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『スティーブ・ジョブズ』を観る

本日は、2013年公開の映画『スティーブ・ジョブズ Jobs』の鑑賞記です。

もう一つの『スティーブ・ジョブズ』映画

この作品の監督は、ジョシュア・マイケル・スターン(Joshua Michael Stern 1961/1/12-)が務め、ジョブズをアシュトン・カッチャー(Ashton Kutcher 1978/2/7-)が演じています。

カッチャーは、顔立ちが非常にジョブズに似ていて、傲岸不遜のふてぶてしい態度やちょっとした表情を見事に再現しています。189㎝の長身を腰を屈めて歩く姿には多少違和感があったのですが、長身のイメージがなかったジョブズも、実際には183㎝もあったようです。

スティーブ・ジョブズを描いた映画には、これとは別に、2015年公開の『スティーブ・ジョブズ Steve Jobs』があります。

2015年版は、ジョブズ自身がワルター・アイザックソン(Walter Isaacson 1952/5/20-)に執筆を依頼したという2011年発売の自叙伝『スティーブ・ジョブズ Steve Jobs』を原作に、『トレイン・スポッティング Trainspotting』(1996)『スラムドッグ$ミリオネア Slumdog Millionaire』(2008)『イエスタデイ Yesterday』(2019)などの作品で知られるイギリス人のダニー・ボイル(Danny Boyle, 1956/10/20-)が監督を務め、マイケル・ファスベンダー(Michael Fassbender 1977/4/2-)がジョブズを演じています。こちらは、アカデミー賞やゴールデングローブ賞などを受賞しています。

映画の感想

本作は、ジョブズの半生を描いています。

大学をドロップアウトした後、スティーブ・ウォズニアック(Stephen Gary Wozniak 1950/8/11-)など個性的な仲間を集めてアップルを創業します。AppleⅡで成功を収めた後、自らがマーケティングの天才と見込んでスカウトしたCEOのジョン・スカリー(John Sculley 1939/4/6-) にアップルを追われます。その後、アップルの業績不振を受けて復帰し、CEOに返り咲いてアップル社を立て直します。

映画評論家からの評価はさほど高くありませんが、私はgood評価です。

賛否両論ありそうなジョブズの描き方

私にとってジョブズは、憧れを持って遠くから眺めていたいカリスマ経営者でした。

過去のnoteにも書きましたが、興味の尽きない人物です。ただ、iPhoneが発売されるまで、アップル製品のユーザーではなかったし、伝えられている数々のエピソードから、積極的に関わりたいとは思えないタイプの人でした。

この映画で私がジョブズに抱いていた感覚はより強固になりました。ジョブズが歩んできた道のりは波乱万丈です。それは彼自らの価値観や行動が引き寄せた運命であったと感じます。

自分の理想とする目的を達成する為には、人間を冷徹で機能主義的に扱うことも躊躇しないし、ついてこれない人間、価値を共有できない人間、自分の為に全身全霊を捧げない人間を容赦なく切り捨てる非情さも描きます。そういった部分が映画では敢えて強調して描かれています。

特に、自分の子を妊娠したガールフレンドに非情で冷酷なことばを放つシーン、アップル社創業以前からの古い付き合いの仲間に非情な経営者の立場で、現実を突き付けるレストランでのシーンは、観ていて辛いものがありました。

ジョブズのように、日々生きるか死ぬかの緊張を強いられるスタートアップ企業の経営者ならば、この行動は共感できるのかもしれません。しかし、私はジョブズの野望のために切り捨てられ、人生を狂わされる側の人間に感情移入してしまいました。ジョブズが名声を築いていく物語に心底共感するのは難しかったです。

かつて自分を追い出したアップル社の役員陣が、業績不振に陥ったアップル社の立て直しのために復帰を口説きに来た際に発した

失ったんじゃない、奪われたんだ

ということばには怨念と迫力が込められていて、その後の展開を知ると、ぞっとするものがありました。

この映画でのジョブズという人間は、
● 自分が認める仲間としか仕事はしない
● 傍に置く人間は全て自分の判断で決める
● 自分に100%の信頼と忠誠を誓わないものは全て敵
● 血も涙もない訳ではないが、人の事情よりも崇高な理想の方が大切
● 変化をおそれない、平凡なものは認めない
というマッチョな価値観を持つ人間だ、という見せ方なのかな、という印象でした。

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