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『ロッキー』を観る

本日は映画『ロッキー Rocky』(1976)の感想文です。

アメリカを強く感じさせる映画

『ロッキー』は、主演・脚本を務めたシルベスター・スタローン(Sylvester Gardenzio Stallone, 1946/7/6- )を一躍大スターにのし上げた作品です。監督はジョン・G・アヴィルドセン(John G. Avildsen 1935/12/21-2017/6/16)ですが、実質スタローンの映画だと言ってよいでしょう。

本作は第49回アカデミー賞(1977年)の作品賞・監督賞・編集賞、第34回ゴールデングローブ賞ドラマ作品賞を受賞しています。後にシリーズ化され、6作が製作されています。

数々の名シーンと勇壮な楽曲『ロッキーのテーマ』は勿論知っていました。が、全体を通して観たのはおそらく初めてです。ヒロインのエイドリアンを演じたタリア・シャイア(Talia Shire、1946/4/25- )が、著名な映画監督フランシス・F・コッポラ(Francis Ford Coppola, 1939/4/7- )の妹であることも知りませんでした。

あらすじ(ネタバレなし)

ボクサーとして才能がありながら、落ちぶれた生活を送るロッキー・バルボアが、偶然手に入れた世界戦タイトルマッチの機会に立ち向かうことで再生していく物語です。

先日noteに書いた『フィールド・オブ・ドリームス』とは、また違ったテイストながら、物凄くアメリカ的な映画だというイメージを持っています。

シルベスター・スタローンについて

スタローンは、私が物心ついた頃には、既に大スターでしたが、マッチョ感が強くて、苦手な俳優でした。『勝利への脱出 Escape to Victory』(1981)のハッチ役は好きでしたが、代表作の『ロッキー』『ランボー』のシリーズは観ることを避けてきました。

スタローンが、生まれながらにハンディキャップを持つ苦労人であることを今回調べてみて初めて知りました。

出産時に産科医が鉗子の扱いを誤り、顔面の左側(とくに唇、顎、舌)の神経が傷つけられたため、言語障害(舌足らずな発音)と下唇の下垂という症状が残った。このことは少年期のスタローンを内向的にさせ、空想や漫画、とくに映画へ興味を向けさせた。崩れた容姿と脆弱な性格から、つねにいじめの対象となっていた。このトラウマは現在も残る。ーWikipediaより

スタローンは”Sly”という愛称で呼ばれることがあります。”ずる賢い”とか、”狡猾な”という意味で、あまり好意的な表現ではありません。思想や信条には頑固さやこだわりの強さを感じさせるエピソードもあります。ハードワーカーで努力家、熱量の多い生き方をしている人だと感じます。

1970~2010年代の5つの年代に全米1位(週末興行成績)獲得の主演作を持つ世界唯一の俳優である。ーWikipedia

私見:100%の共感はできないが大切なことが詰まった映画

『ロッキー』は数々の感動シーンや名セリフを残しています。世間に広まっているイメージに、私は惑わされていた気がします。

ボクシングにフォーカスしたストーリーが展開されるのは最後の30分位で、それまでは、荒んだ日常生活、幸福そうに見えない人間たちの感情の機微、なんとか生きている様、が描かれていました。それこそが、本作が人気を集めた本質であり、「名作」と評価されているのだと実感します。

● フラストレーションを抱えて苛立ちながら暮らすポーリー(エイドリアンの兄)が癇癪を起こす場面
● ロッキーが食肉工場で吊るされた肉を殴る場面
● 営業終了したスケートリンクのケチな管理者と交渉して、エイドリアンにスケートをさせる場面
● 4時に起きて、5個の生卵を飲み、トレーニングへと走り出す場面
● トレーニングで港を疾走する場面
● フィラデルフィア美術館から街を見下ろしながら、両腕を上げる場面
● 試合終了後、エイドリアンの名を叫ぶ場面

多くのロッキーファンが熱く語る場面に、私も心を揺さぶられるものがありました。劇中に流れる勇壮な『ロッキーのテーマ』によって、魅力が3割増しくらいに引き上げられていると思います。食わず嫌いだったのか、今だから素直に観られるようになったのか、よくわかりませんが……

映画の舞台のフィラデルフィアは、アメリカ建国の地の一つであり、美しく聳え立つ摩天楼の広がるビジネス街の顔もあります。しかしこの映画では、ロッキーたちの暮らすローエンドのやばそうなエリアが舞台であり、荒廃した街のように描かれています。

また、チャンピオンのアポロ・クリードからイタリアの種馬(Italian Stallion)と蔑まれても、相手のゲスい下心を理解していても、ボクシングの実力を認め、敬意の念を示していることも印象的でした。

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