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好きな楽曲:『ウォータールー・サンセット』

本日のnoteは、キンクス(The Kinks)『ウォータールー・サンセット(Waterloo Sunset)』という楽曲に対する私の思いを書きます。私が長年に渡り、精神安定剤的に聴き続けている大切な一曲です。

英国四大バンド、キンクス

一般的には、1960年代のロック草創期にイギリスから登場し、世界的な人気を博したビートルズ、ローリング・ストーンズ、フーを『英国三大バンド』と称します。しかし、熱心なブリティッシュロック・ファンの中には、キンクスを加えた『英国四大バンド』が正しいと譲らない人もいます。私は『英国四大バンド』説に一票を投じる一人です。キンクスにはそれだけの価値が十分にあり、ロック史に燦然と輝く重要なバンドだと信じています。

キンクスは、レイとデイヴのデイヴィス兄弟を中心に、1964年にロンドンで結成されています。バンドの核になるのは、フロントマンでコンポーザーでもある兄のレイ・デイヴィス(Ray Davies)です。優れた音楽的才能を有する偉大な音楽家と認められている一方、神経質で気難しい性格で皮肉屋、躁と鬱の激しい一筋縄ではいかない人物という評があります。

キンクスとの出会い

私のキンクスとの出会いは、中学生だった1983年に発売されたアルバム『ステイト・オヴ・コンフュージョン(State of Confusion)』です。シングルカットされた『カム・ダンシング(Come Dancing)』や『思い出のダンス(Don't Forget To Dance)』はかなり好きな曲でした。

ロンドンの名所、ウォータールー橋

数多いキンクスの名曲の中で、『ウォータールー・サンセット』は私が断トツで好きな曲です。1967年発売、レイ・デイヴィスの作品です。

多くの韻を含む歌詞は『most beautiful lyrics』とも評価されていて、国際的な雑誌、「Time Out」は、この曲を「Anthem of London」に選んでいます。デビッド・ボウイもこの曲を気に入って、カバー(実際の所、キンクスのオリジナル版より完成度が高く、恰好いいかも…)もしています。

私がこの曲を知ったのは大学生の時です。瞬時に気に入り、何日も繰り返し聴き続けていた時期がありました。大学の卒業時に計画していたヨーロッパ旅行では、この曲の舞台となるロンドンのウォーター・ルー橋から夕陽を見るのを夢みて、楽しみにしていました。直前にヨーロッパ旅行を取り止めたので、この素敵な計画は実現せず、今となっては数少ない後悔になっています。

タイトルの『ウォータールー』とは、1817年にロンドンのテムズ川に架けられた橋の名前で、1815年に英国を含む同盟軍がナポレオン軍を撃破したワーテルロー(Waterloo)の戦いに因んで付けられています。

印象派画家、クロード・モネ(Claude Monet 1840/11/14-1926/12/5)が描いた『ウォータールー橋の連作』の舞台としても知られています。

楽曲を巡る数々のエピソード

この曲を巡っては、真偽の怪しい多くのエピソードがあります。

もともとの歌詞は『Liverpool Sunset』だったが、ロンドン出身のレイ・デイヴィスが思い直して語呂のよいWaterlooに変えたとか、looとは「便所」の意味なので、waterloo=水洗便所と皮肉をこめているとか、です。一筋縄ではいかない変人のレイ・デイヴィスなら、考え兼ねません。

歌詞に出てくる、テリーとジュリーのカップルのモデルは、レイ・デイヴィス自身が2008年のインタビューで語った所によれば、

「あれはわたしの姉がボーイフレンドと一緒に旅立とうとするようすから空想したものだ。彼女たちは、移民して他の国へ行こうとしていたんだよ」
Wikipediaより抜粋

ということです。多くの人々から愛される名曲ならではという感じです。

歌詞の疑問

振り返ると、周囲からのプレッシャーが強くて不安が多かったり、失敗や挫折で自信を喪失している時期にこの曲をよく聴いてきた気がします。

楽曲の一番好きなところは、”As I gaze on Waterloo sunset, I am in paradise.” というあたりです。それまでの歌詞に使われる単語が相互に韻を踏んでいるので、心地よく響いてきます。冒頭のギターや、レイ・デイヴィスの力を入れ過ぎていない哀愁感のあるボーカルも好みです。

歌詞の中の、”But, I don't need no friends.”は、「でも、僕は友達を必要としない」という意味で正しいのでしょうか? 翻訳サイトで確認しても、この曲の色々な解説サイトを見ても、このような訳が充てられています。

それではなぜ、”I don’t need friends.”ではないのでしょう?「二重否定=強い肯定」という原則があります。”no friends"(友達がいない)という状態が、" do not need"(必要ない)と解釈すると、逆の意味になるような…… 私には長年判断が出来ていない部分です。

もう一度行きたい、あの場所

私は、18年前の年末に一度だけロンドンを訪れています。その時に、新名所の大観覧車に乗ったので、近くにあったウォータールー駅やウォータールー橋にも立ち寄っている筈なのです。なのに強い印象がありません。

あんなに世界を飛び回ることにこだわりを持っていたのに、最近は、もう海外には行かなくてもいかなあ…… という諦めの気持ちも大きくなってきています。でも、この曲を聴くと、ウォータールー橋からの夕陽を眺めながら「Waterloo sunset's fine...」と呟いている妄想が沸いてきます。

動画や映像を観ると、ロンドンは概して天気が良くないので、夕陽も厚い雲に覆われていて、この場所から見る夕日の写真に、「壮麗な美しさ」という印象は受けません。控え目な情景が、ロンドン市民の心に刻まれている夕日なのでしょうか。

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