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『人生論』を読む

本日の読書感想文は、堀江貴文『人生論』です。

はじめに

2009年にKKロングセラーズから出された本です。近所のブックオフで見つけて買いました。ホリエモン本は人気があり、ほとんどがベストセラーです。私もよく買って、目を通します。

最近出版されている著書は、書下ろしはせず、ブログやYouTubeなどで発表済の内容を、ライターや編集者が本にするパターンが多い気がします。だから内容が薄いということではないものの、最近出る本よりもこの頃の方が言葉遣いが丁寧な印象です。

本書は、今から10年前、当時37歳だった堀江さんの考え方を綴ったもので、「死生論」「自己分析論」「本質論」「未来論」「教育論」「仕事論」の六章で構成されています。「はじめに」ではこう綴っています。

私は川の流れに身を任せて生きていく。すべてが流れの中での出来事であり、流れに逆らったり、立ち止まったりすることはない。自分の運命という川の流れに逆らわずに、ただゆっくりと流れていくのだ。不幸なこともうれしいことも、ただ川の流れの中のひとこまに過ぎない。(P3)

生きることに対するこの姿勢は、共感する部分です。

第1章 「死生論」

誰もが持っているであろう死への恐怖を幼少時に強く意識した話からスタートします。そして、死を直視したことで、「楽しく生きなければ損である」というスタンスが確立した、ということが語られます。

死の恐怖と真正面に向き合った経験から、死の恐怖を忘れる為に、退屈な時間を排除し、新しいテクノロジーに関心を持ち、おもしろいと思ったことに挑戦し続ける、という今も続く堀江さんの活動スタイルの原点のように思われました。

【ストレス発散の最適化】
・ストレスを溜めない → やりたいことは我慢しない
・ストレスを受け流す → 自暴自棄になってみる、悩んでもしょうがない

第2章 「自己分析論」

ライブドアの社長として飛ぶ鳥落とす勢いだった2006年、証券取引法違反容疑で逮捕された際の内幕が語られます。

当時の堀江さんは、突出した成果を驚くべき短期間で出していく危険な存在であり、日本を牛耳る政官財の中枢に、その存在を快く思わない勢力がいたことは間違いありません。自分の放つ存在感・社会への影響力への自覚が乏しくて、権力者を刺激し過ぎたと本人も考えているようです。

なぜ、自分が逮捕され、執行猶予もつかずに刑務所へ収監されたのか、司法制度の歴史に至るまで徹底的に自分で情報を集め、分析したことがよくわかる内容です。納得はしていないようです。有名になり過ぎたこと、キャラが立ち過ぎていたことが招いた事件だったと私も思います。

第3章 「本質論」

合理的で納得しかなかった章です。最近も同じような内容のことを堀江さんは繰り返し発言されています。10年経っても、日本には本質とは程遠い行動をしている人達が沢山いて、結果として世界的な凋落に繋がっていると思わざるを得ません。もっと睡眠を大切にした方が良いですね。

第4章 「未来論」

大量の情報を集めて、自分の頭で考え抜くことの重要性を痛感させられる章です。10年前に語った内容ながら、今でも通用するところがあります。

情報を持たない大多数の人にとっては、未来といっても思い浮かべるのは、現在か過去の内容でしかない。想像ができないからだ。しかし、多くの情報を持っているものにとっては、まだ現実に今は存在していなくとも、「近い将来必ず起こる現象が見える」のだ。想像ではなく、確実に起こることとしてである。(P111)

そして、宇宙開発にかける理由と熱意が論理的に語られます。宇宙開発事業が、堀江さんの根幹を成す本業であり、それ以外は複業という位置付けは、今も昔も変わっていないようです。

第5章 「教育論」

堀江さんの「親と先生がいうことは信じるな」という主張が、どのような根拠で導き出されているのかに注目すべきです。全ての子どもを対象にした話ではありません。

突出した能力を持つ子供はどんな環境でも頭角を現し、学校教育に巣食う問題なんて軽々と超えていきます。この層は、知識を教える「先生」は本質的に不要で、とにかく伸びゆく才能の邪魔をしないことが必要です。

教育の役割が必要なのは、平均的な学力の子どもや、総合的な知的能力は劣るが感性が豊かとか特徴を持つ子どもで。こういう層に属する子どもたちには幼少時に触れる教育が非常に重要ということになります。知性が低く、情報収集に怠惰な教える側の人間の気分や古い価値観で、子どもたちを潰さないことが大事、という話です。

競争心にも言及しています。負けると悔しい、という反骨心、なぜ負けたのか、と冷静に分析する力、どうすれば勝てるのか、という創意工夫、を発揮する機会になることが、競争が重要視される理由です。

充実した人生を送りたい人にとって全て当たり前のことですが、本当に大切なことばかりだと思います。

第6章 「仕事論」

10年前に、ベーシックインカムを語っていたことにまず驚きました。ベーシックインカムの発想が根拠を持つのは、以下の分析です。

仕事というのは、すでに尊いものではなくなっている。生きるのを支える支える仕事をしている人は、とても少ない。逆にいえば、少数だけの努力によって生きることを支えられるようになったのだ。そう考えると、今の日本の社会は、実は勤労ではなく「娯楽」をしているに過ぎないといえるのではないか。(P183)

社会で不要となりつつある勤労の価値観が支配的で、逆にニーズが高まりつつある娯楽に対する教育が不足しているのが日本社会…… というのは妥当な分析だと思います。

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