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石油についての話

本日は、地球上の利用可能な化石燃料資源の内、戦略資源と考えられている石油についての考察です。私が普段扱っているテーマとはちょっと毛色が違い、些か唐突感はありますが、メモに残します。


石油を巡る不思議

『石油資源は後30年程度で枯渇する……』という話は、私の小中学生の頃からありました。人類文明繁栄の基盤を支える石油がなくなると大変なことになる…… 私は当時この話を聞いて、将来に大いに不安を抱きました。

あれから40年以上の月日が経ちますが、今も石油は世界中で採掘され、相変わらずエネルギー資源の主役の座を守り続けています。そして、依然として「石油の寿命はあと40~50年」と言われています。石油資源の使用削減を呼びかける動きは盛んですが、主に気候変動や環境破壊の抑制という観点から叫ばれているように感じています。

石油埋蔵量の可変性

そのからくりは、以下で説明されます。

地下に存在するすべての石油量を資源量(Resources)、うち既発見で、かつ経済的・技術的に回収(採取)可能な量を埋蔵量(Reserves)という。
現在の技術と価格の下で採掘可能であると考えられる埋蔵量(R)をその年の生産量(P)で割ったものを可採年数(R/P)という。

1970年代には可採年数は約30年と試算されていた時期もあったが、技術革新による新規油田の発見や採掘技術の進歩、原油価格の上昇等による採算性の向上などから、最近の可採年数はOil & Gas Journal誌で49年、BP統計で50年と試算されています。
※OGJ誌は2018年から天然ガス液(NGL)を広義の原油として生産量に含めている。

石油連盟『今日の石油産業2019』の解説より抜粋

私が昔聞かされていた「30年」というのは、当時の石油可採年数の話であり、石油資源が地球上から完全に枯渇するのはまだ先というわけです。

分母の供給面(埋蔵量)は、新油田の発見、採掘技術の発展、石油価格の上昇(その結果採算的に採掘しても商業ベースに乗る油田が増える)によって増減するものということです。

分子の需要面(生産量)は、新興国中心に需要増加があるので絶対値は着実に増え続けているものの、消費ペースを緩和する省エネ技術の開発や代替エネルギーへの転換等も進んでいると考えられます。

また、近年は石油生産に占めるOPEC(石油輸出国機構)非加盟国の比率が増えているのも特徴です。かつては、毎年開催されるOPEC総会の内容が新聞の一面で報道されていましたが、今はそれほど世間の耳目を集めるニュースではなくなっている気がします。

石油を巡る思い出

石油は戦略物資であり、国際政治情勢と密接に結び付いてきました。私には、石油問題に興味を抱いていた時期があります。落合陽一氏の父親である落合信彦氏(オイルディーラー等石油業界で仕事をした経験あり)の著作から感化されたことが影響しています。

大学の講義の課題図書で読んだ、アンソニ・サンプソン『セブン・シスターズ』からも影響を受けました。発展途上国の資源を容赦なく搾取・強奪する西側先進国の巨大資本に抵抗勢力として立ち上がるOPEC諸国との暗闘が描かれていました。

大学卒業後の就職先に石油業界を考えていた時期もあり、油田探索や採掘事業、原油ディーラーのようなダイナミック(に見えた)な仕事に憧れました。結局、鉄鋼業界に就職しましたが、入社当初は鉄鋼製品の原料となる鉄鉱石や副資材である石炭の買い付けに従事する仕事を希望していました。

石油を考えたくなったきっかけ

本日、唐突に石油をテーマにしたのは、現在読み進めている斎藤幸平『人新世の「資本論」』の影響です。

本来は人類の共有資産として有効活用されるべき石油が、市場原理や思惑で供給量や価格が変動する「商品」にされてしまい、特定の資本によって独占され、動かされています。このままいけば、石油は人類の繁栄維持の目的で、いつか確実に掘り尽くされてしまいます。

そのXデーは、私の死後になることは確実なのですが、「だったらいいや」はちょっと違うと思います。まずは知識を各方面から取り入れる努力をすること。私個人の取れる行動なんて微々たるものですが、無駄でも、無力でも、この努力は続けたいと思います。

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