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私を構成する5つのマンガ

本日は、#私を構成する5つのマンガ という企画に乗らせていただき、それぞれのマンガが、自分に及ぼした影響を考えてみます。

「マンガはあまり読んでない」は錯覚だった

この企画で5つのマンガを選ぶ作業をするまで、「これまであまりマンガを熱心に読み込んでこなかった」という思い込みがありました。

昨夜の内に5作品を選んだものの、一夜明けてみると、これまでに読んで感銘を受けた作品の記憶が、次から次へと思い出されてきて、本当にこの5選でよかったのかなあという気持ちになりました。「マンガはあまり読んでない」は完全な錯覚で、実際には、これまでに出会ったマンガから様々な影響を受けて、構成されている価値観が少なくないようです。

今回の5選からは外したものの、確実に影響を受けている、あだち充、鳥山明、浦沢直樹、石ノ森章太郎、わたせせいぞうの作品も選びたかったなあという後悔の気持ちもあります。

■小学生時代

小学生の頃は、マンガを読むのも描くのも大好きでした。自由帳に毎日マンガを描いていましたし、テレビアニメまで含めると、時間と情熱のかなりの部分をマンガに使っていた気がします。その頃の忘れられない作品として、車田正美『リングにかけろ』鴨川つばめ『マカロニほうれん荘』をチョイスさせて頂きました。

1 リングにかけろ

この作品だけは外せません。真っ先に思いついた作品です。

車田正美は、燻っていた少年ジャンプを、販売部数日本一のマンガ雑誌へとのし上げた功労者の一人でしょう。車田作品ではセールス的には、『星闘士星矢』の方が有名なのかもしれませんが、「私を構成する」という観点での影響力では、こちらが圧倒的に上です。

連載初期の話は地味な展開でした。チャンピオンカーニバルあたりからじわじわと盛り上がってきて、世界Jr.大会では荒唐無稽な必殺ブローが登場し、車田ワールドに惹かれていきました。世界連合Jr.対ギリシア十二神の激闘の頃が最高潮で、毎週月曜日のジャンプの発売日を心待ちにしていました。

裕福な家に生まれた御曹司で、天才の象徴・剣崎順と、努力で這い上がってきた庶民派の象徴・高嶺竜児の生涯のライバルと友情関係が、作品を貫く骨格になっています。はっきりいって粗削りな作品だと思いますが、圧倒的なパワーと突き抜けたキャラクターの魅力で押し切ってしまっています。「命ってものは、必要な時に使わないと意味がない。それがわからないようなヤツに生きる資格なんてないんだ。」というマッチョな価値観は、いまだに私の中から消えていません。

2 マカロニほうれん荘

天才漫画家・鴨川つばめのデビュー作にして、知る人ぞ知る名作です。同世代の友人にも、この作品を深く愛する根強いファンが多数います。週刊少年チャンピオンに連載され、人気絶頂時に休載・終了となってしまいました。それまでチャンピオン派だった私が、ジャンプに乗り換える大きなきっかけになりました。

そうじ、きんどーさん、トシちゃんが学園を舞台に繰り広げるドタバタ喜劇です。ギャグマンガらしからぬ写実的な画力とシュールなギャグセンスに、よくわからない大人の世界を覗いているような興奮がありました。個人的には、脇キャラの一人、「なんだ馬之助」がツボでした。

■中学・高校時代

中学、高校になると、マンガに費やす時間と情熱は圧倒的に減り、本屋で立ち読みしたり、床屋の待ち時間に楽しむ程度になっていきます。マンガは娯楽的に消費するものの一つで、全力で情熱を傾ける対象ではない、という位置付けに落ち着いたように思います。

とは言っても、マンガを読むのを避けていた訳ではなく、手許にあれば息を吸うように読んでいました。この時代からは、なかじ有紀『学生の領分』をチョイス致しました。

3 学生の領分

なかじ有紀作品は、私の妹が持っていた単行本で知り、はまりました。神戸の高校を舞台にした『小山荘のきらわれ者』の方が有名なので、どちらをチョイスするか迷いましたが、彼女のデビュー作である本作、通称「学領(ガクリョウ)」の方にしました。

中学・高校と実生活で異性と浮いた話がなかった私の「こんな経験してみたいなあ……」という妄想を存分に駆り立たせてくれる絶好のマンガでした。普段ロックの話が8割の硬派気取りな自分が、陰で少女漫画を読んでいるというギャップは知られたくない事実でした…… 50代になった今でも、実家に帰って時間があると、本棚から取り出して読み返すことがあります。

■大学・社会人時代

20代になると、自分の中でどういう変化があったのか、マンガからはかなり距離を置くようになりました。ジャンプやマガジンやモーニングを毎週買っている友人をみると、軽くひきました。社会人になる頃には、朝夕の通勤電車の中でマンガ雑誌を広げて読んでいる人を見ると、眉をひそめるタイプの人間になっていました。

それでも、大人向け、社会派、教育的な漫画には辛うじて接していました。石ノ森章太郎の『マンガ日本経済入門』なんかは最たる例かもしれません。この時期に出会った書として、手塚治虫『アドルフに告ぐ』、藤子不二雄A『まんが道』をチョイスしています。

今では、勝手な思い込みで、マンガから離れたのは間違っていた…… もっと真剣にマンガ読んどきゃよかった…… という後悔の思いがあります。

4 アドルフに告ぐ

日本のマンガビジネス史に、手塚治虫が果たした役割は絶大です。自ら偉大な数多くの作品を残したのみならず、彼を慕う多くの漫画家志望の後輩を世に送り出しました。数多い作品の中から『ブラックジャック』と迷いましたが、心への残り方がより衝撃的だったこちらを選びました。

三人のアドルフの物語が複雑に絡み合ってストーリーが展開していきます。人間の数奇な運命・宿命に心が揺れました。決して読後感の良い作品ではないものの、心の奥底に確かな爪痕を残されたような気がしています。

5 まんが道

私は、日本マンガ界最大のスターは、藤子不二雄(藤本弘/安孫子素雄)だと思っています。藤子作品は、一見子ども向けであっても、さらっと人生の闇や教訓や不条理を潜ませていて、単純に笑えない怖さがあると感じます。藤子不二雄A(安孫子素雄)の描くこの青春群像マンガには、二人の傑出した漫画家と、共に時代を生きた有名漫画家たちとのエピソードが真剣かつユーモラスに描かれていて、非常に面白い作品です。

手塚治虫に憧れてマンガに夢中になり、青雲の志を抱いて東京に出てきて、トキワ荘で切磋琢磨する仲間と出会う…… 成功の階段を昇る裏で挫折や別れも経験する…… ふたりの物語から、自分がこの先歩む人生の先々に待ち構えているであろうイベントのイメージを刻みました。

自分を構成するものを5作品に代表させるのは難しい……


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