見出し画像

『1979年の奇跡』を読む

本日は、南信長『1979年の奇跡:ガンダム、YMO、村上春樹』から、私の少年時代を思い返してみたいと思います。

1979年、11歳だった私

著者の南信長氏は1964年生まれのマンガ解説者です。その南氏が「奇跡の一年」と位置付けているのが1979年で、当時のカルチャーと空気感を丁寧に、興味深く解説してくれているのが本書です。目次構成が絶妙で、かなり読む意欲をそそります。

第1章 ガンダムと大友克洋
第2章 YMOとウォークマン
第3章 村上春樹と「江夏の21球」
第4章 角川映画と情報誌
第5章 「ジャパン アズ ナンバーワン」と「地球の歩き方」

これらの事象が全て1979年に関係しているとしたら、そりゃ「奇跡の一年」だよなあ、と感心してしまいます。世代が変われば、印象も変わるとはいえ、当時11歳の私にとっても眩いばかりの出来事が起こっていた年なんだなあと感じます。そういえば、1979年は国際児童年でもありました。

全力で少年をやっていた

あの頃の僕らはきっと全力で少年だった
ー 『全力少年』(2005)作曲:常田真太郎、作詞︰大橋卓弥

当時の私は、全力で少年をやっていた、ような気はします。もう41年前の話なので、当時の私自身を正確に描写することも振り返ることもできません。残っているのは断片的だけど、ところどころだけ鮮明な記憶だけです。

本書で描かれている1979年の事象は、全て懐かしく思い返すことができます。正確には、11歳の小僧がエズラ・ヴォ―ゲルの「ジャパン アズ ナンバーワン」や村上春樹の「風の歌を聴け」をオンタイムで読んでいる訳もないし、YMOや大友克洋の凄さを理解していた筈はないのですが、1979年を彩った出来事はなぜか全て辿って来た道だ… と感じてしまいます。1979年は第二次オイルショックがあったり、不穏にくすんでいた時代でもあった筈ですが、薔薇色に輝いていた印象があります。

革新性が後にきちんと評価されたコンテンツたち

劇場映画では、『銀河鉄道999』も『ルパン三世 カリオストロの城』も1979年の公開です。『ルパン三世 カリオストロの城』は宮崎駿が世に広く知られるきっかけになった代表作という評価が確立しています。

銭形:一足遅かったか。ルパンめ、まんまと盗みおって
クラリス:いいえ、あの方はなにも盗らなかったわ。私のために戦ってくださったんです。
銭形:いや、ヤツはとんでもないモノを盗んでいきました。あなたの心です

このやり取りは最高だなあ、と今でもワクワクします。ただ、本書によれば、公開時の人気は今一つで、劇場に空席が目立ったとあります。

後に社会現象を引き起こすほどの爆発的人気を誇った『機動戦士ガンダム』も世間一般的にはマイナーなスタートだったという印象を持っていました。が、南氏の著述によれば、1979年4月7日の第一回放送はコアなアニメファンには衝撃と興奮を与えたようです。富野由悠季、安彦良和ら、当時のガンダム制作に携わっていた稀代の才能が、ガンダムにこめた革新性・斬新性は輝いていたということなのでしょう。



この記事が参加している募集

#読書感想文

189,685件

サポートして頂けると大変励みになります。自分の綴る文章が少しでも読んでいただける方の日々の潤いになれば嬉しいです。