタク用語で「沼」というと、ある特定の作品へハマったり、物の収集がやめられないことを指しますが、ブランディングの話も、ハマったら抜けれない「沼」でした。

「考えだしたら止まらない!」「答えがない!」「なにこれ楽しい!?」みたいな感情が渦巻く世界です。


●マーケティングに携わってて思うこと

仕事柄、色んな企業のマーケティング担当や経営陣の方々とお話する機会がありますが、今の世の中はほんと大変です。

情報が多すぎる今、結局いくら広告を打って認知をとったとしても、それを興味に移らせる(行動変容)って本当に困難で、即時的に効果のある施策ってどんどん減ってきていると感じます。

↑情報爆発時代について触れてます

特に「認知」から「興味」へ移るときの壁。
キャンペーンや認知施策の効果が落ちたのではなく、認知してからの選択肢が多すぎて、それが興味喚起、行動変容に移行しなくなってる、のが今(多分)。

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今は、たいていのモノは容易に入手可能です。家に居ながらアマゾン、ウーバーイーツ、サブスクで映画やアニメ。

購買するためのアクションはより簡略化され、便利になってます。
しかし、購買に至るには実はいろんな選択のステージを突破してたりします。

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結局僕らは、この「想起集合」に入ってるから購買してるのですが、
ここで第一想起されることを「メンタル・アベイラビリティ」といい、
想起した時に、店頭などで入手可能な状態にあることを「フィジカル・アベイラビリティ」といいます。

このアベイラビリティが充足され、「欲求が生まれたとき第一に想起され、すぐ購入可能な状態にある」ことが、ブランディングにおいて目指すゴール」だと思います。


●ブランドというのは何なのか

ブランドの語源は「焼印」で、「識別するためのしるし」と言われてます。

そういばテリーマンの必殺技に「カーフ・ブランディング(仔牛の焼印押し)」って技があります(劇場版のキン肉マンではテリーの必殺技だった)

僕は芸大のグラフィックデザイン学科出身で、課題や授業でCIやVIを学ぶ機会が多々あり、「ブランド・アイデンティティ」も習ったりしてましたが、当時は対象となる企業や事象を、色や図形などの「非言語情報」として構成することが「ブランディング」ってぐらいの認識でした。

今回の課題図書であるブランド論の冒頭に「ブランドの定義」があるのですが、

・論者によって定義が大きく異る
・ブランドという言葉を定義することは「群盲像を評す」
・それが何を指すか不明確で困難や混乱が起こる

とか書いてあって、「やっぱ沼やんけ!」って思うわけです。

それを踏まえたこの本での定義は

「交換の対象として商品・企業・組織に関して顧客がもちうる認知システムとその知識」

とありました。

そして

ブランドは、カテゴリー化、メタファー、イメージ・スキーマなどの認知システムの働きに従っているのである

ともあります。

なのでブランディングの要点は、「認知システムにいかに影響を与えるか」ってことなんじゃないかと思います。


●ブランドの価値って?

ブランドの影響力が強くなると、

購入時点で判断できない属性について、消費者はブランドを用いて判断する

という、購買時に選ばれやすい状態になります。

要はブランディングの価値って、
「なんか知らんけどこっちのほうが良い」って思わせることですよね。

「この何か知らんけど」を紐解いたのがブランド論なわけですが、

これを「ブランド・エクイティ」としてわかりやすくアーカー先生が提唱したのが

①ブランドロイヤルティ
②ブランド認知
③知覚品質
④ブランド連想

の4カテゴリーになります。

「購買頻度の高い顧客がある、第一想起される、品質が高いと認識されている、ポジティブな連想がある」

という価値が生まれるということです。


●ブランド戦略の要はマーケットシェアを拡大すること?

「欲求が生まれたとき第一に想起され、すぐ購入可能な状態にある」ことを目指すためには、ブランドをどう構築し、競争優位性を作り出すか、という戦略が必要ということですね。

しかし、こういったブランドエクイティに対して科学的なアプローチで対抗論を出しているのが、

この「ブランディングの科学」

マーケットシェアとロイヤリティには正の相関がある(ダブルジョパティの法則)を提唱し、要は売れるかどうかに「ブランド・エクイティ」はあまり関係なく、「マーケットシェアの大きさ」で決まるということ。

▼顧客基盤の小さいブランドは結果的に売上も小さく、購買頻度も低くなるので、ブランドの成長のためには、顧客基盤を拡大することが何よりも重要である
▼ブランドの成長のためには、顧客基盤を拡大することが何よりも重要である
▼そのためにロイヤルユーザーではなく、ライトユーザーへの施策を注力し、マーケットシェアを拡大しよう!

っておっしゃってます。

マーケットシェアが大きければ、結局購買頻度も高く、認知もされ、想起されるってことですね。


●好きかどうかは、本当に購買行動に影響をもたらさないのか?

確かに顧客の購買は有限で、結局同じパイを取り合うことになるので、そのパイが大きい方が勝つ、なのでライトユーザーをターゲットにした戦略を行ってマーケットシェアを拡大することは重要、という話は納得できるところがあります。
第一想起されても、売ってなかったら買えないですもんね…

しかしマーケットシェアを高めるだけで本当にブランドとして優位に立てるんでしょうか…?

これは弊社トライバルメディアハウスのやっている「熱狂ブランドマーケティング」と関係があるように思いました。

日用雑貨などのコモディティ化した商品、どれを買っても機能的に差がほとんど無い商品は、上記のようにマーケットシェアによって購買が決定されているように思います。


シェアだけでブランドが成立するのであれば、「ニッチだけど愛されているブランド」については説明できないような気がします。

例えば、PC市場においてWindowsとMacの関係。ここに面白い記事がありました。

「Windows 95」の発売で一気にシェアを伸ばし、2004年にWinがMacの56倍のシェアとなりました。
しかし2011年のデータでは、Macの台数にiPadの台数を加えることで、Winとのシェアの差を6倍にまで縮まってます。
iPhoneの台数を加えると2倍まで縮まっているそうです。

Macは古くからファンが多く、Steve Jobsの思想に基づいたプロダクトはブランド・エクイティの象徴とも言えるような気がします。

本当にマーケットシェアだけでブランドが成立するのであれば、Windowsのモバイル端末はもっと売れてて良いはずなんですよね。


上記はわかりやすい事例ですが、他にもスマホの登場によってコンデジ市場がシュリンクするなど、ライフスタイルや環境変化によってマーケットシェアが変動することもありえます。

また、シェアが高くても利益を上げれているかは別の話だと思いますし、
Appleはそのブランド力で「安売りしなくても売れる」という優位性を構築しているため、WinPCのメーカーよりも高い利益を上げているといいます。

そういう意味でも「熱狂的なファンのいるブランドを作ること」は、高い利益を生み出す顧客基盤を作るためにとても重要なことだと思います。


●ブランディングは時代とともに変化する

少子高齢化、人口の現象によって、そもそも市場規模が縮小していく状況において、大量生産によるマーケットシェアの獲得より、いかにロイヤルティの高い顧客によって高い利益を上げていくのか、がブランド戦略においての命題になると思います。

ブランドが時代とともに変化するのであれば、未曾有の情報爆発時代におけるブランディングもまた、変化を求められているともいえます。

「欲求が生まれたとき第一に想起され、すぐ購入可能な状態にある」はもちろんのことですが、そこに「愛」があり、消費者が「文脈価値」を感じることで、高い金額でも買ってくれるための「ブランド構築」。

そして次世代のブランド戦略とは、企業の経営戦略やコミュニケーション、マーケティング活動の総体、その結果、消費者(ファン)との共創によって「生まれる」ものなんじゃないでしょうか。

だから一朝一夕でできるものでもないし、何年もかけて積み上げていく必要があるので、安易に考えちゃいけないと思います。

↑もう一冊の課題図書。2002年初版ですが、先鋭的な視点でブランディングについて書かれています。


このテーマは本当に「沼」なので、推しとして愛でていきたいと思います。(・ω・)

今は73万人を動員するコミックマーケットだって、最初は数百人からスタートして、40年以上かけて今に至るんですもんね。

あ、ちなみに冬コミ(C97)にサークル参加します。
12月29日(日)南ナ09bです。

お時間ある方はお越しくださいw

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