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『憂国のモリアーティ』を観る

本日は、テレビアニメ『憂国のモリアーティ』の感想文です。amazon primeで偶然発見し、事前知識も何もなしに観はじめた所、どんどん嵌まっていき、一晩で一気見をしてしまいました。記憶が薄れる前に備忘を残します。
※ 多少のネタバレ情報が含まれますので、ご了承下さい。

『憂国のモリアーティ』とは?

竹内良輔(構成)・三好輝(漫画)作の『憂国のモリアーティ(Moriarty the Patriot)』は、『ジャンプスクエア』(集英社)2016年9月号から現在も連載中です。2018年の「第13回 全国書店員が選んだおすすめコミック」の一般部門2位を獲得した人気作品です。私が観たのは、2020年10-12月にTOKYO MX他で放送されたテレビアニメ版(シリーズ1)です。

ビクトリア女王時代の英国が舞台となっていて、サー・アーサー・コナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズ・シリーズで、ホームズの最大の難敵として登場するモリアーティ教授から主人公の名を取っています。

アニメには、シャーロック・ホームズ、ジョン・H・ワトソン、ジェームズ・ボンドまで登場します。

設定とコンセプトに興味を惹かれた

私が興味を惹かれたのは、時代設定が19世紀の英国だったことです。ビクトリア女王在位時代(1837/6/20-1901/1/22)の英国は、工業化が急速に進み、貿易の強みを活かして、世界中に植民地・半植民地を拡げていき、世界最強国にのしあがっていく時代です。

私は西洋史ファンなので、当時の英国内事情には興味を持っています。英国は堅牢な階級社会であると言われます。本アニメでは、支配層に君臨する世襲制の貴族階級や産業革命で豊かになった新興のブルジョワジーと、労働者階級、小作農民との格差が、胸糞悪いほどあからさまに描かれています。

ダークヒーロー、モリアーティのキャラ設定

主人公は、貴族階級(伯爵)のモリアーティ家の三兄弟です。自身の高潔な目的(既存秩序の完全破壊・平等社会の実現)の達成にあたって、手段としての犯罪行為(抹殺・謀略)を肯定するダークヒーローです。

三人の”ジェームズ”・モリアーティの誕生の秘密は、二話・三話の『緋色の瞳』で描かれています。

貴族階級の生まれながら、特権意識にこり固った貴族階級の人間を毛嫌いする、長男のアルバート。(瞳の色は緑色)

孤児として育ちながら、モリアーティ家の本当の二男と入れ替わり、天才的な頭脳と博識、人間掌握術に優れ、モリアーティ兄弟の頭脳である二男のウィリアム(瞳の色は緋色)

兄のウィリアムに献身的な末弟のルイス(瞳の色は緋色)

この三人が軸になりつつ、絡んでくるキャラクターの描き方が魅力的です。

「あれね…」が薄っすらと見えるエピソードの数々

この作品、一部のアニメファン、ホームズファン(シャーロキアン)には不人気という話もありますが、私は非常に面白いと感じました。各エピソードに程良く文化的背景や小道具や名作のオマージュがちりばめられているのも惹き込まれた理由です。

モリアーティの宿敵役のホームズが登場するのは、第6、7話の『ノアティック号事件』からです。舞台は、豪華客船です。

第8、9話の『シャーロック・ホームズの研究』からは、ホームズの助手役のワトソンも登場し、殺人容疑をかけられたホームズが、ウィリアムの仕組んだ貴族殺人事件の謎を解決します。キーワードに馬車が登場します。

第11、12話の『二人の探偵』は、列車内で起こった殺人事件を、乗り合わせたホームズとウィリアムが謎解きをする話です。舞台は鉄道です。

第13、14、15話の『大英帝国の醜聞』は、自由・博愛・平等を掲げたフランス革命の主要人物、ロベスピエールが、実は英国王室から送り込まれたスパイであり、ホームズの先祖に連なる、という荒唐無稽感な設定で、苦笑しました。モリアーティが犯罪を繰り返す目的と覚悟が、視聴者にはほぼほぼ明らかにされます。

第15、16話の『ホワイトチャペルの亡霊 第一幕・第二幕』は、実話の”切り裂きジャック事件”が援用されています。

第17話の『スコットランド狂騒曲』では、バーのシーンで、007の「ヴェスパー」のオマージュのように、「パターソン」というカクテルが登場するので、私はにやっとします。


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