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『人間が幸福になれない日本の会社』を読む
本日の読書感想文は、佐高信『人間が幸福になれない日本の会社』です。
佐高信氏とは?
著者の佐高信氏(1945-)は、著書も多数あり、長らく活躍する著名な評論家です。リベラル系の論客として知られ、権力志向の政治家や役人、モラルを喪失した振る舞いをする企業人を徹底的に嫌い、本人名指しで舌鋒鋭く斬りまくっている強面の人、という印象です。今ではすっかり世に定着した『社畜』ということばを世に広めた人(考案者は小説家・実業家の安土敏<本名:荒井伸也>氏)でもあります。
私は、佐高氏が敬愛する城山三郎氏の企業小説や評論はよく読んできました。一方で、佐高氏が人間的に毛嫌いし、ボロクソに批判している竹中平蔵氏や稲盛和夫氏には強い悪感情を持っていません。
リベラル劣勢時代だから…
本書は2016年に発売されたものです。全編、佐高節です。
はじめに
第一章 日本の経営者はなぜ無責任か
第二章 企業教のマインドコントロール
第三章 ミドル残酷社会
第四章 ホワイト企業のブラック性
第五章 まともな経営者はどこにいるか
第六章 チェックシステムの不在
安倍政権時代に顕著に進んだのは、マスコミの情報統制というか、飼い馴らしでしょう。報道されるニュースが忖度で加工されていることは、素人の私でも肌感覚でわかるし、都合の悪い情報の隠蔽もより巧妙になってきています。
私は、これまで新自由主義的な社会運営に肯定的な考えを持ってきました。頑張った人が経済的に報われ、称賛されるのは正しいと思ってきました。ただ最近では、新自由主義的な考え方や施策が浸透し過ぎて、メリット以上の弊害が目立つようになってきたと感じる場面が増えています。
全体の数字を眺めれば悪くなっていなくても、中をよく見ると、強い(有利な)人はより強くなり、弱い(不利な)人はより弱くなってしまい、しかも弱い人の比率がどんどん増えていく、という現象が起こっています。強い人が大勝ちすることで平均値を引き上げているともいえ、勝利した強い人たちからのトリクルダウンは意外と起こっていない、のが実情でしょう。
リベラル色の強い意見もきちんとフォローしておかないといけないなあ、という問題意識から本書を手に取ってみた次第です。
事実情報は参考になった
本書から得られる事実情報には驚きもありました。佐高氏自身は、トヨタ、松下(松下幸之助)、日立、京セラ、東京電力といった大企業文化を厳しく批判しています。佐高氏が本書で出している事例を知ると、確かにこれら企業に好感を持てなくなります。権力者や強者へ手加減なく浴びせる舌鋒は鋭く、辛辣です。罵詈雑言と言っていいレベルの批判です。
「ワルい奴らには何を言ってもいい」という開き直り(リベラル系の人に感じる印象)を強く滲ませる佐高氏の姿勢に共感はできません。貶めるだけ貶めて、筆を措くのは不毛な気がするのです。なので、事実を暴露することの価値は否定しないものの、そこから導かれる評価や結論には100%同意できませんでした。
仮に批判が正当で、納得感があっても、心情的に与しにくいです。解決策が精神論的で具体策が乏しいものであれば、日々抱く不満を代弁してくれたと溜飲を下げただけで満足して終わってしまいます。それはあまり建設的とはいえない態度だと思います。筆者にしてみれば、「そこは俺に期待するな、俺の役割ではない」という所でしょうから、事実の開示だけをありがたく頂戴して、後は自分で考えて行動するのだと思います。
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