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バーに似合うAORの名曲 5選

本日のテーマは、バーカウンターで美味いお酒を飲むことを至福の時間と考えているMarkover 50が、沁みる楽曲をAORから厳選致します。

AORとは?

※AORの解説を付記します。音楽に詳しい方は無視して下さい。

AORとは、Album-Oriented Rock、あるいは、Adult-Oriented Rockの頭文字を取った略語で、特定の音楽ジャンルを指すことばです。

同じAORでも、前者と後者では内容的には別物です。前者は「シングルチャートでのヒットを意識した楽曲をフィーチャーするのではなく、アルバム全体の完成度を意識した音楽」を意味します。コンセプトアルバム的手法を用いたビートルズの名盤『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』や1970年代のプログレッシブ・ロック・バンドのアルバムなどが該当すると言われます。

後者は、しっとりとした「大人のロック」を意味することばとして用いられています。本日対象にするのはこちらです。AORをAdult-Oriented Rockとするのは日本独自のカテゴライズです。外国で以下に紹介するアーティスト達や作品をAORと言ってもおそらく通じないので、ご注意下さい。

夜、バー、酒とAORの相性

楽曲紹介に入る前に、私の独断と偏見を……

バーの店内に流れる音楽は、そのお店を特徴づける大切な小道具の一つです。オーセンティックバーと言われる業態では、非日常感を演出することが大切ですから、軽快でお洒落なジャズや荘厳なクラシック音楽を音量を絞った形で流している場合が多いのが特徴です。

ただ私は、夜の比較的遅い時間(10時以降)にしみじみとひとりで飲みたい時の音楽には、AORが合うと考えています。日常聴き込む音楽としてのAORに思い入れはないものの、【夜、バー、お酒】という条件が揃うと、AORのスノッブ感が妙にフィットします。AOR系楽曲は、クルマのハンドルを握って夜景を見ながらナイトドライブする時にもお薦めです。

私がAORを聴きながら飲むのに一番合うと思っているお酒は、ウイスキー(オン・ザ・ロック)です。カクテル(ギムレットとか)、ワイン(さらっと白)もいいし、日本酒(除く熱燗)まではぎりぎりOKかなと思います。しかし、焼酎は個人的にはNGとしたいです。どうしても焼酎を飲むのなら、音楽はAORではなく、演歌にします。

① Donald Fagen『I.G.Y.』(1982)

いきなり真打ちの登場です。ドナルド・フェイゲンは1970年代に活躍したスティーリー・ダンの中心メンバーだった人です。1982年発売の『ナイトフライ(The Nightfly)』は自身初のソロアルバムです。全曲デジタル録音で当時の最高峰のテクノロジーが詰まっていることでも知られています。

このアルバムを名盤たらしめているのは、何と言っても、ジャケット写真です。音楽はアナログレコードで聴くのが当たり前だった時代、本作を最高傑作の一つという声すらあります。

明け方4時過ぎ、ネクタイを緩め、マイク側に首を軽く傾けたラジオのDJ、灰皿に残るタバコの吸い殻…… モノクロ映像が、都会人の一瞬を見事に切り取って表現しています。何度見ても非の打ち所のないカッコよさに見惚れてしまいます。

I.G.Y.は、International Geophysical Year(国際地理年1957-1958)の略で、1950年代後半に漂っていた明るい未来像や楽観主義への皮肉をこめた歌のようです。そういった背景を知らなくても雰囲気だけで聴けてしまいます。

② Bobby Caldwell『Heart Of Mine』(1988)

日本で『キング・オブ・AOR』を投票すると、かなりの確率でこの人とこの楽曲が選ばれるのではないでしょうか。ニューヨーク出身でスタイリッシュなボビー・コールドウェルの唄う楽曲は、タバコ(パーラメント)のお洒落なCMにも度々起用され、有名になりました。

艶っぽいサックスの音色、のびやかなボーカル、印象的なシンセサイザー、ゆったりしたテンポ…… と艶やかな要素が詰め込まれており、特別な夜をゆっくりとバーのカウンターで過ごしたい時にはぴったりな一曲です。

③ Boz Scaggs『We're All Alone』(1976)

この曲も「AORと言えば、これ!」というくらいに鉄板の名曲です。バーのカウンターでロックグラスを片手に聴くと、途轍もなく心に沁みます。Let it out... Let it all begin(忘れよう、全部いちからはじめよう)あたりが特に。

ボズ・スキャッグスは、1944年アメリカのオハイオ州カントンで産まれ、オクラホマ州やテキサス州で育ったそうです。(Wikipediaより)生粋の西海岸出身のアーティストというイメージがあったのでちょっと意外な経歴でした。

④ Bill LaBaunty 『This Night Won't Last Forever』(1978) 

これは完全に私の趣味です。ビル・ラバウンティは、1990年代以降はカントリー歌手へと転向しますが、1970年代はAOR系楽曲の名手として活躍し、知る人ぞ知る素敵な名曲を残しています。

ジャケット写真のセンスを重視する私の好みにもぴったりで、この曲を聴きながらひと時浸ることも少なくありません。この曲は、マイケル・ジョンソンやソーヤーブラウンもカバーしており、そのバージョンもなかなか素敵です。

⑤ Paul Davis『Cool Night』(1981)

この曲もバー以外で聴くことはないものの、マンハッタンやギムレットといったクラシカルカクテルをちびちびやりながら、しんみり聴くのにぴったりな一曲です。この曲が収められたアルバム『クールナイト』のジャケット写真も私好みです。

ポール・デイビスは、2008年に惜しくも60歳の若さで逝去しています。日本での知名度・浸透度こそ今一つですが、本国アメリカでは人気のシンガーソングライターとして、数々のヒットを持つ存在でした。



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