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2021箱根駅伝(復路)観戦記

駅伝観戦三昧の最終日は、第97回東京箱根間往復大学駅伝競走(復路)の観戦記です。最後の最後に劇的な結末が待っていました。

第6区 20.8㎞ 芦ノ湖〜小田原

初の往路優勝を飾った創価大学・濱野選手が、8時に箱根町芦ノ湖畔をスタート。今年、その10分後の繰り上げ一斉スタートになったのは僅か4校で、17校が往路ゴール時のタイム差でスタートしていきました。

逆転優勝に向けて追うチームの中では、駒澤大学・花崎選手がひときわ快調で、前半の上りで東洋大学・九嶋選手を逆転して2位に上がると、本格的な下りに入ってからも追撃の手を緩めません。昨年館澤選手がマークした区間記録には及ばなかったものの、57分36秒の歴代3位の好タイムで区間賞を獲得しました。

濱野選手は、区間7位にまとめ首位を守ったものの、2位駒澤大学との差は1分8秒差まで縮まりました。東海大学・片山選手が3位に上がり、僅差の4位で東洋大学が続きます。5位には主将の清水選手が区間2位の好走を見せた順天堂大学が続きます。復路12位スタートの青山学院大学は、初出走の高橋選手が区間3位、2人抜きの好走で、シード権内の10位まで挽回してきました。

区間賞 57分36秒 花崎悠紀(駒澤大学)

第7区 21.3㎞ 小田原〜平塚

創価大学は、昨年三区11位の実績を持つ原富選手を当日変更で起用。ペースを守った堅実な走りで、追ってくる駒澤大学のルーキー、花尾選手との差をじわじわと広げ、八区中継点では1分51秒差としました。個人成績も区間2位と四年生の役割を見事に果たしました。

ほぼ同時に襷を受けた東海大学・本間選手と東洋大学・西山選手の3位争いは、本間選手がレース中盤から差を広げて単独の3位を確保しました。実績十分で最後の箱根に賭けていた実力者の西山選手は、区間12位と不本意な結果に終わりました。

5位には佐伯選手の区間賞の走りで東京国際大学が返り咲き、6位に順天堂大学。7位には青山学院大学が、近藤選手の三人抜き、区間3位の意地の走りで進出してきました。湘南から吹きつけてくる風が強く、区間記録は昨年よりも低調でした。

区間賞 1時間3分10秒 佐伯涼(東京国際大学)

第8区 21.4㎞ 平塚〜戸塚

首位を守る創価大学は、永井選手が区間8位の手堅い走りで、2位の駒澤大学・佃選手に少し詰められたものの、1分29秒差を保って中継しました。

東洋大学は、当日変更で起用された駅伝初出走の四年生、野口選手の区間2位の快走で、先行する東海大学を逆転し、3位を奪回しました。濵地選手が区間15位と振るわなかった東海大学は4位に下がり。4位と6秒差の5位には、前回もこの区間を走って優勝に貢献した岩見選手の力走で青山学院大学が迫ってきました。

6位順天堂大学、7位東京国際大学、8位國學院大學、9位早稲田大学、10位帝京大学までは次回シード圏内。ここまでシード圏外で苦しんでいる有力校の明治大学は、四年生の大保選手が歴代2位の好タイムで10位と1分8秒差の12位まで盛り返し、シート圏獲得に希望を繋ぎました。

区間賞 1時間3分59秒 大保海士(明治大学)

第9区 23.1㎞ 戸塚〜鶴見

八区終了時点で、首位創価大学と3位東洋大学との差は4分17秒まで広がり、創価大学と2位の駒澤大学の優勝争いになってきました。創価大学は、前回同区間6位の実績を持つ四年生の石津選手が快走、2位の駒澤大学・山野選手に十区中継時点で3分19秒差をつけました。石津選手は、区間2位の青山学院大学・飯田選手を1分6秒も引き離す断トツの区間賞でした。四区から首位を守り続けている創価大学が、このレースで獲得した初めての区間賞となりました。

単独走の東洋大学・小田選手が3位を守り、4位には東海大学・長田選手を抜いた青山学院大学、5位は抜かれた東海大学、6位には橋本選手の区間3位の力走で帝京大学が上がってきました。7位に早稲田大学、8位に順天堂大学、9位に國學院大學と続き、シード権を争う10位東京国際大学と11位に上がった明治大学との差は38秒とさらに僅差になってきました。

トップ通過から20分の制限時間に間に合わず、山梨学院大学、専修大学の二校が無念の繰り上げスタートとなり、母校の繰り上げ襷で大手町のゴールを目指します。

区間賞 1時間8分14秒 石津 佳晃(創価大学)

第10区 23.0㎞ 鶴見〜大手町

3分19秒差とほぼほぼセーフティリードを築いた創価大学は、三年生の小野寺選手が抑え気味にスタートし、安全運転気味にラップを刻んでいきます。追う2位の駒澤大学・石川選手は、イチかバチか、前半から積極的に走って追い上げをはかります。

残り10㎞を切った新八ツ山橋の定点付近で、首位と2位との差は1分57秒。詰められてはいるものの、安全運転で進めている創価大学の逃げ切り勝ちを想像していたところ、このあたりから小野寺選手の表情がみるみると曇りはじめ、ペースダウンが明らかとなっていきます。

16.5㎞地点の田町では1分17秒差、18.1㎞地点の御成門では47秒差へ。1㎞毎に10秒以上詰まるような状況で、小野寺選手の変調は明らかです。ここまで完璧なレースをしてきた創価大学にとって、優勝目前での痛恨のブレーキとなってしまいました。ゴールまで残り約2㎞の鍜治橋交差点付近で追い付かれた小野寺選手には、監督車に乗る大八木監督からの檄に後押しされた石川選手の渾身のスパートに抵抗できる余力はなく、後は引き離されるばかりとなりました。

石川選手はそのままペースを緩めず、感染拡大防止措置で関係者だけが見守る大手町のゴールに飛び込みました。2位は無念の創価大学。3位東洋大学、4位青山学院大学、5位東海大学、6位早稲田大学、7位順天堂大学、8位帝京大学、9位國學院大學、10位東京国際大学までが、次回シード権を獲得。11位の明治大学は26秒差でシード権を失いました。

区間賞 1時間9分12秒 石川拓慎(駒澤大学)

最終結果

【総合】
① 駒澤大学 10時間56分04秒
② 創価大学 10時間56分56秒
③ 東洋大学 11時間00分56秒
④ 青山学院大学 11時間01分16秒
⑤ 東海大学 11時間01分16秒

【復路】
① 青山学院大学 5時間25分33秒
② 駒澤大学 5時間25分35秒
③ 中央大学 5時間28分39秒
④ 早稲田大学 5時間28分47秒
⑤ 創価大学 5時間28分48秒

勝手に寸評

最終十区に全く予期せぬ結末が待っていました。創価大学九区の石津選手の快走が決定打になったと思いましたが、最後まで勝負を諦めずに追走したアンカーの石川選手、選手を鼓舞し続けた大八木監督の執念が、駒澤大学13年振りの総合優勝をもたらしました。下級生に有力ランナーが残る来年以降は更にチーム力向上が見込まれます。燻っていたかつての『平成の常勝軍団』の『令和の常勝軍団』への進化を期待します。

後一歩で惜しくも初優勝を逃した創価大学は大健闘のレースでした。総合優勝目前で戴冠を逃したのはさぞ無念でしょう。各区間の選手は力を存分に発揮しました。特に往路の嶋津選手、復路の石津選手の素晴らしい走りは、箱根路を大いに盛り上げました。就任2年目の榎木監督の手腕と高校時代無名の選手を着実に育成する体制は高く評価されるべきでしょう。

3位は、アンカー清野選手が青山学院大学・中倉選手とのデッドヒートを制した東洋大学が入り、定位置のトップ3へと返り咲きを果たしました。東洋大学も下級生に将来性豊かな選手が残るので、モットーの『その一秒を削り出せ』で来年以降の駅伝シーズンを盛り上げてくれるでしょう。

連覇を狙った青山学院大学は、悔しい4位でしょう。主将でチームの精神的支柱でもあった神林選手を直前の故障で欠いたことがチーム全体に響き、往路はまさかの12位に沈みました。それでもそのまま崩れることなく、後方から追い上げて復路優勝を達成し、地力が本物であることを証明しました。今回の苦い経験を糧に、名将・原監督はチームの立て直しを進めていくことでしょう。

東海大学は、往路に主力選手をつぎ込み、先手必勝のプラン通りに進んでいたものの、四区の想定以上のブレーキでプランが狂ってしまいました。復路は下級生を起用して我慢のレースとなりました。チームを支えた四年生の三本柱が抜けますが、三区で区間賞の鮮烈デビューを飾ったスーパールーキー石原選手らを軸に巻き返しを図ってもらいたいものです。

早稲田大学、順天堂大学、國學院大學は、チーム期待のエース格の選手が不発に終わったのが誤算でした。下級生に有力選手を抱えるチームばかりなので、来年以降の覚醒に期待です。帝京大学の地力と安定感はさすが。東京国際大学はヴィンセント選手の驚異の爆発力を活かし切る駅伝ができるかがカギになるでしょう。残念ながらシード権を取れず、次回は予選会からの出直しとなる明治大学、中央大学らも力は紙一重です。

今年はルーキー豊作の年で、例年以上に一年生が多く起用されました。華々しいデビューを飾った選手、期待外れに終わった選手、明暗は分かれましたが、来年以降更にパワーアップした姿が見られるものと思います。

今年から選手のユニホームの胸とパンツに、企業スポンサーの広告表示が解禁されました。私は広告賛成の立場です。スポーツ事業・振興にお金が必要なのは紛うことなき事実です。スポンサーとして大学チームや競技運営に協力してくれる企業が増えることは、学生選手の環境改善や競技力向上にもプラス効果があると思います。

ひとまず、2021年の私の駅伝三昧の日々は本日で幕を下ろし、明日からは通常note投稿に戻ります。

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私は、駅伝観戦歴40年目を迎える経験を活かし、中長距離、マラソン、駅伝に関する観戦記や備忘録のnoteを書いております。

ご興味があれば、私の書いた記事を集めた『Markover 50の中長距離・マラソン・駅伝コラム』というマガジン(無料)へご登録頂けますと大変嬉しく思います。



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