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明石家さんまを考える ~『タモリ論』より

本日のnoteでは、明石家さんまという稀代の芸人についてです。樋口毅宏『タモリ論』の中の、第四章 明石家さんまこそ真の「絶望大王」である を読んで感じた読書感想文です。

生き様全てがエンターテイメント…

「明石家さんまとはどういう存在なのか?」というテーマを普段真剣に考える機会はありません。著者の樋口氏も、

あまりに大衆的すぎてしっかりと論評されることがなかった (P122)

と書いています。

24時間365日エンターテイメントの世界に惜しげもなく身を捧げているように見えるし、自らがメディアに乗せて私生活や好みを語る場面も結構多いので、私たちは「人間・明石家さんま」をよく知っているような錯覚を抱いています。若い頃には隣のおもしろいおにいさん、最近では、近所のおもしろいおじさん、っぽい親しみ易い雰囲気を崩さずに持っている人です。

ところが、明石家さんまさんのガチのインタビュー記事や自伝本や密着ドラマを目にすることは殆どありません。エンタメの文脈以外で他人に自分を語らせたり、評させたりすることを拒んでいるフシもあります。

明石家さんまが当たり前にしたもの

樋口氏が指摘している通り、明石家さんまさんが確立した芸人像や当たり前にした文化は無数にあります。

● 関西弁を身近な全国区のことばにした
● 俳優としてドラマの主人公になる
● 芸人がモテる
● 関西芸人が全国番組のMCを務める

私は、さんまさんが関西の人気若手芸人から国民的スターへと上り詰めていく過程をオンタイムで目撃してきた世代です。

テレビ全盛時代におけるお笑い芸人の成功パターンは、さんまさんが開拓した路線だと言っても過言ではありません。吉本興業を日本トップレベルの力がある芸能事務所にした最大の功労者であることも間違いありません。

ビートたけし、タモリ、島田紳助ら巨星と共にテレビ界を引率し、その中心に座り続けてきました。さんまさんが市場を開拓したことで、ダウンタウン、ナインティナインら後進たちの活躍する道が開けたとも言えます。60歳を超えた今も若手芸人を積極的に自分の冠番組に呼んで、笑いを提供し続けているのは驚異です。

陰の部分を見せない強さ

樋口氏は、明石家さんまさんの幼少時から青年期の壮絶な体験まで笑いに昇華するエンターテイナー魂にも言及しています。

さんまさんが、表の仕事現場を離れた私生活の場でも明朗に振る舞うことは、割とよく知られています。表と裏のギャップが小さいのは事実にせよ、見せ方を演出し、自己ブランディングの範囲で開示している可能性もあります。笑いには勿論、プライベートでは、礼儀や礼節に厳しいという話もあります。

大スターとして、芸能界で唯一無二の存在の地位に君臨してから、既に30年以上の月日が経過しています。私たちは、メディアを通して観られる『明石家さんま』という作品を信じるしかないのかもしれません。ここまで思い切って書き進めてきたものの、「明石家さんま」というお笑い怪獣を論評するなんておこがましいと感じています。

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